召喚されたのは、最強の俺でした。~魔王の代理となって世界を支配します~

こへへい

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<三章:大切なモノを奪還せよ>

マサトの気持ちの本質は

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 木の皿に肉の脂のみが残ったところで、ハンカチで口元を拭う、育ちの良い神官の男子。彼の独白を詳らかに聞いて、素直に凄いやつだと思った。

 皆。その壁をこいつは越えたのだ。それはとても難しいことで、誰でもできることではない。「皆と違う」というのは、それだけでプレッシャーが大きく、不安にかられる状態だからだ。一時期はそれに飲み込まれそうにもなったところを、彼は乗り越えた。どころか、プリーストックから得た情報さえ利用して、己の欲を叶えようとしたのである。俗物だと排斥せず、そこからホットな情報を入手し利用した。素直に素晴らしいと思った。

 しかし、是とできない事がある。

「それじゃあ、無意味だな」

「無意味、だって?」

 眉根を寄せる。そして釣り上がった。やはり、こいつはこの方法が最善だと思っていたんだろう。信じてやまず、最高の方法だと。

「あぁ、無意味だ。想像してみろよ、勇者パーティを操り仲間に加わって魔王を倒したとして、お前にその栄誉の光が刺すとでも?」

「いや流石にそこまで大きくは欲をかいてないさ、少しお零れに預かれればって――」

「それが甘い。」

 ピシャリと、言葉を遮った。案の定次は歯噛みし、敵意を込めて視線が送られる。そんなメンチビームに、何の感情も顔に出さず向き合った。

「お零れ? 自惚れの間違いだろ。そんなことでお前の言う『皆』がお前を見るわけねぇ。どころかきっとこう言うぜ? 『あいつ、いても居なくても変わんないな』ってな。お前が凄いんじゃない、勇者やその仲間たちが強いってだけだ」

「その強いパーティーをあんたは半裸にしてチョッタカ山にぶっ飛ばしたんだけどね」

 横から神官の女子が余計な事を言った。振り返って亀甲縛りでもしてやろうと思ったが、我慢して向き合う。
 少なからず尊敬できることは本当だから、せめてもの礼儀として。

「いいか? お前が強くなるんだよ。それしかお前の欲を叶える手段はねぇ」

 狼狽する。目が泳ぐ。「でも、」という言葉は尻切れトンボにあやふやで、しかしなんとか不安定な気持ちを整えて話す。意地を張って。

「僕は、強いさ。勇者パーティーはそんじょそこらの人間とはレベルが違うんだ。そんな奴等を操る魔法が使えるんだぜ?」

「それがダメだって言ってんだよ。わからねぇか? 他人を利用するってのはお前が強いこととイコールじゃねぇ。お前の言う『皆』にとってはな」

 そこで、はたと見開く。気づいたようだ。第三者目線に立てば誰にでも分かりそうなことに初めて。
 そう、たとえ暗躍したところで、影は影。光が刺すことはない。

「だがな、お前は本当に『皆』に認めてもらいたいのか? 認めてもらって、そこから何になりたいんだ? 承認欲求を満たして、それからどうなる? 何になりたいんだ?」

 矢継ぎ早に質問を攻めると、どんどんと縮こまる。悩み、迷い、移ろい、漂う。気持ちがフラつき、足元が覚束なくなる。そんなアンバランスをなんとか食い止めて、キッと敵意で踏ん張った。

「さっきからグチグチ言いやがって、何が言いたいんだよ! 僕が承認欲求を持っていることを論って何がしたいんだ! 人を責めて楽しみたいだけか!?」


「お前は本来の欲求を、見失ってるんじゃないのか?」


 聞く。しかし疑問符が出ており分かりかねているようで、「は?」としか返ってこない。

「最初は魔法を皆と一緒に極めようとしていたんじゃないのか? それが今や、皆に認められることそのものが目的になっていないか? そう言ってるんだよ」

「そうか、魔法を……極めて……。いやでも、何で認められたいって……?」

 そこで黙った。心当たりがあるんだろう、しかし今まで気づかなかったことが何故見失ってしまったのか、それが疑問のようだった。

「僕は、皆に認められたくて、僕が凄いことの証明のために魔法を勉強して……」

「だからさぁ!」

 肩を掴んだ。わかって欲しいと願った。今までこんな事があっただろうか? こんなにもわかって欲しいと思ったことが、あっただろうか。

「証明とか! そう言うんじゃないだろ!」

 初めてこの世界で、感情的になった。惜しいんだ。魔法への好奇心、技術を磨く程のモノ好き。それはとても得難い、才能と呼んでもいい自分の心の声なのだ。しかし、彼はまだ囚われている。
 皆に認めてもらうという、承認欲求という呪いに。そのことが本当に惜しくて、気づいてほしくて仕方がなかった。

「お前の望みは、プリーストックとか見てるような奴等にエンタメとして処理される事なのか!? 皆に認められチヤホヤされることなのか!?」

「ちょっと失礼ね! トッププリーストッカーの私を前にして!」

「うるせぇな! どうせ中高生の性癖歪ませて稼いでんだろ黙ってろ!」

「私の動画見てないからそんなこと言うのよ! 見てみてってばー!」

 と言うので、実際に少しはプリーストックを見た目の前の神官に聞いてみた。

「どなの?」

「めっちゃ出してました」

「ほらぁ」

 暴れようとしている神官の女子を、魔王とクスノで止めていた。話に割り込まない辺り空気は読めるらしい。気遣いのできる奴等だ。しかし毒気が抜けるな。

「あー、なんだ、とにかくその弱いままだとお前は永遠に変わらねぇよ。永遠に。」

 繰り返した。これ以上繰り返してほしくないから、永遠にという言葉を繰り返した。再び神官の男子の感情が高ぶる。

「じゃあ、どうしろってんだよ。僕が頑張っても誰にも振り向いてもらえない。そんなの――」

 そんなの、寂しいじゃないか。

 悲しくも痛々しい叫び声は嗚咽交じりで、呼吸を必死に行いながら顔を下げた。
 違うだろう、お前が聞く声は、それじゃないだろ。

「確かに寂しいだろうぜ、でもいいじゃねぇか。お前がお前の道を進んでついて来れない奴なんて、置いていけばいいだろう。共感されなくたって、感情移入されなくたって、ポッと出の新キャラだからって、他人の目なんか気にしなくていいんだぜ。曲がったお前なんてお前じゃねぇんだから」

 世の中皆、曲がって削られて、出る杭打たれて丸くなる。角もなく、ただ当たり障りなく人生が過ぎ去っていく。
 なんてつまらない、なんてくだらない人生だろう。そんな人生に足を踏み入れる奴がいるのは、見ていられなかった。

「お前が曲がらずに進み続けた世界は寂しいかもしれない。認めてくれる人は見当たらないかもしれない。けど、くだらない人間のために人生を曲げるな。そのままお前の声を聴いて突き進めればいい」

「そんなの、報われなければ意味がないじゃないか」

 まだそんな事を言う少年に、俺は手を差し伸べた。

「なら、俺がお前を認めてやろう。来る者拒まずの魔王城だ。歓迎するぜ」
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