モブで頑張る人生2周目

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馬車

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ガラガラガラガラ

私達は馬車に乗っている。
それも とびきり立派な馬車。
ふわふわな座席は 長時間乗って居ても 臀部に優しい。
二頭立ての馬車は 只今王都へ向かっている。
「そんなに 緊張しなくても良いだろ」
山で拾った彼は そう言うが山暮らしで たまに近くの町へ行く位しかない私達が 見たこともない立派な馬車に乗せられ 緊張しない方が無理。

山で彼を拾ってから一週間過ぎたころ、元々軽症だった捻挫は完治に近くなっていた。
そろそろ私達も町に行かなくてはならなかったし 三人で町へ行く事にしたのだ。
町まで一日かからないが往復すれば夜中になる。
いつものコースで、のんびり一泊二日。
今時期は 天気も良いし道中は楽。
お昼は パンにチーズ。チーズは魔力でとろけさせ 水出しの紅茶でいただきます。
夕方、町へ着き馴染みの薬屋へ行き 作った薬買って貰う。
エドワードはそれを珍しげに見ていたが、知りあいが居るとかで そこで別れた。

私達は常宿へ向かおうと 大通りを歩いていた時 それは起こった。
目の前で 品の良い貴族と思わしき青年が深々と頭を垂れている。
「ディー様とマリア様ですね」
私達の確認をした彼は ルーヒンと名乗った。
彼はエドワードの執事で 山で彼を助けた私達を探していたとの事。

エドワードはやはり貴族だったんだな。
「助けたと言っても さほどの事はしていませんから気にしないで下さい」
困ってる人がいたら助けるのは普通だし。
「彼に もう山で行倒れに成らないよう伝えて下さいね」
町に近いとはいえ 熊や狼もいるしね。
隣でマリアがそうだと頷いている。

ルーヒンは ふっと優しく微笑み言う。
「エドワード様のご両親が お礼をと申しております。ご一緒願いませんか」

私は気持ちだけ頂くと言ったはずだった。
間違いなくそう言った。

なのに

今 臀部に優しい座席の馬車に乗ってます。

何故かって?
断りを言ったのは私。
ルーヒンはマリアに的を絞り 綺麗なドレスを纏 お姫様のような一泊をしてみたくはないか。天蓋付きのベットはふわふわだと 悪魔の囁きをした。
山で暮らす私達は そんな事に縁がない。
ドレスなんて夢の又夢。
それでも 年頃になれば 憧れるもの。
彼はそこを うんくさい微笑みで突いてきた。
「ダメだよ・・・・ね?」
マリアはキラキラした瞳で私に言う。

あーはいはい。
行きたいのね。
そんな顔されたら ダメって言えない。
一泊限定お姫様位良いか。

と  承諾したら、この馬車でした。

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