捨てられた魔法道具師は天才だった。究極の道具で国を救いますよ?

みなわなみ

文字の大きさ
28 / 51
第3章 戦い

【父視点】終わりだ

しおりを挟む
「リヒト様!」
「英雄だ!」
「リヒト様!万歳!」

 皆は、誰の名前を呼んでいるのだ?

 全身が震える。止まらない。

 皆が息子の名を呼んでいる。

 カイではない。アルバス家から追い出した息子の名を。


 国王陛下とセフィラ王妃陛下までもが、バルコニーから彼に温かい眼差しを向けている。

「馬鹿な……ありえぬ……」

 全身が冷たくなる。私の視界には、英雄として歓声に迎えられるリヒトの姿だけが映し出されていた。

 隣には、父、ギュンターがいた。その老いた顔は蒼白で、虚ろな目には、信じていたもの全てに裏切られたような深い絶望が浮かんでいる。

「父上……」

 私が声を絞り出すと、父は震える声で呻いた。

「アベル……儂は……儂らは……何と馬鹿なことを……」

 彼の言葉は、私自身の心の叫びでもあった。
かつて、私たちはリヒトのわずかな魔力を蔑み、彼を「家の恥」として追放した。
魔力こそが全てであり、血統こそが魔道具師の資質を決定づけると信じて疑わなかった。
その傲慢な判断が、どれほど大きな過ちであったかを、今、痛いほどつきつけられている。

 中庭へと通じる道を進むと、傷つき、兵に支えられたカイの姿が見えた。
彼の顔は血まみれで、その瞳は虚ろだった。
私と同じ、いや、それ以上の絶望と屈辱が、彼の表情には刻み込まれている。

「カイ……」

 私は息子に手を伸ばそうとしたが、その手は空を切った。
彼は私に気づくこともなく、ただ一点、リヒトの姿を凝視している。
その目に宿る憎悪と、自分自身の無力さに対する苛立ちが、痛々しいほどに伝わってきた。

(……カイ……)

 彼は、私の、そして父の期待を一身に背負い、アルバス家の未来を託されてきた。
彼もまた、私たちが信じてきた「魔力の絶対性」を盲信し、それ以外の可能性を認めようとしなかった。
リヒトを軽んじたのも、その信念ゆえであろう。
 だが、今、その信念は、リヒトの放った光弾によって、粉々に打ち砕かれたのだ。
彼には、リヒトのように逆境から新たな価値を生み出す発想がなかった。
いや、そもそも逆境になったことがない。
魔力に頼り切っていた彼にとって、この現実は、まさに死に等しいだろう。

 中庭にたどり着くと、バルコニーに立つ国王夫妻と、その下をゆっくりと進むリヒトの姿が見えた。
その風景が私の目にはモノトーンで写っていた。

 リヒトが国王夫妻に深々と頭を下げた後、王から褒賞の話があった。
 
(おぉ!素晴らしい!
 我が息子として、また家に迎え入れよう)

 だが次の瞬間、リヒトは王家からの最高の栄誉と地位を辞退したのだ。

「馬鹿な……ありえぬ……!」

 父が、再び呻いた。
私も同じ思いだった。
名声と地位こそが全てであり、アルバス家が何代にもわたって築き上げてきた。
名声は、その地位によって保証される。
それを、あのリヒトは、あっさりと手放すだと?

「あやつは……あやつは、何者なのだ……」

 父の呟きは、僕らの理解を超えた存在としてのリヒトへの畏怖いふが混じっていた。

 リヒトは、我々には目もくれず、静かに王宮の奥へと消えていった。
彼の背中は、どこか遠く、まるで別世界へと歩んでいくかのようだった。


「もう、王家は我らを頼るまい…」

 ボソリと父が言う。

 王家からの信頼も失墜した。
この国の危機に際し、我々は無力だっただけでなく、その解決の糸口すら見つけられなかったのだ。
そして、その解決策をもたらしたのが、我々が追放した者である。

 私は父と顔を合わせることすらできなかった。
私たちの傲慢な判断、リヒトの才能を認めず、彼を異端として排除したあの愚かな決断が、どれほど大きな過ちであったかを痛感させられた瞬間だった。

 魔力だけを追い求め、それ以外の可能性を顧みなかった私たちの視野の狭さ。
それが、このアルバス家を滅亡へと導いていくかもしれない。

 今回の魔物襲来において、アルバス家は無力さを露呈し、王国の危機を救うどころか、その重荷となった。
これまで王室に最も近しい魔道具師の家系として、研究費や兵員の支援を受けてきたが、それも今後は打ち切られるだろう。
王族との謁見も減り、社交の場での扱いは冷淡になるに違いない。
アルバス家の長としての発言力は地に落ち、他の貴族たちからも蔑まれることになるだろう。
後悔の念が、鉛のように重く、私の胸に沈み込んでいく。
私たちは、自らの手で、この家の未来を葬り去ってしまったのだ。

王宮の中庭に、アルバス家の私たちは、ただ取り残された

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

過労死した俺、異世界で最強農業チートに目覚める。神農具で荒野を楽園に変えたら、エルフや獣人が集まって最高の国ができました

黒崎隼人
ファンタジー
「君、死んじゃったから、異世界で国、作らない?」 ブラック企業で過労死した俺、相川大地。 女神様から授かったのは、一振りで大地を耕し、一瞬で作物を育てる**最強の『神農具』**だった!? 右も左もわからない荒野でのサバイバル。 だけど、腹ペコのエルフ美少女を助け、頼れるドワーフ、元気な猫耳娘、モフモフ神狼が仲間になって、開拓生活は一気に賑やかに! 美味しいご飯とチート農具で、荒野はあっという間に**「奇跡の村」**へ。 これは、ただの農民志望だった俺が、最高の仲間たちと世界を救い、種族の壁を越えた理想の国『アグリトピア』を築き上げる物語。 農業は、世界を救う! さあ、今日も元気に、畑、耕しますか!

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

婚約破棄&濡れ衣で追放された聖女ですが、辺境で育成スキルの真価を発揮!無骨で不器用な最強騎士様からの溺愛が止まりません!

黒崎隼人
ファンタジー
「君は偽りの聖女だ」――。 地味な「育成」の力しか持たない伯爵令嬢エルナは、婚約者である王太子にそう断じられ、すべてを奪われた。聖女の地位、婚約者、そして濡れ衣を着せられ追放された先は、魔物が巣食う極寒の辺境の地。 しかし、絶望の淵で彼女は自身の力の本当の価値を知る。凍てついた大地を緑豊かな楽園へと変える「育成」の力。それは、飢えた人々の心と体を癒す、真の聖女の奇跡だった。 これは、役立たずと蔑まれた少女が、無骨で不器用な「氷壁の騎士」ガイオンの揺るぎない愛に支えられ、辺境の地でかけがえのない居場所と幸せを見つける、心温まる逆転スローライフ・ファンタジー。 王都が彼女の真価に気づいた時、もう遅い。最高のざまぁと、とろけるほど甘い溺愛が、ここにある。

出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆ 毎日朝7時更新! 「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」 過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。 絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!? 伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!? 追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

処理中です...