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2章 特科クラスと冒険者ギルド
4話 専任教師
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私の好きな異性ってどんな人?
ドツボに嵌っていると、ある人が訪れた。
「や、久しぶり!」
「なんで貴女が?」
黒髪をポニーテールで束ねつつ、カジュアルさと堅い雰囲気が合わさったコーディネートの大人の女性。
仮に、彼女が動物であったなら剝製にして、飾っているであろう大きい獲物。
何時ぞや、私が首の骨を折った誰かさん。
Eクラスの担任のテレジア・バッシュ先生だった。
「フリードリヒさん? 貴女、確か……。シュトラール君の婚約者で、同棲しているんじゃなかったっけ?」
「おほほ。彼とは別れてゾフィーヤに乗り換えたんです」
え。
「そ、そう……。貴族のお付き合いって進んでいるのね」
「納得しないでください!」
さては、この人天然だな?
あ、でもエマちゃんが恋人か。なんだろう……。ちょっと
「ねぇ……ゾフィーヤ? 私、冗談で言ったのよ」
だよねー! そうだよねー!
なんで、私、顔が熱く!?
「こほん。……先生は、身体の調子は大丈夫ですか?」
首を折った挙句に治療した私の言葉としては、どうなのか。
「前よりも好調なくらいよ! 流石ね! キッペンベルグさん!」
「そうですか。それは、よかったです。それで、本日はどのような要件でしょうか」
テレジア先生はEクラスの担任だ。先日のEクラスに協力したことのお礼かな?
「それね。うん。改めて意識するとこそばゆいのだけれども。まずは何から話したらいいかしら」
先生は、紅茶をすする。
美味しそうに飲んでいるけど、我が家程度の紅茶をそんな美味しく味わえるとは……。
平民というか。安月給なんだ。
「では、報告しましょうか」
快活な人だ。
トップ5ではあるが、引っ込み思案な私に失望を向けない人は珍しい。
「先日の、一件を受けて教育体制が変更されることになったの」
「はぁ……」
なんで?
「ヴァイストイフェリン公爵様ですね? 学長であるあの人はティガーとゾフィーヤたった2人に殲滅された生徒のレベルに失望されたのでしょう?」
「そうだよ。よくわかるね。フリードリヒさん」
なんでわかるの? フリードリヒさん。
エマちゃんに対応してもらった方が話が進みそう。
「いえ。公爵は厳しい方ですから。それに、仮に、自分が学長なら同じように考えます」
やだ! 私の親友格好いい! 本物のお嬢様!
「ねぇ……。その目やめてくれる? なんか怖いわ」
イエス! ユアハイネス!
「頭がいいのね。貴女がCクラスなんて信じられないわ」
「魔法の実技があまり得意ではないので」
多分、エマちゃんはシュトラール君が貶されているAクラスにいたくないのだ。
だから、わざとCクラスに所属している。俗物には囲まれたくないのだろう。
「それでね。クラスの新設と教員の配置転換があったのよ」
「新設?」
どういうこと? 平民の学校と違って、魔法学校は国中から魔力を持つ15から18歳の子供が集められるから、追加募集はあり得ないけど……。
「トップ5」
私を含めた1年生にいる規格外魔力量の持ち主のことだ。
「貴方たちをAクラスから切り離して、特科クラスとするのよ」
先生は、続けた。
「私は、その特科クラスの担任、その内の1人に選ばれたから報告に来たのよ」
また、わからないことだ。エマちゃんが察して質問してくれた。
「1人? 複数人の専任教員が置かれるのですか? トップ5と同じ規格外魔力を持つ貴女が、ただ担任に選ばれた。わけではなく」
「その予定だよ。トップ5それぞれに専任教師を付けるの。私は、ゾフィーヤちゃん担当」
えぇ……。先生、私よりも弱いじゃん……。
「確かに、私は貴女に完膚なきまで敗北したけど、貴方に足りないものを補えるわ。というか、貴方に必要なものは基礎的な魔法知識と実践だから。あの事件で貴方が使った魔術は余りにも少ない。シュトラール君と比べて自由に魔法が扱えない感覚があるんじゃないかしら?」
腑に落ちた……。落ちはしたけれど。
「私、そんな戦闘力いりません……。普通にお友達を作りたい……。だから、普通の教育が受けたいです……」
「ゾフィーヤちゃん……」
そう。私が田舎から出てきたのはただ親に言われたから。
折角、こんなところに来たならお友達くらい作りたい。
エマちゃんみたいに。
私はエマちゃんを見た。エマちゃんは優しく笑っていた。
「貴女、やっぱりティガーに似てる。真面目な話をすれば想像できないような幸運な悩みを口にして。……特科クラス、行くべきよ。貴方に相応しい場所のはず」
「でも、エマちゃん……。私は」
「今は休校中だけどさ。前みたいに、引きこもって、心地いいことだけしているのは良くないことよ。それに、貴方たちは周りの人間を狂わす」
「狂わす?」
「そう。ティガーが叔母様や私の人生を狂わしたように。レーマンが、Aクラスのみんなのカリスマになったように。貴方だって、誰かの人生の歯車を壊した。ルッツ・クーンとか?」
「私が? ルッツ君の?」
「貴方に合わなければ、彼はティガーに雇われてはいないわ」
そうだけど……。
「だから、特科クラスで学校に通いながら、普通の魔法使いから隔離されるのはとても良いことのはずよ」
エマちゃん……。エマちゃんがそう言うなら
「どちらにせよ、断れるものではないわ。貴女達は言外に公爵様……貴女たちよりも優れた魔法使いでもあるあの方から登校しろと命じられているのだから」
ドツボに嵌っていると、ある人が訪れた。
「や、久しぶり!」
「なんで貴女が?」
黒髪をポニーテールで束ねつつ、カジュアルさと堅い雰囲気が合わさったコーディネートの大人の女性。
仮に、彼女が動物であったなら剝製にして、飾っているであろう大きい獲物。
何時ぞや、私が首の骨を折った誰かさん。
Eクラスの担任のテレジア・バッシュ先生だった。
「フリードリヒさん? 貴女、確か……。シュトラール君の婚約者で、同棲しているんじゃなかったっけ?」
「おほほ。彼とは別れてゾフィーヤに乗り換えたんです」
え。
「そ、そう……。貴族のお付き合いって進んでいるのね」
「納得しないでください!」
さては、この人天然だな?
あ、でもエマちゃんが恋人か。なんだろう……。ちょっと
「ねぇ……ゾフィーヤ? 私、冗談で言ったのよ」
だよねー! そうだよねー!
なんで、私、顔が熱く!?
「こほん。……先生は、身体の調子は大丈夫ですか?」
首を折った挙句に治療した私の言葉としては、どうなのか。
「前よりも好調なくらいよ! 流石ね! キッペンベルグさん!」
「そうですか。それは、よかったです。それで、本日はどのような要件でしょうか」
テレジア先生はEクラスの担任だ。先日のEクラスに協力したことのお礼かな?
「それね。うん。改めて意識するとこそばゆいのだけれども。まずは何から話したらいいかしら」
先生は、紅茶をすする。
美味しそうに飲んでいるけど、我が家程度の紅茶をそんな美味しく味わえるとは……。
平民というか。安月給なんだ。
「では、報告しましょうか」
快活な人だ。
トップ5ではあるが、引っ込み思案な私に失望を向けない人は珍しい。
「先日の、一件を受けて教育体制が変更されることになったの」
「はぁ……」
なんで?
「ヴァイストイフェリン公爵様ですね? 学長であるあの人はティガーとゾフィーヤたった2人に殲滅された生徒のレベルに失望されたのでしょう?」
「そうだよ。よくわかるね。フリードリヒさん」
なんでわかるの? フリードリヒさん。
エマちゃんに対応してもらった方が話が進みそう。
「いえ。公爵は厳しい方ですから。それに、仮に、自分が学長なら同じように考えます」
やだ! 私の親友格好いい! 本物のお嬢様!
「ねぇ……。その目やめてくれる? なんか怖いわ」
イエス! ユアハイネス!
「頭がいいのね。貴女がCクラスなんて信じられないわ」
「魔法の実技があまり得意ではないので」
多分、エマちゃんはシュトラール君が貶されているAクラスにいたくないのだ。
だから、わざとCクラスに所属している。俗物には囲まれたくないのだろう。
「それでね。クラスの新設と教員の配置転換があったのよ」
「新設?」
どういうこと? 平民の学校と違って、魔法学校は国中から魔力を持つ15から18歳の子供が集められるから、追加募集はあり得ないけど……。
「トップ5」
私を含めた1年生にいる規格外魔力量の持ち主のことだ。
「貴方たちをAクラスから切り離して、特科クラスとするのよ」
先生は、続けた。
「私は、その特科クラスの担任、その内の1人に選ばれたから報告に来たのよ」
また、わからないことだ。エマちゃんが察して質問してくれた。
「1人? 複数人の専任教員が置かれるのですか? トップ5と同じ規格外魔力を持つ貴女が、ただ担任に選ばれた。わけではなく」
「その予定だよ。トップ5それぞれに専任教師を付けるの。私は、ゾフィーヤちゃん担当」
えぇ……。先生、私よりも弱いじゃん……。
「確かに、私は貴女に完膚なきまで敗北したけど、貴方に足りないものを補えるわ。というか、貴方に必要なものは基礎的な魔法知識と実践だから。あの事件で貴方が使った魔術は余りにも少ない。シュトラール君と比べて自由に魔法が扱えない感覚があるんじゃないかしら?」
腑に落ちた……。落ちはしたけれど。
「私、そんな戦闘力いりません……。普通にお友達を作りたい……。だから、普通の教育が受けたいです……」
「ゾフィーヤちゃん……」
そう。私が田舎から出てきたのはただ親に言われたから。
折角、こんなところに来たならお友達くらい作りたい。
エマちゃんみたいに。
私はエマちゃんを見た。エマちゃんは優しく笑っていた。
「貴女、やっぱりティガーに似てる。真面目な話をすれば想像できないような幸運な悩みを口にして。……特科クラス、行くべきよ。貴方に相応しい場所のはず」
「でも、エマちゃん……。私は」
「今は休校中だけどさ。前みたいに、引きこもって、心地いいことだけしているのは良くないことよ。それに、貴方たちは周りの人間を狂わす」
「狂わす?」
「そう。ティガーが叔母様や私の人生を狂わしたように。レーマンが、Aクラスのみんなのカリスマになったように。貴方だって、誰かの人生の歯車を壊した。ルッツ・クーンとか?」
「私が? ルッツ君の?」
「貴方に合わなければ、彼はティガーに雇われてはいないわ」
そうだけど……。
「だから、特科クラスで学校に通いながら、普通の魔法使いから隔離されるのはとても良いことのはずよ」
エマちゃん……。エマちゃんがそう言うなら
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