夢を隠す

ゆき

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私の夢

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 ある高校の夏。私はそっと夢を隠した。もう誰にも話すこともない夢を。
 進路を決めないといけないと高校3年の夏。暑い中行われた三者面談。言われた言葉。
「今の成績だったら大丈夫です。」
だった。先生はそう言った。
「進路はどうするの?」
と先生は聞いた。私は
「…になりたい。」
とだけ言った。親は
「…の方で考えてます。」
と先生に言った。親は私に…より…になってほしいと望んでいた。
先生は「他に気になっていることは。」
と聞いた。親は、私が前に言ってたなりたいことを口に出した。
「・・・・・とかはどうですか?」
私は親がそう言うことを聞かないと思っていた。先生はいくつかの学校の名前を出してきた。その事について少し先生は説明をしていた。
親が聞いたのは私が諦めた夢だった。
いや、親が否定した。自分も否定し諦めた。
「オープンキャンパスに行って決めてみたらいいと思います。」
その言葉とともに三者面談は終わった。
車に戻ると、 
「…になりなさい。…になるよりは出来ることが多くなるよ。」
そう言った。私にはその事よりもなぜ・・・・・のことを言ったのか。分からない。きっと、私の中にあったもう一つの夢を諦めさせようとしたんだ。親は私の将来を決めようとしている。私の意思は関係なく。これは仕方ない。
・・・・・の夢はもう心の中に隠した。もう誰にも話すこともないと思っていた。頬に流れたのはきっと、諦めたくなかったと思う気持ちの現れだったのだろう。
 だからこの夢は心の中に隠した。誰にも話すことのない夢。親にも触れられたくはない。この夢は私だけの知る夢にしたい。夢はもう心の中に隠した。
 
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