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Ⅴ.背徳の墓標
Break Gunsという組織
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すると案の定、その効果は覿面で、セレンはほぼ反射的にヴァルスを離した。
そんなヴァルスが咳き込むのと、セレンが顔を羞恥に赤くするのは全く同時だった。
「…ったく、酷いんじゃないセレン。
まあ、始めに言っておかなかった俺も悪かったけど──」
「そんなことをいちいち、訊かれもせずに公言する物好きがいるか」
ユイは、ぴしゃりと言い捨てることでヴァルスを黙らせると、次いでレアンの方へと一瞬、目を送った。
…そのアイコンタクトにレアンが頷く。
それを確認して後、ユイは再び口を開いた。
「ヴァルスの言うことを鵜呑みにするな。
婚約者と言っても、それは名ばかりだ。
それが証拠に、一概にただ婚約者だというのなら、極めて嘘くさくも胡散臭い話だが…こいつにも居る」
ユイは憮然としながらヴァルスを親指で指す。
その事実に目を丸くしたセレンに、ヴァルスはくす、と笑んでみせた。
「相変わらず酷い言われようだけど、まぁ確かにそうだね。
名ばかりの婚約者は、確かに俺にも居る。
組織に宛がわれた…ね」
「──組織に!?」
意外な事実にセレンが絶句すると、ここまで来てようやく、レアンが会話に口を挟んだ。
「ユイ、話しても構わないか?」
「……」
ユイはレアンの問いに返事をしない。
しかし否定の言は無かったことから、レアンはそれを肯定と受け取り、話を進めた。
「…セレン、これは今の貴女にとっては、殊更に酷な話かも知れないが…」
「…酷…?」
意味を量りかねたセレンが眉根を寄せる。
「それは…あの、どういう意味で…」
「…その前に、セレン…
貴女はあの組織・Break Gunsが、何故あれだけの、膨大にして莫大な権力と財力を誇るのか…
不思議に思ったことはないか?」
「…あ」
レアンに訊ねられて、セレンは口と目を一時、静止する形で開いた。
…言われてみれば、ユイのベルクローゼンの件、そしてBSカードの件。
思い当たることは多々ある。
そして、その都度思った疑問は、まさにそれ。
セレンは完全に絶句した。
「…つーか、俺から話を振っておいて何だけど…」
ヴァルスが困惑混じりに自らの頭を掻く。
「【魔公】レアン… あの事実をセレンに話すつもりなのか?
俺にはその前置き通り、まだ今の段階じゃ…教えるのは酷だと思うけどねぇ」
掻いて乱れた髪を、鋤くように戻してヴァルスは呟いた。
「確かに時期尚早だろう」
レアンは軽く息をついた。
「しかし、セレンがヴィルザークの名を冠する貴族である以上、いずれはその身にも降り掛かっていたことだ。
単純に言うなら、知るのが早いか遅いかの差。ならば、今、逆にこの時に教えておいた方が良いのかも知れん」
「…?」
端正な顔つきの中に、どこか翳りを見せるレアンを、セレンは訝しんだ。
するとそんな現状を見定めたのか、ユイが視線でレアンを制す。
「…いい、俺から話す」
「!ユイ…」
レアンがはっきりと驚くも、一方のヴァルスは、ユイがこう言い出すと予感していたのか、落ち着いたものだ。
そんな周囲に対して戸惑いを見せながらも、セレンはユイの方へと向き直った。
ユイが低くも静かに告げる。
「…組織・Break Gunsに属する者と、この国の貴族との婚姻は、いわゆる“トレード”だ」
「トレード?」
取り引きというその言葉の意味自体は分かっても、それに隠された事実を、いまだ掴めないセレンが首を傾げる。
それに、ユイひとりに話させるのはどうかと考えたのか、ここでヴァルスが割って入った。
そんなヴァルスが咳き込むのと、セレンが顔を羞恥に赤くするのは全く同時だった。
「…ったく、酷いんじゃないセレン。
まあ、始めに言っておかなかった俺も悪かったけど──」
「そんなことをいちいち、訊かれもせずに公言する物好きがいるか」
ユイは、ぴしゃりと言い捨てることでヴァルスを黙らせると、次いでレアンの方へと一瞬、目を送った。
…そのアイコンタクトにレアンが頷く。
それを確認して後、ユイは再び口を開いた。
「ヴァルスの言うことを鵜呑みにするな。
婚約者と言っても、それは名ばかりだ。
それが証拠に、一概にただ婚約者だというのなら、極めて嘘くさくも胡散臭い話だが…こいつにも居る」
ユイは憮然としながらヴァルスを親指で指す。
その事実に目を丸くしたセレンに、ヴァルスはくす、と笑んでみせた。
「相変わらず酷い言われようだけど、まぁ確かにそうだね。
名ばかりの婚約者は、確かに俺にも居る。
組織に宛がわれた…ね」
「──組織に!?」
意外な事実にセレンが絶句すると、ここまで来てようやく、レアンが会話に口を挟んだ。
「ユイ、話しても構わないか?」
「……」
ユイはレアンの問いに返事をしない。
しかし否定の言は無かったことから、レアンはそれを肯定と受け取り、話を進めた。
「…セレン、これは今の貴女にとっては、殊更に酷な話かも知れないが…」
「…酷…?」
意味を量りかねたセレンが眉根を寄せる。
「それは…あの、どういう意味で…」
「…その前に、セレン…
貴女はあの組織・Break Gunsが、何故あれだけの、膨大にして莫大な権力と財力を誇るのか…
不思議に思ったことはないか?」
「…あ」
レアンに訊ねられて、セレンは口と目を一時、静止する形で開いた。
…言われてみれば、ユイのベルクローゼンの件、そしてBSカードの件。
思い当たることは多々ある。
そして、その都度思った疑問は、まさにそれ。
セレンは完全に絶句した。
「…つーか、俺から話を振っておいて何だけど…」
ヴァルスが困惑混じりに自らの頭を掻く。
「【魔公】レアン… あの事実をセレンに話すつもりなのか?
俺にはその前置き通り、まだ今の段階じゃ…教えるのは酷だと思うけどねぇ」
掻いて乱れた髪を、鋤くように戻してヴァルスは呟いた。
「確かに時期尚早だろう」
レアンは軽く息をついた。
「しかし、セレンがヴィルザークの名を冠する貴族である以上、いずれはその身にも降り掛かっていたことだ。
単純に言うなら、知るのが早いか遅いかの差。ならば、今、逆にこの時に教えておいた方が良いのかも知れん」
「…?」
端正な顔つきの中に、どこか翳りを見せるレアンを、セレンは訝しんだ。
するとそんな現状を見定めたのか、ユイが視線でレアンを制す。
「…いい、俺から話す」
「!ユイ…」
レアンがはっきりと驚くも、一方のヴァルスは、ユイがこう言い出すと予感していたのか、落ち着いたものだ。
そんな周囲に対して戸惑いを見せながらも、セレンはユイの方へと向き直った。
ユイが低くも静かに告げる。
「…組織・Break Gunsに属する者と、この国の貴族との婚姻は、いわゆる“トレード”だ」
「トレード?」
取り引きというその言葉の意味自体は分かっても、それに隠された事実を、いまだ掴めないセレンが首を傾げる。
それに、ユイひとりに話させるのはどうかと考えたのか、ここでヴァルスが割って入った。
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