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<四章:人間の国を調査せよ>
毒を食らわばお友達
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「許さない、か。毒を盛ろうとするやつからの許しに需要があるとでも?」
そう言うと、おさげは一瞬顔を引きつる。いや、あんな露骨に急にお菓子を渡されたら誰でも怪しむ。相手が女の子でなければ、不用心に受け取らずあの夫婦もゲロることはなかっただろう。多分女の子で無かったとしても、後ろの不用心なゲロインは受け取っていたんだろうが。
「な、何のことでしょうね、話をすり替えないでいただきたいです!」
しらばっくれるおさげ。しかしこうしていても埒がない。タイムリミットがあるのかどうかも曖昧な、情報が少ない現状で油を売っているほど、悠長に構えたくはないものだ。なので。
「なぁ、勇者の超冒険って物語の作者ってどこにいるか知らないか?」
率直に聞いた。どうせ町に入ったら色んな人に聞くのだ、こいつに聞いてもいいだろう。信頼性という点では程度は低めだが、聞かなければ何も始まらない。なんなら静寂なバスの中で、他のお客様のご迷惑にならない程度でこの話をして世間話に花を咲かせても良かったくらいだ。そういう軽い気持ちで尋ねてみたのだが、目がキラキラと輝くのが分かった。どうやらバス内で花を咲かせなかったのは正解らしい。
「あ、貴方はユウチョウの作者も知らないのですか!? 今まで何を糧に生きてるんですか!?」
作者を知らないことによって、イコールで人生を否定された。隣では魔王が「マジそれじゃよなぁ」と同意している。
「あー知らん知らん、だから教えてくれ。俺に人生を教えてくれよー」
興味なさげに言ったものの、行間も読めないのかまだ輝きは冷めやらぬようで、長い話が始まった。
* * *
二時間後。多分二時間後。俺の意識が正常ならば二時間、トースターの手前で飯を食うことなくたちっぱで話を聞いた。ある程度要約して話してくれたらしいのだが、それでも漸く終わったのかと、流石にぶっ倒れた。空は橙色に染め上がり日が沈もうとしている。
「えもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
と、魔王はご満足したようで。神官の女子に至っては後半お花摘みと称して色々美味しいものを買ってきてくれていた。団子やら焼きそばやら綿あめやらかき氷やらを器用に持ってきてくれたので大変助かったが、町では祭りでもやっているのだろうか。もう祭りを楽しむ気力も残っていない。宿のベッドに眠りたかった。
「そうでしょうそうでしょうとも! お子さんはなかなか分かってらっしゃいますな! お名前をお聞きしても?」
「マオじゃ! よろしくな同士よ!」
「私はカナタと申します! ユウチョウが作り出したこの出会いに感謝を!」
倒れる真上で、魔王(偽装家族ネームは『マオ』)とおさげ、もといカナタがガシッと握手する。若いもんは仲がよろしくて大変結構。魔王には効かなかったとはいえ、毒盛った奴だってことをすっかり忘れてないか?
すっかり忘れいるようで、この後結局祭りにも付き合わされ、食ったり遊んだりと体力を削られ続ける羽目になった。
そして色々と終わり、やっと宿で体を休められる。
そう思っていたのだが。
「さ、そろそろ休もう。もうお兄さんは疲れました」
「いやーわしもはしゃぎ過ぎたわ、まるでユウチョウの世界に入った気分じゃったわい」
祭りというのも、そのユウチョウの物語に関連する祭りらしく、販売されるお面やくじ引きの景品等もそのユウチョウ関連グッズでファンがごった返していたのだ。その中にはバスに居たBJのコスプレもちらほら散見されており、人気キャラクターなのだということが分かる。要約された物語の内容でも、かつて助けられた勇者を恩人と慕い、勇者の体内に埋め込まれた爆弾を取り除くというシーンがあった。
そんな物語の世界を堪能した二人は、毒を盛り盛られという立場をも忘れて和気あいあいと夜の道を闊歩している。
トースターには詳しいようで、カナタが宿まで案内してくれた。カナタもその宿で一部屋チェックインしているとのこと。
「さぁ、そろそろ宿ですよ、先にチェックインを済ませているので、お先です!」
とててっと宿に入っていく。笑顔でガイドするこの愛想は、友達と認識した魔王に向けられたものなのだろう。どこぞのガイドとは大違いだ。とうなずいていると、後ろから杖で小突かれた。
「ちょっと、良いの?」
「え、何が?」
「宿よ宿、ほらその、あれじゃない?」
何か躊躇いがちにモジモジと口を噤んでいる。どうせまた俺一人が男だからうんぬんかんぬんと色恋に顔を赤らめているのだろう、暗くてよく見えないけれど多分そうだ。はぁ。
「お前、そろそろキャラクターを改めた方がいいぞ、少しは別のリアクションをしてほしいもんだ」
「え? 何の話よ」
「はいはい、恋する乙女ですねー」
と軽くあしらう。「もう、知らない。あんたらなんて野宿すればいいんだわ」とぷんすかして先走り宿に入っていった。子供を置いていくお母さんがいるかよ、仕方がなく一応偽装家族ごっこのために、魔王の手を握って横並びに宿に向かった。
「さ、意味不明なママは先に行かせて俺達も宿でご飯たべよーねーマオちゃーん」
「おう! 行くぞー!」
と、魔王も乗り気に、握る手と逆の手を一緒に前に出して歩き出す。
――――ガン。
俺たちは倒れた。いや、阻まれた。
宿を囲う、保護石の障壁によって。
そう言うと、おさげは一瞬顔を引きつる。いや、あんな露骨に急にお菓子を渡されたら誰でも怪しむ。相手が女の子でなければ、不用心に受け取らずあの夫婦もゲロることはなかっただろう。多分女の子で無かったとしても、後ろの不用心なゲロインは受け取っていたんだろうが。
「な、何のことでしょうね、話をすり替えないでいただきたいです!」
しらばっくれるおさげ。しかしこうしていても埒がない。タイムリミットがあるのかどうかも曖昧な、情報が少ない現状で油を売っているほど、悠長に構えたくはないものだ。なので。
「なぁ、勇者の超冒険って物語の作者ってどこにいるか知らないか?」
率直に聞いた。どうせ町に入ったら色んな人に聞くのだ、こいつに聞いてもいいだろう。信頼性という点では程度は低めだが、聞かなければ何も始まらない。なんなら静寂なバスの中で、他のお客様のご迷惑にならない程度でこの話をして世間話に花を咲かせても良かったくらいだ。そういう軽い気持ちで尋ねてみたのだが、目がキラキラと輝くのが分かった。どうやらバス内で花を咲かせなかったのは正解らしい。
「あ、貴方はユウチョウの作者も知らないのですか!? 今まで何を糧に生きてるんですか!?」
作者を知らないことによって、イコールで人生を否定された。隣では魔王が「マジそれじゃよなぁ」と同意している。
「あー知らん知らん、だから教えてくれ。俺に人生を教えてくれよー」
興味なさげに言ったものの、行間も読めないのかまだ輝きは冷めやらぬようで、長い話が始まった。
* * *
二時間後。多分二時間後。俺の意識が正常ならば二時間、トースターの手前で飯を食うことなくたちっぱで話を聞いた。ある程度要約して話してくれたらしいのだが、それでも漸く終わったのかと、流石にぶっ倒れた。空は橙色に染め上がり日が沈もうとしている。
「えもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
と、魔王はご満足したようで。神官の女子に至っては後半お花摘みと称して色々美味しいものを買ってきてくれていた。団子やら焼きそばやら綿あめやらかき氷やらを器用に持ってきてくれたので大変助かったが、町では祭りでもやっているのだろうか。もう祭りを楽しむ気力も残っていない。宿のベッドに眠りたかった。
「そうでしょうそうでしょうとも! お子さんはなかなか分かってらっしゃいますな! お名前をお聞きしても?」
「マオじゃ! よろしくな同士よ!」
「私はカナタと申します! ユウチョウが作り出したこの出会いに感謝を!」
倒れる真上で、魔王(偽装家族ネームは『マオ』)とおさげ、もといカナタがガシッと握手する。若いもんは仲がよろしくて大変結構。魔王には効かなかったとはいえ、毒盛った奴だってことをすっかり忘れてないか?
すっかり忘れいるようで、この後結局祭りにも付き合わされ、食ったり遊んだりと体力を削られ続ける羽目になった。
そして色々と終わり、やっと宿で体を休められる。
そう思っていたのだが。
「さ、そろそろ休もう。もうお兄さんは疲れました」
「いやーわしもはしゃぎ過ぎたわ、まるでユウチョウの世界に入った気分じゃったわい」
祭りというのも、そのユウチョウの物語に関連する祭りらしく、販売されるお面やくじ引きの景品等もそのユウチョウ関連グッズでファンがごった返していたのだ。その中にはバスに居たBJのコスプレもちらほら散見されており、人気キャラクターなのだということが分かる。要約された物語の内容でも、かつて助けられた勇者を恩人と慕い、勇者の体内に埋め込まれた爆弾を取り除くというシーンがあった。
そんな物語の世界を堪能した二人は、毒を盛り盛られという立場をも忘れて和気あいあいと夜の道を闊歩している。
トースターには詳しいようで、カナタが宿まで案内してくれた。カナタもその宿で一部屋チェックインしているとのこと。
「さぁ、そろそろ宿ですよ、先にチェックインを済ませているので、お先です!」
とててっと宿に入っていく。笑顔でガイドするこの愛想は、友達と認識した魔王に向けられたものなのだろう。どこぞのガイドとは大違いだ。とうなずいていると、後ろから杖で小突かれた。
「ちょっと、良いの?」
「え、何が?」
「宿よ宿、ほらその、あれじゃない?」
何か躊躇いがちにモジモジと口を噤んでいる。どうせまた俺一人が男だからうんぬんかんぬんと色恋に顔を赤らめているのだろう、暗くてよく見えないけれど多分そうだ。はぁ。
「お前、そろそろキャラクターを改めた方がいいぞ、少しは別のリアクションをしてほしいもんだ」
「え? 何の話よ」
「はいはい、恋する乙女ですねー」
と軽くあしらう。「もう、知らない。あんたらなんて野宿すればいいんだわ」とぷんすかして先走り宿に入っていった。子供を置いていくお母さんがいるかよ、仕方がなく一応偽装家族ごっこのために、魔王の手を握って横並びに宿に向かった。
「さ、意味不明なママは先に行かせて俺達も宿でご飯たべよーねーマオちゃーん」
「おう! 行くぞー!」
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――――ガン。
俺たちは倒れた。いや、阻まれた。
宿を囲う、保護石の障壁によって。
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