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第五部(最終)
第二十七章 九星、光り輝く 其の二
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静の痛みは、現れては消えというのを何度か繰り返した。
まるで、生まれるのをためらっているように皆が感じている。
(皆、そなたを待っておるぞ。なにも案ぜず母のもとに来るがよい。)
静は何度もお腹を擦って言い聞かせた。
蕗も富も美津も、時々お腹を触り、「早う出てこい」と声をかける。
お勝手仕事の合間ごとに小夜が持ってきた南天の葉が、幾枚も布団の下で重なっていた。
とっぷり暮れた夜は、既に明けに近づいている。
蕗が少し横になり、これは生まれるのは昼になるかと思われた頃、静の痛みが続き始めた。次第に痛みも大きくなる。
周りの者も気忙しくなり、一気にバタバタと慌ただしくなった。
天井から吊るされた力綱を持ち、口に手拭いを咬んで、静は痛みをこらえる。
悲鳴ともなんともつかない静の苦しみの声が、闇に響いた。
(大八車に轢かれるようじゃっ。)
「うぅぅーーーっ!」
富が「がんばんだよ。」と腰をさする。
何度も何度も繰り返されるあまりの痛みに、静が耐えきれず、力綱を離す。とっさにお腹をかばった静は四つん這いになり、がくりとうずくまった。
「静! しっかりしな!」
富が静を叱咤する。
「おっかさん、もう…」
汗だくの苦しそうな顔を静が富に向ける。しかし、そのあとは続かず、静の悲鳴が響いた。
「ぅうあぁぁぁーーっ!!」
「ほら、ややは頑張ってんじゃないか。よし、じゃぁ、しばらくおっかさんにもたれな。」
富は立て膝をすると静の体を起こし、荒い息と悲鳴を繰り返す娘を抱き抱えて、背中をさする。
静も立て膝をして母にもたれ、安心したようにぐっと抱きつく。
ときどき汗を拭いてやりながら、富は娘に声をかけ続けた。
「しっかり。」「ほら、息吐いて。」「がんばんだよ。」
富は背中をさすり、娘がぐらつかないよう踏ん張り、ただ繰り返す。
静の足元で、浅茅と美津が様子を見ていた。
「静、頭が見えたぞ、あと少しじゃ。」
「お静ちゃん、いきんで。」
荒い息のもと、静は最後の力を振り絞る。
(うえさまっ!)
母の首に巻いた腕にまた力を入れたとき、大きな痛みが止まった。
「ホ…ホワァホワァ…」
赤子の声がほのかに明るくなり始めた部屋に響く。
「静、男子じゃ。立派な男子じゃぞ!」
浅茅の弾む声に、静の目には涙が浮かんでいた。
「旦那様にお知らせしてこよう。」
藤が、いそいそと立ち上がる。
小夜と久が産湯を準備している間に、蕗がへその緒を切った。富が産湯を使わせる。
「丸々と元気そうだよ。」
つややかできれいな産着を着せられた子は、小さなあくびをして、微笑むように口を動かした。
「やっぱり大物だねぇ。満足そうな顔をしてるよ。」
子の世話を終えた富がクスリと笑った。
「抱かせて。」
静が、弱々しい声で言う。
積まれた布団にぐったりと体を預けて座っている静に、富が抱き上げた赤子を渡した。
「しわくちゃね。」
すっぽりと腕に収まる子を見つめ、えくぼを浮かべた顔から涙が溢れている。
腕に伝わる重みと温かさが、命を伝えていた。
「みなさま、…ありがとうございまする。」
静が小さな震える声で礼を述べる。そして、秀忠にも心の中で礼を述べた。
藤は、待ったまま寝入ってしまった主人たちの部屋へ進んでいた。
(まだ寝ておられるやもしれぬ。)
そう思って、そっと襖を開ける。そのわずかな気配に、大姥局も見性院も由良もサッと姿勢を正し、藤を見つめた。
「母子とも無事にござりまする。」
藤の感無量の言葉に、大姥局たちはホッと息を吐いた。
「さようか。して。」
はやる気持ちを押さえて、大姥局が重々しく訊く。
「五体満足。立派な、男子にございまする。」
一段と大きな声で、キリリと藤が報告した。
「そうか。」大姥局の皺だった顔がさらに皺立つ。「そうか。」
見性院も由良も、大姥局と同じように大きくうんうんと頷いていた。
「大姥殿、おめでとうござりまする。」
「いえ、見性院様のお力添えがあればこそ。これからもよろしくお願い致しまする。」
三人はすぐに立ち上がり、そわそわと廊下を進んだ。
襖を開けて入ってきた主人に、だらりとしていた静は、姿勢をただそうとする。
「よいよい。そのままで。楽にしておれ。」
大姥局が慌てて声をかけ、
「静、ご苦労であったな。」
と、部屋子の傍に座り、手を握った。
「旦那様。」
握られた手の温かさが、静の目から、また涙を溢れさせる。
「よう頑張った。無事でよかった。」
乱れた髪が張り付いている静の額を、大姥局の細い、皺だった手が撫でた。
寝かされていた赤子が、大きな声で泣き出す。
「おお、これは、これは。元気なややじゃ。」
見性院が頼もしそうに微笑む。赤子の周りには、入れ替わり立ち替わり、いくつもの顔が笑っていた。
元気な泣き声に、八重が乳を含ませる。ふにゃふにゃしながらも、赤子は乳を飲んだ。
「上手に飲んでます。静義姉さんの乳が出れば、ちゃんと飲みそうですよ。」
「そう。」
八重の姿に、早く乳を含ませてもみたかったが、まだ体が言うことをきかない。とりあえず、一息つきたかった。
皆が微笑んで乳を飲む様子を見ている。その中の由良の目からハラハラと涙が溢れ、慌てて押さえられた口許からは嗚咽が漏れた。
「由良? いかがした?」
「…上様の…上様がお生まれの頃を思い出して……」
由良が、しゃくりあげながら、なんとか答える。大姥局が感慨深げにうんうんと頷いた。
「そうか。そういえば上様は、なぜかそなたの乳がお気に入りであったの。」
柔らかに笑った大姥局の言葉に、由良は涙をふきながら頷いた。
「はい。行く所のなかった私の居場所を作ってくださるように。」
由良の言葉に静も涙がじわりと浮かぶ。
(みな、色々なことを乗り越えて生きておられる。わたしもややと共に生きてゆければ……)
そう思ったとき、生まれた子に「やや」と呼び掛けるのも不便だと気づいた。
「旦那様、名をつけてくださりませ。」
すぐ傍にいた大姥局に、静がささやかな声でお願いをする。
「名のう…」
「はい。」
「わかった。しばし待て。」
静の願いに、大姥局は少し考え込み、快く了解した。
乳を飲み終えた赤子が寝かされ、満足げにもぐもぐと口を動かす。
「ほほ、かわいいのう。婆様じゃぞ~。」
見性院が、すでに武田の子として声をかける。
「この子には婆様だけはたんとおりまするな。」
その後を継いだ蕗の言葉に、皆が吹き出した。
「まことじゃ。」
朗らかで明るい笑い声が部屋中に響く。
「みな、疲れたであろう。一寝入りせよ。あとのことは、それからじゃ。皆様も少しお休みくだされ。」
「いや…」
大姥局の言葉に、富が側にいたそうに口ごもる。
「アタシとお八重ちゃんが起きてますから、富おばちゃんもちょっと寝て。悪露の始末はアタシでもできるから。」
美津が、ずっと気を張っている富を思いやった。
「そうかい。」
静が気になりながら、やはり体の疲れを感じる富は、久と少し横になりにいく。
「お静ちゃんもちょっとおやすみなさいよ。」
静の顔の汗をぬぐい、美津が声をかける。
静の体が楽に斜めになるように八重と布団を調整しながら、美津は「ふふ」と笑った。
「栄太郎が悲しがるわね。『お嫁さんにできない』って。」
静も小さく「ふふ」と笑う。
「遊び相手になってねって伝えて。」
「うん。喜んで。」
ささやかな声で伝えた静は、座ったまま、少し体を倒して眠り、女たちも順々に横になった。みなが休息を貪り、そわそわと起き出した頃には、すでに昼となっていた。
曇り空から一筋の光が地上に降りている。
昼過ぎには静と赤子の回りで小さな祝宴が催され、大姥局は女たちを労った。
祝いと乳の出がよくなるように鯉こくやおはぎが並べられている。心尽くしの膳に、みなの顔は和やかで自然と笑みが溢れていた。
静から溢れるほど乳が出るようになったのを見、夕方に富たちは帰途につく。
お土産の風呂敷包みを大事そうに抱えた富に、大姥局が声をかけた。
「お富殿、確かお連れ合いは、私が寄進した五重塔を作られるほど腕のよい大工でしたな。」
「はい。まぁ、人よりちったぁマシなようにございます。」
富が、誇らしそうな微笑みで謙遜する。
「そうか。梅雨が明けると、じきに野分の季節になるゆえ、近々、悪いところはないか見に来ていただけぬか。どうも巽あたりの屋根が怪しゅうてな。」
「はっ、はい! ありがとうございます。」
にこにことした大姥局の申し出が、夫に赤子を見に来るようにという言葉なのだと、富はすぐに察した。
「ありがとうございます。帰ったら早速伝えます。」
富は何度も頭を下げ、「静をよろしくお願いします。」と最後に繰り返して駕籠に乗った。
そして、富たちとは別に家にたどり着いた久は、夫に報告し、奉行所へ届ける段取りをつけた。
翌日、夫の助兵衛は南町奉行所に大姥局の文を届け、その文は夕方、家に戻った利勝の目に留まった。
(男子か……。婆様が喜んでおろう)
*******
【南天の葉】「難を転ずる」として、ここでは安産のお守り。
【悪露】後産。 この頃は座産で出産し、その後も七日くらいは座ったまま(後ろに布団などを積んで)過ごした。
【鯉こく】鯉の味噌汁。乳の出がよくなるといわれている。餅米も同じく、乳の出をよくすると言われる。
まるで、生まれるのをためらっているように皆が感じている。
(皆、そなたを待っておるぞ。なにも案ぜず母のもとに来るがよい。)
静は何度もお腹を擦って言い聞かせた。
蕗も富も美津も、時々お腹を触り、「早う出てこい」と声をかける。
お勝手仕事の合間ごとに小夜が持ってきた南天の葉が、幾枚も布団の下で重なっていた。
とっぷり暮れた夜は、既に明けに近づいている。
蕗が少し横になり、これは生まれるのは昼になるかと思われた頃、静の痛みが続き始めた。次第に痛みも大きくなる。
周りの者も気忙しくなり、一気にバタバタと慌ただしくなった。
天井から吊るされた力綱を持ち、口に手拭いを咬んで、静は痛みをこらえる。
悲鳴ともなんともつかない静の苦しみの声が、闇に響いた。
(大八車に轢かれるようじゃっ。)
「うぅぅーーーっ!」
富が「がんばんだよ。」と腰をさする。
何度も何度も繰り返されるあまりの痛みに、静が耐えきれず、力綱を離す。とっさにお腹をかばった静は四つん這いになり、がくりとうずくまった。
「静! しっかりしな!」
富が静を叱咤する。
「おっかさん、もう…」
汗だくの苦しそうな顔を静が富に向ける。しかし、そのあとは続かず、静の悲鳴が響いた。
「ぅうあぁぁぁーーっ!!」
「ほら、ややは頑張ってんじゃないか。よし、じゃぁ、しばらくおっかさんにもたれな。」
富は立て膝をすると静の体を起こし、荒い息と悲鳴を繰り返す娘を抱き抱えて、背中をさする。
静も立て膝をして母にもたれ、安心したようにぐっと抱きつく。
ときどき汗を拭いてやりながら、富は娘に声をかけ続けた。
「しっかり。」「ほら、息吐いて。」「がんばんだよ。」
富は背中をさすり、娘がぐらつかないよう踏ん張り、ただ繰り返す。
静の足元で、浅茅と美津が様子を見ていた。
「静、頭が見えたぞ、あと少しじゃ。」
「お静ちゃん、いきんで。」
荒い息のもと、静は最後の力を振り絞る。
(うえさまっ!)
母の首に巻いた腕にまた力を入れたとき、大きな痛みが止まった。
「ホ…ホワァホワァ…」
赤子の声がほのかに明るくなり始めた部屋に響く。
「静、男子じゃ。立派な男子じゃぞ!」
浅茅の弾む声に、静の目には涙が浮かんでいた。
「旦那様にお知らせしてこよう。」
藤が、いそいそと立ち上がる。
小夜と久が産湯を準備している間に、蕗がへその緒を切った。富が産湯を使わせる。
「丸々と元気そうだよ。」
つややかできれいな産着を着せられた子は、小さなあくびをして、微笑むように口を動かした。
「やっぱり大物だねぇ。満足そうな顔をしてるよ。」
子の世話を終えた富がクスリと笑った。
「抱かせて。」
静が、弱々しい声で言う。
積まれた布団にぐったりと体を預けて座っている静に、富が抱き上げた赤子を渡した。
「しわくちゃね。」
すっぽりと腕に収まる子を見つめ、えくぼを浮かべた顔から涙が溢れている。
腕に伝わる重みと温かさが、命を伝えていた。
「みなさま、…ありがとうございまする。」
静が小さな震える声で礼を述べる。そして、秀忠にも心の中で礼を述べた。
藤は、待ったまま寝入ってしまった主人たちの部屋へ進んでいた。
(まだ寝ておられるやもしれぬ。)
そう思って、そっと襖を開ける。そのわずかな気配に、大姥局も見性院も由良もサッと姿勢を正し、藤を見つめた。
「母子とも無事にござりまする。」
藤の感無量の言葉に、大姥局たちはホッと息を吐いた。
「さようか。して。」
はやる気持ちを押さえて、大姥局が重々しく訊く。
「五体満足。立派な、男子にございまする。」
一段と大きな声で、キリリと藤が報告した。
「そうか。」大姥局の皺だった顔がさらに皺立つ。「そうか。」
見性院も由良も、大姥局と同じように大きくうんうんと頷いていた。
「大姥殿、おめでとうござりまする。」
「いえ、見性院様のお力添えがあればこそ。これからもよろしくお願い致しまする。」
三人はすぐに立ち上がり、そわそわと廊下を進んだ。
襖を開けて入ってきた主人に、だらりとしていた静は、姿勢をただそうとする。
「よいよい。そのままで。楽にしておれ。」
大姥局が慌てて声をかけ、
「静、ご苦労であったな。」
と、部屋子の傍に座り、手を握った。
「旦那様。」
握られた手の温かさが、静の目から、また涙を溢れさせる。
「よう頑張った。無事でよかった。」
乱れた髪が張り付いている静の額を、大姥局の細い、皺だった手が撫でた。
寝かされていた赤子が、大きな声で泣き出す。
「おお、これは、これは。元気なややじゃ。」
見性院が頼もしそうに微笑む。赤子の周りには、入れ替わり立ち替わり、いくつもの顔が笑っていた。
元気な泣き声に、八重が乳を含ませる。ふにゃふにゃしながらも、赤子は乳を飲んだ。
「上手に飲んでます。静義姉さんの乳が出れば、ちゃんと飲みそうですよ。」
「そう。」
八重の姿に、早く乳を含ませてもみたかったが、まだ体が言うことをきかない。とりあえず、一息つきたかった。
皆が微笑んで乳を飲む様子を見ている。その中の由良の目からハラハラと涙が溢れ、慌てて押さえられた口許からは嗚咽が漏れた。
「由良? いかがした?」
「…上様の…上様がお生まれの頃を思い出して……」
由良が、しゃくりあげながら、なんとか答える。大姥局が感慨深げにうんうんと頷いた。
「そうか。そういえば上様は、なぜかそなたの乳がお気に入りであったの。」
柔らかに笑った大姥局の言葉に、由良は涙をふきながら頷いた。
「はい。行く所のなかった私の居場所を作ってくださるように。」
由良の言葉に静も涙がじわりと浮かぶ。
(みな、色々なことを乗り越えて生きておられる。わたしもややと共に生きてゆければ……)
そう思ったとき、生まれた子に「やや」と呼び掛けるのも不便だと気づいた。
「旦那様、名をつけてくださりませ。」
すぐ傍にいた大姥局に、静がささやかな声でお願いをする。
「名のう…」
「はい。」
「わかった。しばし待て。」
静の願いに、大姥局は少し考え込み、快く了解した。
乳を飲み終えた赤子が寝かされ、満足げにもぐもぐと口を動かす。
「ほほ、かわいいのう。婆様じゃぞ~。」
見性院が、すでに武田の子として声をかける。
「この子には婆様だけはたんとおりまするな。」
その後を継いだ蕗の言葉に、皆が吹き出した。
「まことじゃ。」
朗らかで明るい笑い声が部屋中に響く。
「みな、疲れたであろう。一寝入りせよ。あとのことは、それからじゃ。皆様も少しお休みくだされ。」
「いや…」
大姥局の言葉に、富が側にいたそうに口ごもる。
「アタシとお八重ちゃんが起きてますから、富おばちゃんもちょっと寝て。悪露の始末はアタシでもできるから。」
美津が、ずっと気を張っている富を思いやった。
「そうかい。」
静が気になりながら、やはり体の疲れを感じる富は、久と少し横になりにいく。
「お静ちゃんもちょっとおやすみなさいよ。」
静の顔の汗をぬぐい、美津が声をかける。
静の体が楽に斜めになるように八重と布団を調整しながら、美津は「ふふ」と笑った。
「栄太郎が悲しがるわね。『お嫁さんにできない』って。」
静も小さく「ふふ」と笑う。
「遊び相手になってねって伝えて。」
「うん。喜んで。」
ささやかな声で伝えた静は、座ったまま、少し体を倒して眠り、女たちも順々に横になった。みなが休息を貪り、そわそわと起き出した頃には、すでに昼となっていた。
曇り空から一筋の光が地上に降りている。
昼過ぎには静と赤子の回りで小さな祝宴が催され、大姥局は女たちを労った。
祝いと乳の出がよくなるように鯉こくやおはぎが並べられている。心尽くしの膳に、みなの顔は和やかで自然と笑みが溢れていた。
静から溢れるほど乳が出るようになったのを見、夕方に富たちは帰途につく。
お土産の風呂敷包みを大事そうに抱えた富に、大姥局が声をかけた。
「お富殿、確かお連れ合いは、私が寄進した五重塔を作られるほど腕のよい大工でしたな。」
「はい。まぁ、人よりちったぁマシなようにございます。」
富が、誇らしそうな微笑みで謙遜する。
「そうか。梅雨が明けると、じきに野分の季節になるゆえ、近々、悪いところはないか見に来ていただけぬか。どうも巽あたりの屋根が怪しゅうてな。」
「はっ、はい! ありがとうございます。」
にこにことした大姥局の申し出が、夫に赤子を見に来るようにという言葉なのだと、富はすぐに察した。
「ありがとうございます。帰ったら早速伝えます。」
富は何度も頭を下げ、「静をよろしくお願いします。」と最後に繰り返して駕籠に乗った。
そして、富たちとは別に家にたどり着いた久は、夫に報告し、奉行所へ届ける段取りをつけた。
翌日、夫の助兵衛は南町奉行所に大姥局の文を届け、その文は夕方、家に戻った利勝の目に留まった。
(男子か……。婆様が喜んでおろう)
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【南天の葉】「難を転ずる」として、ここでは安産のお守り。
【悪露】後産。 この頃は座産で出産し、その後も七日くらいは座ったまま(後ろに布団などを積んで)過ごした。
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