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我は……
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ヤアから皇宮へ、何度も早駆けをした。熱くなる頬を冷ますように。
愛馬を飛ばしながら、頭の中はマダムの言葉がぐるぐる回る。
『望んだと言っても、壁を越えられなかったのなら……』
『心を通わせるものもいる』
『後悔はない』
くそっ、なぜこんなに胸がざわつく……。
我が渇望する自由を手に入れた方を見たからか……
いや、我は国と共に生きる……
我は……
我は………
我は…………
夕焼けの中の厩舎から執務室までも、黙って大股で歩いた。
エドも黙って早足で付き従う。
執務室のドアを荒々しく開けて、ドサリとソファーに座った。
父上に報告に行かねばならぬが、頭を整理して気を落ち着けねば……。
ロランダがヤアを治めたいのは、自らの力を試したいからだろう。
ロランダもマダムと同じく、自由になって試したいのだ。きっと。
我にはその気持ちが痛いほど解る。生まれた時からレールが引かれている我には。
だが……
ソファーの背もたれに身を預け、我は天を仰いで大きく息を吐いた。
「エド、」
机の上を確認していたエドガーが近寄ってくる。
「我は、負けて勝つことにする」
「では、馬車の注文準備をしましょう」
我が頷くと、エドガーもニヤリと笑って力強く頷く。
我はロランダの望む自由はやれぬ。今までも「クプスの婚約者だ」と気持ちに蓋をして来た。
でも、皇太子だとて譲れない我は通していいのだ。それをマダムは教えてくれた。
幼い頃から傍にいたロランダ。
彼女の笑顔を我はいつも見ていたいと思うのだ。
ロランダが頑張っていたから、我も帝王学を踏ん張れた。
『君が僕を必要としてくれたからだよ』
博士の言葉が甦る。
我にはロランダが必要だ。
国のためではない。我のために。
我が人らしく生きるために……。
我は婚約者が決まらないのにどこかで安堵していた。
このまま決まらなくてもいいと思ったことさえある。
それは、ただ面倒なのだと思っていたが違う。
ロランダの傍にいたかったのだ。
エドは解っていたのかもしれぬな。
「エド、夜会も見繕っておいてくれ。クラウディア嬢の相手をしに行く」
「クプスリスト殿下との繋がりを探りますか」
「あぁ。皇家に入るに足る人物かどうかもな。悪い人間ではないが、ピュアすぎるからな…。クプスが巧くカバーできる度量があればいいんだが……」
「まだまだ御成長あそばすでしょう」
やたらと丁寧な言葉と裏腹に、エドはくつっと笑う。
「とりあえず、クラウディア嬢にロランダを褒めよう。クプスの婚約者として完璧なのだと。
そうすれば、ロランダにさらに接近するだろう。後は、ロランダに任せるしかない」
あくまでも、「クプスはロランダと婚約破棄しない」に我は賭けている。
だから、表向きは今まで通りにせねばならぬ。
だが、我はロランダがヤアを治めてほしいと思っている。
あの老女たちの素晴らしい技術。機織り機や糸車は、その連れ合いたちが作ってきたという。
あの技術はなくしてはならぬ。
いや、生かさねばならぬ。
愛馬を飛ばしながら、頭の中はマダムの言葉がぐるぐる回る。
『望んだと言っても、壁を越えられなかったのなら……』
『心を通わせるものもいる』
『後悔はない』
くそっ、なぜこんなに胸がざわつく……。
我が渇望する自由を手に入れた方を見たからか……
いや、我は国と共に生きる……
我は……
我は………
我は…………
夕焼けの中の厩舎から執務室までも、黙って大股で歩いた。
エドも黙って早足で付き従う。
執務室のドアを荒々しく開けて、ドサリとソファーに座った。
父上に報告に行かねばならぬが、頭を整理して気を落ち着けねば……。
ロランダがヤアを治めたいのは、自らの力を試したいからだろう。
ロランダもマダムと同じく、自由になって試したいのだ。きっと。
我にはその気持ちが痛いほど解る。生まれた時からレールが引かれている我には。
だが……
ソファーの背もたれに身を預け、我は天を仰いで大きく息を吐いた。
「エド、」
机の上を確認していたエドガーが近寄ってくる。
「我は、負けて勝つことにする」
「では、馬車の注文準備をしましょう」
我が頷くと、エドガーもニヤリと笑って力強く頷く。
我はロランダの望む自由はやれぬ。今までも「クプスの婚約者だ」と気持ちに蓋をして来た。
でも、皇太子だとて譲れない我は通していいのだ。それをマダムは教えてくれた。
幼い頃から傍にいたロランダ。
彼女の笑顔を我はいつも見ていたいと思うのだ。
ロランダが頑張っていたから、我も帝王学を踏ん張れた。
『君が僕を必要としてくれたからだよ』
博士の言葉が甦る。
我にはロランダが必要だ。
国のためではない。我のために。
我が人らしく生きるために……。
我は婚約者が決まらないのにどこかで安堵していた。
このまま決まらなくてもいいと思ったことさえある。
それは、ただ面倒なのだと思っていたが違う。
ロランダの傍にいたかったのだ。
エドは解っていたのかもしれぬな。
「エド、夜会も見繕っておいてくれ。クラウディア嬢の相手をしに行く」
「クプスリスト殿下との繋がりを探りますか」
「あぁ。皇家に入るに足る人物かどうかもな。悪い人間ではないが、ピュアすぎるからな…。クプスが巧くカバーできる度量があればいいんだが……」
「まだまだ御成長あそばすでしょう」
やたらと丁寧な言葉と裏腹に、エドはくつっと笑う。
「とりあえず、クラウディア嬢にロランダを褒めよう。クプスの婚約者として完璧なのだと。
そうすれば、ロランダにさらに接近するだろう。後は、ロランダに任せるしかない」
あくまでも、「クプスはロランダと婚約破棄しない」に我は賭けている。
だから、表向きは今まで通りにせねばならぬ。
だが、我はロランダがヤアを治めてほしいと思っている。
あの老女たちの素晴らしい技術。機織り機や糸車は、その連れ合いたちが作ってきたという。
あの技術はなくしてはならぬ。
いや、生かさねばならぬ。
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