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第3章 命
新しい生命
三、命
テルストラ都市国家連合の復活からわずか四日。
その日の夜は、満天の星が輝く夜だった。空には雲一つなく、宇宙をそのまま見ているかのような壮大な星空が見えていた。
雨季であるこの時期には珍しい天気だ。外は雪が積もっている。
その晩、夜勤で病院にいて、ナース・ステーションでカルテの整理をしていたケンは、突然かかってきた内線電話に急いで出た。
救急外来の事務員からだった。前期破水を起こして、急いでこちらに向かっている妊婦がいるのだという。それなら産科に連絡がいくはずなのだが、なぜこちらに連絡が来たのだろう。
「産科の先生が帝王切開でとられちゃって。助産師回すから、そっちで対応してほしいの」
そう言われ、ケンは当直の医師を確認した。アースは手術に手を取られていない。外科の医師で産科を見られる医師は他に、研修医二人だけだ。
「先生が見ている研修医だから、大丈夫だと思うけど」
ケンは、内線を切って、ため息をついた。当直の研修医に連絡を取るために小型の通信機を立ち上げる。
研修医は、ケンの連絡を受けるとすぐに準備を始めた。何人かの新人の助産師が、広い個室を借りて、お産のできる部屋に改造してゆく。
そこへ、産婦が到着した。ケンは驚いて声をあげた。
「リーアさん!」
ケンは急いでカロンに電話をした。病院からの電話を受け、カロンは急いで駆けつけてきた。出産は命懸けだ。それを知ってか知らずか、必死の形相で、冬であるにもかかわらず汗をびっしょりとかいていた。
「リーアは、リーアと赤ちゃんは、無事なのか?」
カロンは息を切らしてケンにそう聞いてきた。
ケンはよくわからなかったので、すぐそばにいた看護師が落ち着くように言い、分娩室になっている病室の前に椅子を出してカロンを座らせた。
「今はあなたが落ち着いてください。奥さんは相当な痛みに耐えているんです。自分と赤ちゃんのことで精いっぱいなんですよ。必要なのは彼女を支える手、いえ、腕です。ぜひ、出産に立ち会ってください。あまりの苦しさに奥さんが弱音を吐くこともあるかもしれません。それを受け止めてあげてください」
カロンは、助産師にそう言われてようやく落ち着いた。
しかしまだ興奮した状態は直っていない。きちんとリーアと向き合えるようになってから部屋の中に入ってもらう、看護師はそう言い、陣痛に耐えるリーアの声を外から聞いていた。医師の出番が来るのはもっと後だ。リーアの陣痛はまだおさまらない。カロンがそわそわし始めると、看護師は中に入るように促した。
「カロンさん、気を強く持ってくださいね」
ケンがそう言って、カロンを見送った。
しばらくして、リーアの苦しみの声の質が変わってくると、ようやく研修医が部屋に入った。
それから二時間。誰も部屋から出てくることなく、出産は終わった。赤ん坊の泣き声が病室に響き、取り上げた助産師がすぐに産湯に赤ちゃんをつける。
「女の子ですよ」
助産師が笑って言うと、リーアは涙を流して喜んだ。カロンはリーアと同様に必死だったらしく、赤ちゃんが女の子だと聞くと、安心してその場にへたり込んだ。
出産時に血を見たというのもあった。少年時代から戦争に巻き込まれて血を見慣れているはずのカロンが、赤ちゃんが出てくるときに出る血に失神しそうになっているのは、ケンには皮肉に思えた。
リーアは、その後一週間病院に入院した。
経過は順調で、一週間後の退院の時には笑顔で皆に挨拶をしていった。出生届はカロンが役所に出していた。
名前は、女の子の場合と男の子の場合と二つ考えてあったため、すぐ決まった。
『シャロン』
女の子は、そう名付けられた。
テルストラ都市国家連合の復活からわずか四日。
その日の夜は、満天の星が輝く夜だった。空には雲一つなく、宇宙をそのまま見ているかのような壮大な星空が見えていた。
雨季であるこの時期には珍しい天気だ。外は雪が積もっている。
その晩、夜勤で病院にいて、ナース・ステーションでカルテの整理をしていたケンは、突然かかってきた内線電話に急いで出た。
救急外来の事務員からだった。前期破水を起こして、急いでこちらに向かっている妊婦がいるのだという。それなら産科に連絡がいくはずなのだが、なぜこちらに連絡が来たのだろう。
「産科の先生が帝王切開でとられちゃって。助産師回すから、そっちで対応してほしいの」
そう言われ、ケンは当直の医師を確認した。アースは手術に手を取られていない。外科の医師で産科を見られる医師は他に、研修医二人だけだ。
「先生が見ている研修医だから、大丈夫だと思うけど」
ケンは、内線を切って、ため息をついた。当直の研修医に連絡を取るために小型の通信機を立ち上げる。
研修医は、ケンの連絡を受けるとすぐに準備を始めた。何人かの新人の助産師が、広い個室を借りて、お産のできる部屋に改造してゆく。
そこへ、産婦が到着した。ケンは驚いて声をあげた。
「リーアさん!」
ケンは急いでカロンに電話をした。病院からの電話を受け、カロンは急いで駆けつけてきた。出産は命懸けだ。それを知ってか知らずか、必死の形相で、冬であるにもかかわらず汗をびっしょりとかいていた。
「リーアは、リーアと赤ちゃんは、無事なのか?」
カロンは息を切らしてケンにそう聞いてきた。
ケンはよくわからなかったので、すぐそばにいた看護師が落ち着くように言い、分娩室になっている病室の前に椅子を出してカロンを座らせた。
「今はあなたが落ち着いてください。奥さんは相当な痛みに耐えているんです。自分と赤ちゃんのことで精いっぱいなんですよ。必要なのは彼女を支える手、いえ、腕です。ぜひ、出産に立ち会ってください。あまりの苦しさに奥さんが弱音を吐くこともあるかもしれません。それを受け止めてあげてください」
カロンは、助産師にそう言われてようやく落ち着いた。
しかしまだ興奮した状態は直っていない。きちんとリーアと向き合えるようになってから部屋の中に入ってもらう、看護師はそう言い、陣痛に耐えるリーアの声を外から聞いていた。医師の出番が来るのはもっと後だ。リーアの陣痛はまだおさまらない。カロンがそわそわし始めると、看護師は中に入るように促した。
「カロンさん、気を強く持ってくださいね」
ケンがそう言って、カロンを見送った。
しばらくして、リーアの苦しみの声の質が変わってくると、ようやく研修医が部屋に入った。
それから二時間。誰も部屋から出てくることなく、出産は終わった。赤ん坊の泣き声が病室に響き、取り上げた助産師がすぐに産湯に赤ちゃんをつける。
「女の子ですよ」
助産師が笑って言うと、リーアは涙を流して喜んだ。カロンはリーアと同様に必死だったらしく、赤ちゃんが女の子だと聞くと、安心してその場にへたり込んだ。
出産時に血を見たというのもあった。少年時代から戦争に巻き込まれて血を見慣れているはずのカロンが、赤ちゃんが出てくるときに出る血に失神しそうになっているのは、ケンには皮肉に思えた。
リーアは、その後一週間病院に入院した。
経過は順調で、一週間後の退院の時には笑顔で皆に挨拶をしていった。出生届はカロンが役所に出していた。
名前は、女の子の場合と男の子の場合と二つ考えてあったため、すぐ決まった。
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