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<四章:人間の国を調査せよ>
アブソリュートセキュリティ
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『侵入者確認、魔の者の侵入者を感知しました。速やかに殲滅してください。』
闇夜の中、夜にそぐわない爆音が俺達を襲う。両手で耳を抑えていると、どこからともなく真っ赤なスポットライトが、作者の家(仮)の玄関前に照らされる。眩しすぎて、両手をもうワンセットほしいところだった。
眩しいながらも薄目でスポットライトを見ていると、地面が自動ドアのように左右に開く。すると、その穴の下からゆっくりと人が現れた。頭頂部から顔、肩、胸と姿が見えていく。腕を組み仁王立ちするその姿は、プロレスのマスクを着けてタンクトップを身に着けている。ぱっつんぱっつんだった。
真っ赤な光を一心に受けて、固く組んだ腕を解き高らかに叫ぶ。
「ハァァァァァァッハッハッハッハ! よもやこの警報に応じる時が来ようとはなぁ!」
そう言って、切れのあるポージングを決めるマスクドプロレスラー。俺達の姿を見ると、ムムム!? っと俺の足下を見た。そこには魔王がチョコンと佇んでいる。が、その顔は難しい顔をしていた。
「これはこれは! マオちゃんではないか! こんな人間の住処に来るとは珍しい」
「久しいな、アブさん」
「アブさん!?」
アブさんという親しみやすいネーミングはともかく、このちっこい魔王を見て「マオ」と呼んだことに違和感を覚えた。その名前は魔王城からトースターに行くまでに名付けた仮の名前だったからだ。魔王が自分で「魔王だからマオでいいじゃろ」と適当につけたのだが。
「お前何者だ?」
「こいつはアブソリュートガードナーよ、でも勇者が倒したはずでしょ? 私物陰で見てたもん!」
と神官の女子が額に汗をかいて言う。見てただけなのかよ、戦えよお前も。
「小娘、まさか勇者一行の一味か? そうかそうか、その際は世話になったなぁ。しかしあれは四天王としての役目を果たしたまで。今の私はそれで言うと『オフ』だ!」
そういえばクスノも副業で水ソムリエとかしていたし、驚いているこいつもこいつでプリーストッカーっていうストリーマーの副業(本人曰く勇者パーティーが副業らしいのだが)を生業にしていた。こいつもその類だということなのか。なら、どんな副業なんだ?
「あ、あの、勇者とかアブさんとか、何なんですか? 皆の知り合いですか?」
キョロキョロと、一人カナタが狼狽を通り越してきょとんとしている。こいつは部外者も部外者だ、穏便にことを済ませられないだろうか。
「なぁ、俺らそこの家の人の知り合いなんだ。そこを通しちゃくれないか?」
ダメ元で聞いてみた。アブさんは顎に手を当てて考える。
「知り合いか、そんな話聞いていないなぁ。アポが無い者はテレビ番組の取材以外応じてはならぬとの契約なんでなぁ」
駄目だった。しかし契約だと? 今までの戦いとは若干違う、ビジネスのような香りがする。ってかテレビ番組なら応じるんだ。アポなし旅を想定でもしているのだろうか。大抵グルメ番組だから、料理のお店とかじゃないと来ないと思うのだが。
「というわけだ。私も暴力は好ましくないのでなぁ、アポがないならおかえり願おう」
「いや、是が非でも通してもらうぜ」
こんな変哲もないところに魔王軍の四天王のキャリアを持つリソースを割いているのだ、まるで何かがあると言っているようなものじゃないか。
「いや、無理じゃよ。こやつが本気で守っていたら蟻一匹通れまい」
「そんな強いの? 勇者でも倒せたんなら平気……」
いや、ならここで五体満足にいる方がおかしいよな?
「フフフフフ、フハハハハハハ!」
笑う。笑う。笑う。笑う。スポットライトによって照らされた男の顔はいびつな影を作っていた。そしてムキムキっとポージングして、いや準備運動をして俺を見据える。
「ならば!」
ダブルバイセップス。
「ここを!」
ラットスプレッド。
「通りたければ!」
サイドチェスト。
「私を倒して!」
サイドトライセップス。
「通るがいい!」
モストマスキュラー。それを決めた瞬間だった。
「何あんたらじっと見てんのよ!」
神官の女子が杖の先端部分をその腹にぶっ刺した。腐っても魔王城にまで辿り着いた勇者パーティーの一人だ。ある程度の戦闘はできると思っていたが、追いつけないほどではないが、見る限り常人よりも早い動きなのは間違いなかった。
「あんたは最初の四天王! 四天王の中でも最弱って他の四天王も言ってたんだから! 強がってんじゃないわよ!」
「はっはっは! 純粋な女子だなぁ! そんな台本を信じるとは!」
しかし鋼のような腹筋には一ミリも突き刺さることなく、むしろその杖の先端が折れる。いや本当におっしゃる通り、そんな言葉台本でなければ言わないだろうよ。
「私の杖がぁぁぁ!!?」
「ここを通ろうとしなければ危害は加えんよ、しかし」
ぽきっと杖と共に心も折れた神官の女子を余所に、アブさんは俺に指をさす。
「しかしそこの男。貴様は我が管轄に足を踏み入れた。よって、この株式会社アブソリュートセキュリティ代表取締役、アブソリュートガードナー。雇用契約に基づき――」
戦いに燃える戦士の目をランランと輝かせて。
いざ尋常に、セキュア!
ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ
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『侵入者確認、魔の者の侵入者を感知しました。速やかに殲滅してください。』
闇夜の中、夜にそぐわない爆音が俺達を襲う。両手で耳を抑えていると、どこからともなく真っ赤なスポットライトが、作者の家(仮)の玄関前に照らされる。眩しすぎて、両手をもうワンセットほしいところだった。
眩しいながらも薄目でスポットライトを見ていると、地面が自動ドアのように左右に開く。すると、その穴の下からゆっくりと人が現れた。頭頂部から顔、肩、胸と姿が見えていく。腕を組み仁王立ちするその姿は、プロレスのマスクを着けてタンクトップを身に着けている。ぱっつんぱっつんだった。
真っ赤な光を一心に受けて、固く組んだ腕を解き高らかに叫ぶ。
「ハァァァァァァッハッハッハッハ! よもやこの警報に応じる時が来ようとはなぁ!」
そう言って、切れのあるポージングを決めるマスクドプロレスラー。俺達の姿を見ると、ムムム!? っと俺の足下を見た。そこには魔王がチョコンと佇んでいる。が、その顔は難しい顔をしていた。
「これはこれは! マオちゃんではないか! こんな人間の住処に来るとは珍しい」
「久しいな、アブさん」
「アブさん!?」
アブさんという親しみやすいネーミングはともかく、このちっこい魔王を見て「マオ」と呼んだことに違和感を覚えた。その名前は魔王城からトースターに行くまでに名付けた仮の名前だったからだ。魔王が自分で「魔王だからマオでいいじゃろ」と適当につけたのだが。
「お前何者だ?」
「こいつはアブソリュートガードナーよ、でも勇者が倒したはずでしょ? 私物陰で見てたもん!」
と神官の女子が額に汗をかいて言う。見てただけなのかよ、戦えよお前も。
「小娘、まさか勇者一行の一味か? そうかそうか、その際は世話になったなぁ。しかしあれは四天王としての役目を果たしたまで。今の私はそれで言うと『オフ』だ!」
そういえばクスノも副業で水ソムリエとかしていたし、驚いているこいつもこいつでプリーストッカーっていうストリーマーの副業(本人曰く勇者パーティーが副業らしいのだが)を生業にしていた。こいつもその類だということなのか。なら、どんな副業なんだ?
「あ、あの、勇者とかアブさんとか、何なんですか? 皆の知り合いですか?」
キョロキョロと、一人カナタが狼狽を通り越してきょとんとしている。こいつは部外者も部外者だ、穏便にことを済ませられないだろうか。
「なぁ、俺らそこの家の人の知り合いなんだ。そこを通しちゃくれないか?」
ダメ元で聞いてみた。アブさんは顎に手を当てて考える。
「知り合いか、そんな話聞いていないなぁ。アポが無い者はテレビ番組の取材以外応じてはならぬとの契約なんでなぁ」
駄目だった。しかし契約だと? 今までの戦いとは若干違う、ビジネスのような香りがする。ってかテレビ番組なら応じるんだ。アポなし旅を想定でもしているのだろうか。大抵グルメ番組だから、料理のお店とかじゃないと来ないと思うのだが。
「というわけだ。私も暴力は好ましくないのでなぁ、アポがないならおかえり願おう」
「いや、是が非でも通してもらうぜ」
こんな変哲もないところに魔王軍の四天王のキャリアを持つリソースを割いているのだ、まるで何かがあると言っているようなものじゃないか。
「いや、無理じゃよ。こやつが本気で守っていたら蟻一匹通れまい」
「そんな強いの? 勇者でも倒せたんなら平気……」
いや、ならここで五体満足にいる方がおかしいよな?
「フフフフフ、フハハハハハハ!」
笑う。笑う。笑う。笑う。スポットライトによって照らされた男の顔はいびつな影を作っていた。そしてムキムキっとポージングして、いや準備運動をして俺を見据える。
「ならば!」
ダブルバイセップス。
「ここを!」
ラットスプレッド。
「通りたければ!」
サイドチェスト。
「私を倒して!」
サイドトライセップス。
「通るがいい!」
モストマスキュラー。それを決めた瞬間だった。
「何あんたらじっと見てんのよ!」
神官の女子が杖の先端部分をその腹にぶっ刺した。腐っても魔王城にまで辿り着いた勇者パーティーの一人だ。ある程度の戦闘はできると思っていたが、追いつけないほどではないが、見る限り常人よりも早い動きなのは間違いなかった。
「あんたは最初の四天王! 四天王の中でも最弱って他の四天王も言ってたんだから! 強がってんじゃないわよ!」
「はっはっは! 純粋な女子だなぁ! そんな台本を信じるとは!」
しかし鋼のような腹筋には一ミリも突き刺さることなく、むしろその杖の先端が折れる。いや本当におっしゃる通り、そんな言葉台本でなければ言わないだろうよ。
「私の杖がぁぁぁ!!?」
「ここを通ろうとしなければ危害は加えんよ、しかし」
ぽきっと杖と共に心も折れた神官の女子を余所に、アブさんは俺に指をさす。
「しかしそこの男。貴様は我が管轄に足を踏み入れた。よって、この株式会社アブソリュートセキュリティ代表取締役、アブソリュートガードナー。雇用契約に基づき――」
戦いに燃える戦士の目をランランと輝かせて。
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