期間が決まった恋

ゆき

文字の大きさ
上 下
1 / 1

タイムリミット

しおりを挟む
 私は桜が散ってしまったら空に行く。もう桜のつぼみが開こうとしている。あと少し。
「ねえ、あと少しで空に帰るんだ。」
私はあなたにつげた。
「…。」
あなたは何も言えずうつむいた。
「ごめん。」
私は謝ることしか出来ない。
「いや、俺こそ何も出来なくてごめん。残りの時間君が少しでも楽しいと思えるようにするよ!」
あなたは精一杯笑った。涙をこらえながら。
「ありがとう、思い出たくさん作ろうね!」
私も精一杯笑った。笑わないとあなたはきっと…。
私たちはたくさんの場所に行った。海では、貝殻を探したり、山登りをして、川に行って釣りもした。特に遊園地は楽しかった。コーヒーカップに乗せてぐるんぐるん回した。降りたときにはあなたは顔を真っ青にしてふらついてるのを見て私は笑った。
「もう一回乗ろうよ!」
って言ったら
「無理、待って…。」
と言われた。けど、私は無理やり引っ張って乗せた。降りたらあなたは動かなくなった。
「大丈夫?」
「大丈夫ではない。死にそうだ。」
完全に酔ってる。
「ごめん。飲み物買ってくるね。」
私はそう言って飲み物を買いに行った。
「待った?」
そう言いながら飲み物を渡した。 
「ありがとう。」
あなたは飲み物を受け取った。
「俺は君を幸せにするよ。」
「ありがとう。」
私たちは休憩をしてまた乗り物に乗って遊んだ。そして家に帰った。
 日が過ぎ、桜が満開になり散り始めた。私は体が動かなくなった。寝かされた病室は殺風景で怖い。昼間はあなたがいるから怖くない。けど、夜は一人になりもう少しで死ぬという事実が頭をよぎる。
桜が散り終わる前。あなたは私のそばにいた。
「ねえ、もう少しで空に行くんだ。だから聞いてほしいことがあるんだ。」
私は最後の言葉を言う。
「短い時間だったね、私たち。それでも2年間一緒にいたんだよ。私あなたに会えてよかった。出会ったときには私は生きられる期間は決まっていたのにあなたは一緒にいてくれることを選んだ。その時、とても嬉しかった。先に行くけど、ごめんね。今度は空で会おうね。」
私は目を閉じた。最後に見たあなたの顔はどこかさみしく笑って「ありがとう。」って言っていた。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...