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ネオン街の誘惑

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池袋東口。渋谷、新宿と並んで若者が集う3大都市の1つだ。

 西口にはマルイ、芸術劇場や立教大学。東口にはサンシャイン、PARCO、風俗店、ラブホテル。。

(なんでこんな性に乱れてるんだ!この街は!)

 時刻は19時。待ち合わせのラブホテルへ向かう最中、冬の足音がする季節に、キラキラした看板が、これからの僕の行方を祝福してくれているようだ。

 普段池袋に行くときはサンシャイン通りで大抵事足りるので、ホテル街の裏路地の地理には詳しくない。

 たまにすれ違うキャッチのお兄さんの視線を華麗にスルーしつつ、Googleマップが指すその赤いポイントとの距離を徐々に縮めていく。

  

 ここで、ある大事なことに気がついた。彼女に僕の写真を見せていない。そして、彼女の顔も見ていない。だからお互いわからないじゃないか。

 また、もしラブホテルが混んでいて待ち合い室でポツンと1人僕が座っていたら、どう思われるだろう。デリヘルを呼んだ若者か、部屋を予約していたが彼女と喧嘩して一人で来たのか。どちらにせよ、同情の目で見られること必至だ。一人の時間を最小限に抑えるため、待ち合わせの時間ぎりぎりにホテルに入ることを心に決めた。

  

 19:28、、、

 19:29、、、

 19:30!!!



  

 待ち合わせの時間になって、いざ、高鳴る鼓動を抑えつつラブホテルの前に立ち、自動ドアが開いた。

 右手には奇麗な薔薇の花が刺してあり、その前にはドリンクが入った透明の冷蔵庫がある。

 左手にはすぐ受付があり、その奥に部屋を選択するパネルが並んでいた。

  

「!!!」

 奥の待合室みたいなスぺ―スの一番左のイスに可憐な女性が座っていた。

 黒く長い髪は、艶があり先端が軽くカールしている。

 こちらに気づいた瞳は黒目が大きく、系統的にはperfumeのかしゆかに似ているなと思った。

  

 僕「あの、、」

  まな「どうも、はじめまして。まなです。イメージと違いました?笑」

 僕「いや、全然!素敵だなと思って。むしろおれのほうがイメージと違うでしょ?」

 まな「全然!さわやかな好青年って感じ。笑」

  

 まなはLINEの文面から想像したとおり、よく微笑む子だった。

 おかげで女性慣れしていない僕も、そこまで緊張せず、フランクに接することができたと思う。

 フロントで慣れない手続きを済ませた後、501の部屋へ向かった。

 部屋につくと、そこでお会計をするシステムで、1泊12000円という値段に驚く僕の表情に気づいたのだろう。彼女は5000円出してくれた。情けないとは分かりつつも、ありがたく受け取る僕。この世においてセックスは、相場が高いものだ。

  

 まな「広い部屋だね!」

 僕「だよね。まさか12000の部屋に入るとは思わなかった。笑」

 まな「普通一泊したらそのくらいするもんだよ。もっといい部屋は2万とか4万とかするんだから。」

 僕「そーなんだ。。世知辛いね。笑」

 まな「シャワー先入っていい?」

 僕「いいよ」



 彼女が浴室にいる間、部屋をぐるっと眺めてみた。大きいダブルベッドに、巨大なスクリーン。世のカップルたちは、週末をここで過ごし、愛を深め合っているのか。愛の維持にはお金がかかるものだ。

 今日セックスするのか。何か月ぶりだろう。

 正直僕は、セックスについて本能的には好きだけれど、”絶対になくてはならないもの”という認識はない。

  

 なぜなら、その行為を「気持ちいい」とは思わないからだ。

  
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