捨てられた魔法道具師は天才だった。究極の道具で国を救いますよ?

みなわなみ

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第4章 その後

本編エピローグ〜5年後

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 あの日から、五年が過ぎた。
 王都を救った「虚無の光弾ヴォイド・ストライク」の記憶は、もはや遠い昔のようだ。
 しかし、その奇跡の光がもたらした変化は、王国の隅々にまで確かな足跡を残していた。

 王国は、以前にも増して活気に満ち溢れている。
 僕が設計した新たな魔道具が、人々の暮らしを劇的に変えていたのだ。

 畑では、小型の魔動式耕運機が土を耕し、収穫量は飛躍的に増大した。
 水路には、自動で水を汲み上げる魔導揚水機が設置され、干ばつの心配はなくなった。
 夜の街を照らすのは、昼間の明かりを集めて発光する明るい街灯だ。
 それは、人々の夜間の活動を活発にし、商業を一層発展させた。
 移動には、以前よりも格段に速く、安全な魔動馬車が使われ、遠い村々との交易も盛んになっていた。

 国王陛下は、僕の進言を受け入れてくださり、魔道具の普及に力を注いでくれる。
 王宮魔導院の中に新設された僕の研究施設は、今や王国最大の技術開発拠点となっていた。
 そこでは、僕の指揮のもと、若き魔道具師たちが日夜、新たな可能性を追求している。
 グラハム院長は、その発展を誰よりも喜び、最大の理解者として、僕の自由な発想を支え続けてくれる。

 ーーーーーーーーーー

 一方、僕の故郷となったあの小さな村も、大きく変わった。
 僕のために作られた工房は、今や村の象徴だ。
 王都の研究施設と連携しながら、ここではより人々の生活に密着した魔道具を開発していた。

「リヒト、これ、また動かなくなったんだけど、ちょっと見てくれるかい?」

 ガンツの困り顔に、僕は苦笑する。
 彼が使っているのは、僕が開発した自動収穫機だ。
 少しばかり不器用なガンツのことだから、きっとまたどこかの歯車がずれたのだろう。

「分かったよ、ガンツ。ちょっと待っててくれ」

 僕は工具を手に取り、慣れた手つきで機械を調べていく。
 そんな僕の足元で、小さな手が僕のズボンを引っ張った。

「パパ! これ読んで!」

 愛しい娘、リノだ。
 つぶらな瞳を輝かせながら、絵本を差し出してくる。
 リノは、エレンにそっくりで、僕の何よりの宝物だ。

「よしよし、パパが後で読んでやるからな。今、ガンツじぃの魔道具を直してあげてるんだ」

 リノを抱き上げ、頬を擦りつけると、彼女はきゃっきゃと笑った。
 僕の胸には、何よりも温かい幸せが満ちていく。

 工房の奥からは、エレンの歌声が聞こえてくる。

「リヒト、ご飯できたわよー!」

 彼女の声は、相変わらず澄んでいて、僕の心を優しく包み込む。
 彼女は、魔道具のお店のオーナーだけでなく、村の子供たちに魔道具の仕組みを教えたり、村の女性たちと新しい布を織ったりと、毎日忙しくしている。
 だが、その顔には、いつも満ち足りた笑顔が浮かんでいた。

 食卓には、村で採れた新鮮な野菜が並ぶ。
 リノは、目を輝かせながらご飯を頬張り、エレンはそんな娘を優しい眼差しで見つめている。
 僕は、この穏やかな日々が、何よりもかけがえのないものだと知っていた。
 王都での名声や地位よりも、この温かい家族との時間が、僕にとっての「最高の居場所」なのだ。

 僕は、時折王都へおもむき、国王陛下と会談する。
 その際、アルバス家の屋敷の前を通ることもあるが、振り返ることはしない。
 僕が、もう戻る場所ではないからだ。
 僕は、愛しい家族、そして未来を照らす魔道具と共に、この静かな村で生きていく。

 ーーーーーーーーーー

 同じ頃、王都の貴族街の一角では、アルバス家の屋敷が、まるで古城のようにたたずんでいた。
 かつての華やかさは影を潜め、手入れの行き届かない庭には雑草が伸び放題になっている。

 王家からの財政的支援は完全に打ち切られ、アルバス家の経済基盤は崩壊した。
 多くの使用人が解雇され、残されたのは最低限の者たちだけだ。
 屋敷の維持もままならず、かつての栄華は見る影もない。

 アベルリヒトの父は、日に日に酒量が増え、書斎に閉じこもることが増えた。
 彼の顔には、常に深い後悔と絶望の影が差している。
 かつて「魔力の絶対性」を信奉し、リヒトを追放した自らの傲慢ごうまんな判断が、この家の没落を招いたことを、彼は痛感していた。

 ギュンターリヒトの祖父は、もはや表舞台に出ることもなく、自室で静かに日々を過ごしている。
 彼の老いた瞳は虚ろで、かつての権威と自信は完全に失われていた。

 そして、カイは、あの戦い以来、心を病んでしまっていた。
 魔力は健在であったが、彼の心は完全に打ち砕かれたままだった。
 王都の片隅にある、魔力を持たない者が集まる療養所で、彼はただ窓の外を眺めて過ごしているという。
 彼が信じてきた「魔力の絶対性」が、リヒトによって打ち砕かれ、そのプライドと自己存在の全てが失われたのだ。

 アルバス家は、もはや王国の歴史の表舞台から姿を消した。
 王家からの信頼は完全に失墜し、魔道具の技術革新はリヒトの手によって進められている。
 彼らがかつて誇った名声も、リヒトという新たな光の前に、影のように薄れていった。

 自分たちの傲慢な判断が、いかに大きな過ちであったか。
 それを痛感させられる日々が、彼らを蝕んでいくのだった。

【本編 終】
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