【完結】照葉輝く~静物語

みなわなみ

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第二部

第十三章 さねかずら伸びる 其の六 (R18)

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「もっ、申し訳ありませぬ!」 
 秀忠の下になり体をしたたかに打った静だが、一大事とばかりに、秀忠の体を起こそうとする。 
「大事ございま……」 
 秀忠の身を案じる言葉は、秀忠によって遮られた。秀忠の手は、静の着物の裾を繰っていた。 
「濡れておるではないか。」 
 酒の香りと共に秀忠の言葉がした。恥ずかしさに顔を赤らめながらも、静は気丈に大姥局の言葉を守ろうとする。 
「上様、おやすみになられませぬと……」 
「先程の話で感じたのか? それともそなたがれておった男を想うて濡れておるのか?」 
 秀忠は容赦なく追求する。静は黙ってしまった。秀忠に改めて問われると、どちらなのか静にも解らなかったからである。

「何故じゃ?」 
 静に覆い被さったままの秀忠は、静のしっとりした柔らかな茂みを触りながら、もう一度尋ねた。 
「……わかりませぬ……」 
 体の中から少しずつ沸き上がる甘いしびれをこらえながら、静は震える小さな声で答えた。 
「片恋の相手を思うたか?」 
 秀忠は、さらに問う。 
「…いえ…、…お許しくださいませ……」 
 わずかに残っていた灯台の火が消えた。静の刹那にためらった間が、秀忠は気に入らなかった。そして許しを乞う言葉が、江の己を拒否する言葉に重なった。 

「思うたのであろう?」 
 秀忠は挑むように繰り返した。 
「いえ。思うておりませぬ。」 
 静は、気を落ち着かせながら、自分を押し隠して、首を振り、しっかりと言い切った。 
「では、何故このように濡れておるのじゃ。」 
 秀忠の言葉と手が静をなぶる。静は女の吐息が出そうになるのをこらえていた。 
「何故じゃ?」 
「…それは……」 
 乱れる息を整えようと、静は大きく息をする。 

「さねの話のせいか? ここにある。」 
 そう言うと、秀忠は静のぷっくりと膨らんだ小さな突起をクリッと摘まんだ。 
「あうっ!」 
 静は思わず声をあげた。しばらく聞いていなかった江の悩ましい声が秀忠を逞しくする。 
「和歌の読み解きのせいか?」 
「……さように……ござりまする……」 

 静の息は、切なく荒くなっていく。秀忠になぶられている実からは、絶え間なくズキズキとした甘い痺れが沸き上がり、花芯からはとろとろと葛湯くずゆのような蜜が溢れ出しているのが静自身にもよく分かった。 
「読み解きでまぐわいを思い出したか……」 
 秀忠の言葉に、静は自分をはしたないと思い、大きく首を振る。 
「ならば、片恋の男にこうされたいと思うたか?」 
 秀忠の中で『思い出の男』というのが許せなかった。江を思わせる声であるからこそ、その思いは強かった。秀忠は今、江の名こそ流れる・・・・・・男に挑んでいるのである。 

 静の壺は充分に蜜をたたえ、男の指によって、先程から湿った淫靡いんびな音を立てている。秀忠は、その蜜を掬いとっては、「実」に擦りつけていった。
 優しく、激しく、軽く、強く…… 。

「うっ……、……くっ…んあっ……」 
 静は、気が遠くなりそうな快感を身に受けながら、奥歯を噛み締め、声をこらえることで辛うじて意識を保っている。 
 静の切ない心の底で一人の男が時々うごめいていた。 
「声を出せ。」 
 秀忠がそう命令した。しかし、その命令を静が聞き入れないのをみると、秀忠はを潰すように強くこすった。 

「ああっ!……お許し…お許し……くださいませっ。」 
「ならぬ。」 
 秀忠はそう言うと、さらに激しく実をなぶった。
 静は堪えきれずにあだめいた声を立て続けにあげる。触られる前からうずいていた実は、腰をとろかすように、いつもより敏感に静に女を教える。 
 (ああっ…心地よい……気が…おかしゅうなる……)。 
 その思いだけが頭のなかをめぐった。静の意識は、秀忠の与える悦びに支配されていった。 

「んふっ……ああっ…ああ……」 
 満足するように秀忠は艶めいた江の声を聴いた。その声が次第に秀忠も昂らせ、静の実をさらに責めさせた。 
 息つく暇もない快感に静の体はビクビクとうごめく。あまりの絶え間ない気持ちのよさに静は、身もだえしながら秀忠に許しを乞うた。 
「ああっ!……もう……もう…お許しくださいませ……」 
「心地よいのであろう?」 
 秀忠はそういうと、端正な長い指で静の蜜壺をかき回し、蜜を今まで以上にたっぷりと掬い取ると、静の実に擦り付けた。 

 静は正気を失いそうになるのが恐ろしく、その手から逃れようと体をくねらせるが、秀忠は容赦しなかった。 
 秀忠の執拗しつような責めに静の呼吸は乱れ続け、江の甘い声には、すすり泣くような声が交ざってきた。 
 初めて聞く江のあだめいた淫らな泣き声であった。その声に秀忠のからだは熱くなり、自身もさらに昂る。ごうの泣き声が、絶え間なく高くなってきた。秀忠は機を逃さず、実を潰しながら強く擦りあげる。 

「あっ、んあぁーーーっ!」 
 一段と悩ましく美しい嬌声をあげ、からだを反らせて静は昇りつめた。 
 ぐったりした静の足の間を露にすると、たっぷり濡れた蜜壺に、秀忠はいきり立った己のものを差し込む。 
 静は、するりと秀忠を迎え入れた。そこは充分感じていたためか、意思を持った生き物のように侵入者に絡み付いた。 
 (うっ。) 
 秀忠は久しぶりに女の軆を貫いた瞬間に男の快感を味わう。それは、長らく交わっていない江のからだの気持ちよさでもあった。 
 静が江の声で甘い吐息をつくと、再び男を昂らせる悦びの声をあげはじめる。 
 その声を聞くと、心の中で江を思いつつ、秀忠は己のたぎったもので、静の軆を何度も差し貫かずにはいられなかった。 



 翌朝、秀忠は何事もなかったように朝餉あさげをとっていた。小姓がまげを結い直している。 
「夕べは遅かったのではございませぬか?静が目を赤うしておりましたぞ。」 
 朝餉の世話をしながら、大姥局が非難めいた様子もなく非難した。 
「そう遅うなってはおらぬ。」 
 香の物に手を伸ばしながら、秀忠はしれっと答えた。 
「さようでござりまするか。大炊頭おおいのかみ殿に小言をいただかれぬようお務めなさいませ。」 
 大姥局も負けずにしれっと返した。 

 静はあの後、秀忠を寝間に見送り、火鉢の火を整えて下がった。
 しかし、目を閉じるとさねかずらの和歌と共に片恋の男が現れる。心の火照りは体の火照りとなり、夜具の中で自分の足を擦り合わせながら、朝までまんじりともできなかったのである。 

 それでも静は朝からいつも通りに立ち働いていた。少しの休息が許されたつ時、静は侍女たちに取り囲まれた。 
「静、いかがであった?」 
 おしゃべり好きの浅茅あさじが身を乗り出すように口火を切る。全員の目が静の方を向いていた。 
「はい、楽しゅうございました。」 
 静は、いつものようにえくぼを浮かべてにっこり笑う。 
「どのようなお教えであった?」 
 今度は藤が勢い込んで尋ねる。 
 静は秀忠に教わった通り、「和歌に心を沿わせること」「頭で解ろうとするより、自分を映して感じればよいこと」を話して聞かせた。 
 侍女達は、時に頷きながら静の話に一心に耳を傾ける。 
「『和歌に答えなどない』。そうも仰せでございました。」 
 このとき、静がほんのり頬を染めたことに気づいたのは、大姥局と由良だけであった。 
「静、ほんによいお話を聴かせていただきましたね。」 
 痩せた顔に穏やかな笑みを浮かべて由良が言った。 
「お由良さまのお導きがあったからこそでございます。ありがとう存じまする。」 
 ふっくりとした手をきちんと合わせ、静はきれいに頭を下げた。 
「その他に、なにか教えていただいたことはないのか?」 
 興味津々の浅茅が先を急くように尋ねる。 
「いえ、それだけでございます。色々な和歌を引き合いに教えてくださいました。」 
 静はそれ以上は自分の胸に留めた。思い出すだけで、はしたないと思いながらもが疼くのである。皆に嘘をつくようで、静の目は落ち着きなく、うろうろとあちこちを見ていた。大姥局がそれに気づく。 
「静、今宵は早う休むがよいぞ。」 
 大姥局の言葉に、みなが笑顔で頷いた。 
「いえ、いつもどおりお仕えさせてくださいませ。」 
 静は恐縮しながら、皆に頭を下げた。 
 春風がふんわりとそよぎ、柔らかな日差しが女たちを照らしていた。 


[第十三章 さねかずら伸びる 了]
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