最後の思い出

ゆき

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最後の思い出

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 私の大事な人は病院のベッドの上で寝ていた。
 私は結婚前でウキウキしていた。あなたと一緒にやっと暮らせると思っていたから。一緒に旅行の計画を立てて、気になっていたレストランの予約をとったりした。
けど、その気持ちは一瞬で崩れた。あなたが倒れたという連絡を聞いて。私は急いで、病院に向かった。病院に着くとあなたの両親がいた。彼の容態を聞くと絶望する結果だった。余命三日。私にとっては絶望する結果だった。楽しかった思い出がすべて崩れ落ちる音がした。
 彼が寝ている病室に行くとあなたは規則正しい呼吸をして寝ていた。そっとあなたのそばに行き手を握って生きていることを確認した。その時、あなたは目を開けた。
「大丈夫、痛いところない?」
私はナースコールを押して彼が起きたことを知らせた。すぐにお医者さんが来て診察結果をした。一時してお医者さんは病室を出て行った。
「ごめん、心配かけて。」
「ううん、大丈夫。」
沈黙が続いた。一時して、
「聞いてほしいことがある。」
あなたは泣きそうな顔をしながら言った。
「どうしたの?」
私は返事をした。
「隠してたことがあるんだ。僕はもう長く生きられない。もってあと三日だって言われた。元々病気があって一回完治したけどがその病気が再発して見つけたときには手遅れと言われたんだ。隠してごめん。」
「隠さなくてよかったのに。あなたが辛いときに一緒にいてあげられなかった。私こそごめん。」
あなたは泣きながら謝った。
「今日は、もう帰ってほしい。一人にさせてくれないかな?」 
あなたは泣いたあとを隠すように言った。
「うん、分かった。明日また来るね。」
「また明日。」
私は病室をあとにして両親の所にいって泣いた。目が溶けるんではないかというぐらい泣いた。
次の日
あなたは起きて私と話をした。これまでに行った所の思い出や楽しかった思い出。
けど、あなたといれる時間が残りわずかということを思い出すと涙が止まらなかった。その度にあなたは私の背中をさすって抱きしめてくれた。
余命あと2日
あなたは真剣な顔をして私に言った。
「僕が死んだら僕のことを忘れて幸せになって生きてほしい。」
私は何を言っているのか分からなかった。
「何言ってるの?忘れられるわけないじゃん。」
私がそう言うとあなたは辛そうな顔をした。
「ごめん。君のことが大好きだから、君に幸せになってほしい。」
「無理だよ。私にはあなたしかいないよ。」
私は面会時間が終わったので帰った。
余命あと1日 
「昨日はごめん。変なことを言った。」
あなたは泣きながら謝った。
「私こそごめん。むきになった。」
そのあと私たちはたくさん思い出を話した。たくさん話したあといきなりあなたは何かを悟ったのか
「これまでありがとう。」
と言って目を閉じた。私は急いでナースコールを押した。 
次々にお医者さんや看護師さんが出入りをした。そしてお医者さんからあなたが空に帰ってしまったことを伝えられた。私はその場に泣き崩れた。
 時は経ち、あなたの葬式が終わった。葬式の間、あなたが笑ってドアから「ただいま」と言って入ってくるのではないかと思った。
葬式が終わって、1週間ぐらいたった頃彼の両親から一通の手紙を渡された。手紙の裏を見ると差出人はあなただった。手紙をあけて読んだ。
 
 この手紙を読んでいるということは僕はもう空にいっているのでしょう。君をおいて行ってしまってごめん。きっと君は泣き虫だからとても泣いたと思います。僕は君と幸せな暮らしが出来ると思った途端に余命を宣告されてしまった。その事を聞いたとき僕はどうしていいか分からなかった。君を幸せに出来ないと分かったからとても辛かった。けど、君と思い出話をしていると君を幸せに出来ていたんだなと思ったんだ。だから、君との思い出を空に持って行こうと思っていっぱい話をしたんだ。楽しかった。僕は先に空にいるけど、君はゆっくり幸せになってきてほしい。そして、空であったときにいっぱい話をしてね。幸せになって。

 私はあなたの手紙を読んで泣いた。私、幸せになってあなたにいっぱい話を持っていくよ。だからそれまで待っていてね。
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