【完結】婚約破棄する?しない?~我は弟の婚約者がお気に入り

みなわなみ

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大一番だ

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 学園の卒業式は滞りなく済んだようだ。
 夜のパーティーには、父上皇帝陛下の名代として我が出かける。
 皇太子のみが許される、多くの勲章がついた赤いジャケット。

 これを着た我の隣にロランダが立ってくれれば……

 と思っていることなど、おくびにも出さず、用意を整える。

 クプスが動くなら今日だろう。
 クラウディア嬢との接点が減るだけではない。ロランダとの婚姻の話が進むだろうからな。
 ロランダが夜会に行かなくなって、二人はさらに接近している。
 二人で話すときに愛称で呼び合っているようだ。


 ここ数日、エドがクプスに与えた書類宿題が多くて、2日ほど自由に動ける時間がなかったはず。
 イライラが募っておるだろう。クプスは。
 あの程度でイライラするとは、まだまだであるぞ。


 赤いジャケットを着込み、髪を整えさせる。

 よし。では、まいるか。

◆◇◆◇

 代々の皇帝が理事長を務めるハーヴィー皇国高等学園の卒業パーティーは、迎賓館で行われる。
 皇宮からはすぐ近くだが、馬車で乗り込み控え室で待機していると、ホールから大歓声が上がった。

 負けたか……
 いや、
 勝ったのか……

 知らずと「ふふふっ」と笑い声が出た。
 さすがはロランダだ。

「殿下」

 三度のノックのあとにエドが扉を開く。

「殿下の敗けです」

「判っている」

 短いやり取りをしてホールへ向かう。

 ホールでは、隣のクラウディア嬢の肩を抱き、クプスがロランダを非難していた。

 おまえは……。

 一瞬、呆れてクラリと倒れそうになった。
 素直にもほどがある。

 クラウディア嬢の顔色が悪い。このような大事になるとは思っていなっかたのであろうな。
 クプスも近頃は随分感情をコントロールできるようになっていたが、久々にやったか。
 幼い頃はよく癇癪を起こしていたからな。
 ロランダもそれを見越していたかもしれん。

 さて、我も最後の芝居だ。

 上座に座り、ロランダにクラウディア嬢の教育を頼んだのも、賭けを仕掛けたのも我だと言うと、クプスはポカンとしたあと固まっていた。
 少し頭が冷えたか。

 我が二人を引き離すために夜会出席したと判ったときには、息を呑んでいた。
 駆引きの態度は、やはりまだまだだな。

 それでもクプスは、自分とクラウディア嬢を引き裂こうとした我が、ロランダに妃教育を頼んだという矛盾を指摘した。
 落ち着いてきたようだ。

「兄上は、クラウディアに妃としての教育を願いながら、私から引き離そうとしたのですか? それは矛盾していませんか?」

 さて、我の見せ場でもある。
姿勢を正し、クプスをグッと見た。

「クプスリスト、正直に言おう。我の希望はそなたとロランダが婚姻し、皇帝陛下や我を支えてくれることだ。まつりごとを安定させるためにも。ロランダはそのための教育、いや、訓練を行ってきたからな」

「……」

「皇太子としての希望はそうだが、兄としての希望はそなたが思う人と結ばれることだ。だからロランダに頼んだのだよ。
 まぁ、第一希望が危ういときは、第二希望をより良い状態に持っていくのは、戦略の基本だ。覚えておけ」

 固い顔で聞いていたクプスの顔が緩んだ。

「第二希望を受け入れてくださると」

「おいおい、私は皇太子だ。そなたたちの婚姻にはなんの力も持たぬ。
 クラウディア嬢と婚姻したいのなら、まず、ロランダとオフィキス公爵に詫び、そのあと父上と母上に許しを乞うことだな。
 まぁ、そのときに口添えぐらいはしてやる」

 ニヤッと笑った我が、心の中でヴィクトリーポーズをしていたのなど、会場の誰も解らなかっただろう。
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