真珠を噛む竜

るりさん

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第十七章 風に舞う葉

夢の終わり、夢の始まり

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 レストランは、始めて二か月ほどまではリピーターや興味本位で来る人を中心に大いに栄えた。しかし、二ヶ月をすぎると客足は落ち着いてきた。半年も経つと、常連と、たまに来る街からの客、それに旅行者で昼間に時々満席になる程度になってきた。
 そこで、開店四ヶ月を皮切りに二階席を閉じ、一階だけにした。
 半年も経てば、本当に普通のレストランでしかなくなったので、ナリアとリゼットの客引きもなくなり、落ち着いた佇まいになってきた。そこで最後は規模を縮小して営業することにした。
 そして、半年を完全に過ぎたある日、クロヴィスとアヒムは、集会所に村の全員を集めた。
 そして、二人頷きあうと、皆を見渡して、まず、アヒムがこう言った。
「今月末に、クロヴィスさんたちはこの村を後にすることを決められた」
 その言葉に、驚くものは誰もいなかった。この結果がまるでわかっていたかのように、静まり返っていた。
 次に、クロヴィスがこう言った。
「俺たちはこの村を育てるのに必要だったのかもしれない。レストランの後継者が街から来てくれることになって、空き家を使って診療所と学校もつくられることになった。農家の後を継いでくれる人も出て、俺たちの居場所も無くなってきた。ここいらで、俺たちは、俺たちにしかできない家を自分たちで作ったほうがいいという結論に至ったんだ」
 すると、村人の中から、こういう声が上がった。
「この村をずっと見てきたのは私たちも同じ。気持ちも同じだよ。あんたたちはあんたたちの道をいき、ふさわしい家をちゃんと建てて暮らしなさい」
 ゲルデだった。
 彼女を始め村人は、この半年間で互いに関係を深め合ったクロヴィスたちと家族のようになっていた。だから送り出すのは辛いが、幸せでもあった。
 クロヴィスとアヒムは、その後、全てを知った村の人間と家族、それを見守る人たち全員と共に、飲み明かした。
 そしてその一週間後、クロヴィスたちは荷物を全てまとめて、それでも残せるものは残して、町でもらった幌馬車とフレデリクを伴って、村を発った。
 道中、何度か野宿を繰り返しながら、彼らは定住地を探した。エリクの望んだ音楽の都は小さかったが、素敵な街だった。しかし、そこにエリクのやりたいことはなかった。
 しかしある日、ある野営で、エリクは母にこう告げた。
「母さん、ほく、ようやくやりたいことが見つかったよ」
 エルヴィールがびっくりしていると、エリクは、照れながら、こう言った。
「僕は、医者になるよ。医者になって、たくさんの人を笑顔にしたいんだ」
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