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<三章:大切なモノを奪還せよ>
大切なモノは失って初めて気づくモノ
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状況から考えるに、答えは一つ。勇者があの壺を使うことで、神官の女子を召喚したのだ。壺が割れているところを見るに間違いないだろう。
「もったいな!」
と言ったのは魔王だった。超絶同感。もっと良い願いがあったのに、あの勇者は神官の女子を召喚することにしたのだ。様々願いを思いつくだろうに、それでもあいつは、願ったのだ。あの魔法使いには分が悪いな。こんなに思われていたなんて、な。
「助けに行くにしても、彼女は元勇者パーティーでございましょう。さてどうしますかな? 魔王代理」
クスノが言う。その声音には、クスノらしいねちっこいというか、含みのある感情が込められているような気がした。年長者にはお見通しってか? 余計なものを見通しやがって。
「いや、行こう。今すぐに」
「じゃが、ここから魔王城まで、それこそワープでもせんと助けられん距離じゃぞ? それに助けるのか? あいつ勇者パーティーに戻るかもしれんぞ?」
魔王はそう言うけれど、まったくもってその通りなんだけれど、なんだろうな。この気持ちは。独占欲というか、なんというか。
パン。と聞こえた。どこからだ? と音の方を向くと、それは魔王が投影している映像からだった。神官の女子が勇者に平手打ちをしていたのだ。それを見て、不覚にもうれしいと思ってしまった。
馬鹿め。本当に俺は馬鹿だな。人と食を囲んだ程度で、友達に抱くような感情を抱いてしまっている。それじゃあ牛丼チェーン店に通うサラリーマンは皆家族になっちまうよ。
ため息を吐き、意を決して魔王に聞く。
「おい魔王、確か魔王城で育てていた酪農生物には、固有種が含まれているとか言ってたよな」
俺の意図が読めないのか、馬鹿を見る目で首を傾げる。
「そりゃおったが、だから何なのじゃ?」
「一番旨いのってなんだ?」
「ええと、牛魔肉じゃな。しかし勇者に全部ボコされてしまったからのぉ……」
それでいい。それがいいんだよ。俺はほくそ笑む。時間がないから端的に、クスノと魔王に命じた。
「今すぐ向かう、準備はいいな」
「じゃが、さっき距離があると――」
「それに彼女は元勇者の一味ですぞ?」
ああ、もう。
「うるせぇな、いいから行くぞ、『俺に摑まれ』」
魔王代理命令だ。
俺の目は、もしかしたらすごく吊り上がっていたかもしれない。しかし怒りのような気持ちはないではなかった。
大人しく二人は俺にしがみつく。クスノは少し重かったが、この程度の重さ、屁でもない。成人男性一人分の重さなんて、重さの内に入らねぇよ。
俺はその状態でモモの木から樹の実を一つ取り、パカリと割る。そこから現れたモモの小さな肩を後ろから掴み、三人分の体重をモモにかけた状態で言った。
「牛魔肉のステーキ、四人分で。今すぐに」
「ご注文、承りました」
モモは伝票をサラりと書き、俺たちと共に空を飛んだ。
* * *
「急に叩くなよ! 痛いだろうが!」
「いやいや! 急に近づいてきたらびっくりするでしょ!」
それはその通りだった。しかし会いたいと思ったら、目の前に現れた。これはもう運命と言っても過言ではないだろう。そして抱きしめようとしてもいいじゃないか。そう言うと。
「いやいやいや、その彼氏面がキモイっての! それ以上近づいたら撮るわよ」
メアリーは杖を向けて放送魔法を発動しようとしている。ヤバイ、これはマジで怒ってる奴だ。前にメアリーのオフなところを隠し撮りして投稿したことがあった。その時は勇者ではなかったし俺の登録者数も皆無だったので、マジギレされた。それと同じ顔をしている。
「ご、ごめんごめん」
「勇者様、何故メアリー様がそちらに?」
と言ったのは、マサトだった。神官の杖を向けて少し警戒しつつ近づてくる。
「杖を向けなくてもいい、こいつは味方だ」
「でも、その真っ黒な見た目、それにはだけた状態、もう魔族なんじゃないの?」
「勇者、少し離れた方がいいよ」
サナとナイツは、やはり以前の険悪なイメージが払拭できないのか、警戒心というよりは敵愾心を抱いていた。二人の誤解、というか過度なその気持ちをマイルドにできればいいのだが。
「大丈夫だって二人とも、害はない」
言って「あ、これ言い方が野生動物へのそれだな」とも思った。振り向くと、めっちゃ嫌悪の視線で見てきた。
何にしても、これは俺から仲立ちするしかない。彼女を追加の仲間として、俺が三人を説得することができれば、皆も仲良くなるかもしれない。人類を守る勇者のパーティーの仲間が険悪では示しがつかないからな。
あれ、俺ってそこまで勇者として誇り持ってたっけ?
「そうですね、しかし一度魔に堕ちた者を仲間に引き入れるというのは、我々も信用するには難しい」
そう言ったマサトの持つ杖は光っていた。いや、明かりを灯してくれていたからな、そりゃ光っているか。しかし何故だろうか、その杖からは、光の魔法とは違うような、魔を感じる。
「勇者! そんな汚らわしい女から早く離れて!」
「勇者、早くそいつから離れろ、そいつは魔族なんだ!」
二人の様子が、おかしい。恨みを持っているとしても、かたくなすぎる。
「マサト、俺の直感だが、もしかすると二人は状態異常にあるのかもしれない、お前の魔法で浄化できないか?」
「いえ、彼らは正常ですよ。彼らの恨みは正しい。それは人間の当たり前の感情です。どういう効果か分かりませんが、その特殊な壺を消費してまでメアリーを呼びつける貴方の方が余程異常だ」
杖の光は白い光から、闇色の光に変わる。その闇は二人の体を包み込み、二人の目も同じ闇色に染まった。
「マサト、お前二人に何を!?」
「正当な恨みを膨らませただけですよ、そういう精神操作の魔法です。勇者様にはその剣の力でジャミングされてしまいますがね。流石は勇者様。魔王を撃退した男」
しかし。
「今の魔王は相当弱っているではありませんか、なら僕でも勝てそうだ。勇者様はお亡くなりになったが、からがら僕だけは生き残り魔王を倒した。いい筋書だと思いませんか?」
「お前、そんなことのために俺の仲間を!」
おかしい、俺はこんなに仲間を思う人間だったか? 女ならともかく。二人中一人は女なのだが。いや違う。
仲間ではなく、一緒に苦楽を共にした、友だから。それを仲間と呼ぶのかもしれないが。
「仲間」という、無意識に想起させた言葉よりも、俺が導き出した「友」の方が、相応しいような気がした。
だから。
「さぁ、まずはお仲間に殺されてから、次は同士討ちでもさせましょう。そうすれば僕が一人生き残り栄光を掴めるという寸法だ」
いやらしく笑むマサトに、怒りのままに剣を握る! 怒りのままに!
「俺の友達に何して――」
「とーーーおーーーちゃーーーく!」
蹴られた。それもただの蹴りではない、分厚いレンガの壁を、まるで古びたステンドグラスのように軽々しく突き破り、しかしそれでも何の抵抗もなく、真っすぐ突っ込んできた蹴りである。いやもうそれ、蹴りではなく隕石だろ! ってくらいの勢いで、俺は顔面を蹴られた。そのまま壁にぶっ飛ばされる。勇者の加護的なものが無ければ、まず即死の一撃だった。
「な、ななな、何だ貴様!?」
朦朧とした意識の中、マサトの慌てふためく声がエントランスに響く。ざまぁみろとも思ったが、それ以上にマサトと同じ感情を抱いていた。
一体、俺は何にぶっ飛ばされた?
「何ってそりゃ」
男は黄金の鎧をまとい、その力は小さな魔王と木の男を包んでいる。そしてそれを抱える小さなピンク色の爆発頭の小人が目に映った。
「ウーバーイーツだよ」
魔王の代理が、そこにいた。
「もったいな!」
と言ったのは魔王だった。超絶同感。もっと良い願いがあったのに、あの勇者は神官の女子を召喚することにしたのだ。様々願いを思いつくだろうに、それでもあいつは、願ったのだ。あの魔法使いには分が悪いな。こんなに思われていたなんて、な。
「助けに行くにしても、彼女は元勇者パーティーでございましょう。さてどうしますかな? 魔王代理」
クスノが言う。その声音には、クスノらしいねちっこいというか、含みのある感情が込められているような気がした。年長者にはお見通しってか? 余計なものを見通しやがって。
「いや、行こう。今すぐに」
「じゃが、ここから魔王城まで、それこそワープでもせんと助けられん距離じゃぞ? それに助けるのか? あいつ勇者パーティーに戻るかもしれんぞ?」
魔王はそう言うけれど、まったくもってその通りなんだけれど、なんだろうな。この気持ちは。独占欲というか、なんというか。
パン。と聞こえた。どこからだ? と音の方を向くと、それは魔王が投影している映像からだった。神官の女子が勇者に平手打ちをしていたのだ。それを見て、不覚にもうれしいと思ってしまった。
馬鹿め。本当に俺は馬鹿だな。人と食を囲んだ程度で、友達に抱くような感情を抱いてしまっている。それじゃあ牛丼チェーン店に通うサラリーマンは皆家族になっちまうよ。
ため息を吐き、意を決して魔王に聞く。
「おい魔王、確か魔王城で育てていた酪農生物には、固有種が含まれているとか言ってたよな」
俺の意図が読めないのか、馬鹿を見る目で首を傾げる。
「そりゃおったが、だから何なのじゃ?」
「一番旨いのってなんだ?」
「ええと、牛魔肉じゃな。しかし勇者に全部ボコされてしまったからのぉ……」
それでいい。それがいいんだよ。俺はほくそ笑む。時間がないから端的に、クスノと魔王に命じた。
「今すぐ向かう、準備はいいな」
「じゃが、さっき距離があると――」
「それに彼女は元勇者の一味ですぞ?」
ああ、もう。
「うるせぇな、いいから行くぞ、『俺に摑まれ』」
魔王代理命令だ。
俺の目は、もしかしたらすごく吊り上がっていたかもしれない。しかし怒りのような気持ちはないではなかった。
大人しく二人は俺にしがみつく。クスノは少し重かったが、この程度の重さ、屁でもない。成人男性一人分の重さなんて、重さの内に入らねぇよ。
俺はその状態でモモの木から樹の実を一つ取り、パカリと割る。そこから現れたモモの小さな肩を後ろから掴み、三人分の体重をモモにかけた状態で言った。
「牛魔肉のステーキ、四人分で。今すぐに」
「ご注文、承りました」
モモは伝票をサラりと書き、俺たちと共に空を飛んだ。
* * *
「急に叩くなよ! 痛いだろうが!」
「いやいや! 急に近づいてきたらびっくりするでしょ!」
それはその通りだった。しかし会いたいと思ったら、目の前に現れた。これはもう運命と言っても過言ではないだろう。そして抱きしめようとしてもいいじゃないか。そう言うと。
「いやいやいや、その彼氏面がキモイっての! それ以上近づいたら撮るわよ」
メアリーは杖を向けて放送魔法を発動しようとしている。ヤバイ、これはマジで怒ってる奴だ。前にメアリーのオフなところを隠し撮りして投稿したことがあった。その時は勇者ではなかったし俺の登録者数も皆無だったので、マジギレされた。それと同じ顔をしている。
「ご、ごめんごめん」
「勇者様、何故メアリー様がそちらに?」
と言ったのは、マサトだった。神官の杖を向けて少し警戒しつつ近づてくる。
「杖を向けなくてもいい、こいつは味方だ」
「でも、その真っ黒な見た目、それにはだけた状態、もう魔族なんじゃないの?」
「勇者、少し離れた方がいいよ」
サナとナイツは、やはり以前の険悪なイメージが払拭できないのか、警戒心というよりは敵愾心を抱いていた。二人の誤解、というか過度なその気持ちをマイルドにできればいいのだが。
「大丈夫だって二人とも、害はない」
言って「あ、これ言い方が野生動物へのそれだな」とも思った。振り向くと、めっちゃ嫌悪の視線で見てきた。
何にしても、これは俺から仲立ちするしかない。彼女を追加の仲間として、俺が三人を説得することができれば、皆も仲良くなるかもしれない。人類を守る勇者のパーティーの仲間が険悪では示しがつかないからな。
あれ、俺ってそこまで勇者として誇り持ってたっけ?
「そうですね、しかし一度魔に堕ちた者を仲間に引き入れるというのは、我々も信用するには難しい」
そう言ったマサトの持つ杖は光っていた。いや、明かりを灯してくれていたからな、そりゃ光っているか。しかし何故だろうか、その杖からは、光の魔法とは違うような、魔を感じる。
「勇者! そんな汚らわしい女から早く離れて!」
「勇者、早くそいつから離れろ、そいつは魔族なんだ!」
二人の様子が、おかしい。恨みを持っているとしても、かたくなすぎる。
「マサト、俺の直感だが、もしかすると二人は状態異常にあるのかもしれない、お前の魔法で浄化できないか?」
「いえ、彼らは正常ですよ。彼らの恨みは正しい。それは人間の当たり前の感情です。どういう効果か分かりませんが、その特殊な壺を消費してまでメアリーを呼びつける貴方の方が余程異常だ」
杖の光は白い光から、闇色の光に変わる。その闇は二人の体を包み込み、二人の目も同じ闇色に染まった。
「マサト、お前二人に何を!?」
「正当な恨みを膨らませただけですよ、そういう精神操作の魔法です。勇者様にはその剣の力でジャミングされてしまいますがね。流石は勇者様。魔王を撃退した男」
しかし。
「今の魔王は相当弱っているではありませんか、なら僕でも勝てそうだ。勇者様はお亡くなりになったが、からがら僕だけは生き残り魔王を倒した。いい筋書だと思いませんか?」
「お前、そんなことのために俺の仲間を!」
おかしい、俺はこんなに仲間を思う人間だったか? 女ならともかく。二人中一人は女なのだが。いや違う。
仲間ではなく、一緒に苦楽を共にした、友だから。それを仲間と呼ぶのかもしれないが。
「仲間」という、無意識に想起させた言葉よりも、俺が導き出した「友」の方が、相応しいような気がした。
だから。
「さぁ、まずはお仲間に殺されてから、次は同士討ちでもさせましょう。そうすれば僕が一人生き残り栄光を掴めるという寸法だ」
いやらしく笑むマサトに、怒りのままに剣を握る! 怒りのままに!
「俺の友達に何して――」
「とーーーおーーーちゃーーーく!」
蹴られた。それもただの蹴りではない、分厚いレンガの壁を、まるで古びたステンドグラスのように軽々しく突き破り、しかしそれでも何の抵抗もなく、真っすぐ突っ込んできた蹴りである。いやもうそれ、蹴りではなく隕石だろ! ってくらいの勢いで、俺は顔面を蹴られた。そのまま壁にぶっ飛ばされる。勇者の加護的なものが無ければ、まず即死の一撃だった。
「な、ななな、何だ貴様!?」
朦朧とした意識の中、マサトの慌てふためく声がエントランスに響く。ざまぁみろとも思ったが、それ以上にマサトと同じ感情を抱いていた。
一体、俺は何にぶっ飛ばされた?
「何ってそりゃ」
男は黄金の鎧をまとい、その力は小さな魔王と木の男を包んでいる。そしてそれを抱える小さなピンク色の爆発頭の小人が目に映った。
「ウーバーイーツだよ」
魔王の代理が、そこにいた。
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