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<四章:人間の国を調査せよ>
戦いを欲していたのだ。
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アブソリュートセキュリティとは、数年前に立ち上がったセキュリティ会社だった。最初は輸送の警護や富裕層の移動時のSP等を個人で行っていたものの、これをもっとシステマティックに拡大し、より多くの人が暴力の脅威にさらされないようにできないか。そういう考えから作られたのが、この会社である。
キャッチフレーズは「あなたのくらしは絶対守ります。豊かな未来を守るアブソリュートセキュリティ」
創設を決めたのは、先代勇者との闘いに感じた不足感からだった。
魔王軍四天王として確かに勇者と戦う命を担ってはいるものの、ある一定のダメージを受けた場合は倒される。それが四天王としての役目の限界だった。まだやれると分かっていても倒されるべき。そういう役目だったのだ。
それに不足感を抱いていた。まるで勇者に忖度しているようで、不満が積もるばかり。
本気で戦えない。魔王軍としての役目の下でしか戦えない。
だから創設した。自分の力を本気で振るえるステージを。それがアブソリュートセキュリティ。
「ハーッハッハッハ!」
殴る。殴る。殴る。俺の二倍、つまり4メートル足らずの巨大な高さから振り下ろされる、土管のような腕が左右からドンドコドンドコと落とされる。俺はそれを正面から受け止める。彼のさっきの独白を聞きながら、自分語りを聞きながら踏ん張る。楽しそうにアブさんは叫んだ。
「どうした! さっきから攻撃せずにじっとしているだけか? そのままでは殴り潰してしまうぞ!」
「うっせぇな、こっちも色々考えてるんだよ!」
会社ね、魔王軍四天王では全力が出せなかったわけだ。だから会社と言う形で、セキュリティという形で戦闘を望んでいた。全力を出せる相手を渇望していたというのか。それにこの警報に応じるのが久しぶりだとも言っていたな、長らく本気を出せずにいたんだろう。さっきの数発の拳を受けただけでもそれは何となくわかる。タガが外れた人間の力のような気がした。
「考える!? なるほど、私の力はまだまだ貴様が考える余裕を持てるほどでしかないということか」
アブさんはそういうと一度腕を引く。そして腹が爆発するんじゃないかというくらい腹式で息を吸い込んで、大きな力と共に吐き出す。ご近所迷惑なんて気にしないほどの大声を張り上げる。
「ううぉぉーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
声の震えだけではない、この全身がピりつくような振動、チクチクするような感じ、奴の魔力か? 全身からあふれ出る魔力が肌を刺しこっちにまで伝わっているんだ。なんという魔力だろうか。よくもまぁ勇者は、手加減していたとはいえこいつに勝てたものだ。
その圧力に押されて、背後にいた神官の女子が逆でんぐり返りする。その悲鳴がかき消されるくらいの声が止むと。
「おいおい、なんだそれ?」
目の前の巨大だった男は、更に巨大になっていた。タンクトップがはちきれないのが不思議なくらい全身の筋肉が膨張し、腕は土管なんてもんじゃない、樹齢数百年の木を丸太にしたような、それほどの太さだった。
その腕先の指がピンとこちらを指す。アブさんの表情はニヤっと笑った。
「身体強化魔法だ。まともな戦いができなかったのでな、経営の合間に学んでおいたのだよ。そしてそれを利用し、私は今から全力の50パーセントを出そうと思う。貴様はそれを浴びせるにふさわしいと判断した。さぁ、潰れてくれるなよ?」
身体強化。それを聞いて眉根を寄せていると、巨大であるにも関わらず全然鈍重に思えないような速度で、拳が殴られる。
殴る?
否! そんなちゃちなものではない、あれはもう人間が繰り出す力ではない。隕石だ。隕石が空から落ちてくる力が、斜め下くらいの角度で繰り出されてきているのだ。流石に踏ん張る足の力を強める。
触れた瞬間、拳が熱かった。
「――――っく!」
足が深くめり込む。庭を囲う柵が傾き、さっきまでの牧歌的風景には相応しくない円形の地割れが広がった。腕には拳に込められた熱がじんじんと伝わり、熱された鉄板を擦り付けられているようだった。
それが、一発、また一発と、増えていく。
「オラ! オラオラオラオラオラ!」
メリメリ。メリメリ。全身に恐ろしい荷重が襲う。流石に攻撃を仕掛けないとまずいか? いや、ダメだ。
こいつは魔王軍四天王、つまり味方なのだ。確かに今は敵対しているかもしれないが、危害を加えるわけにはいかない。いつかのクスノのように、一歩誤れば殺してしまいかねない。
「貴様! 何故攻撃してこない! 私の攻撃が反撃するに値しないというのか! 戦え! 戦うのだ!」
不満が募るアブさん。当然だ、戦いが好きなようだが、その好きなことを有意義に活用するために警備会社を設立していたのだから。そしてこの家を警備するように任されていた。そういう雇用契約だと。
…………ん?
雇用契約ってことは、誰かが雇っている? こんな辺鄙なところにある家を守る? 何のために?
奴の拳を今度は避ける。一歩引いて、巨大な男を見据えた。スポットライトは、男の浮き出る血管の影を作り出し、不気味さを漂わせていた。
「ああ戦ってやる、だが、俺が勝ったらお前の雇用主、吐いてもらうぜ」
キャッチフレーズは「あなたのくらしは絶対守ります。豊かな未来を守るアブソリュートセキュリティ」
創設を決めたのは、先代勇者との闘いに感じた不足感からだった。
魔王軍四天王として確かに勇者と戦う命を担ってはいるものの、ある一定のダメージを受けた場合は倒される。それが四天王としての役目の限界だった。まだやれると分かっていても倒されるべき。そういう役目だったのだ。
それに不足感を抱いていた。まるで勇者に忖度しているようで、不満が積もるばかり。
本気で戦えない。魔王軍としての役目の下でしか戦えない。
だから創設した。自分の力を本気で振るえるステージを。それがアブソリュートセキュリティ。
「ハーッハッハッハ!」
殴る。殴る。殴る。俺の二倍、つまり4メートル足らずの巨大な高さから振り下ろされる、土管のような腕が左右からドンドコドンドコと落とされる。俺はそれを正面から受け止める。彼のさっきの独白を聞きながら、自分語りを聞きながら踏ん張る。楽しそうにアブさんは叫んだ。
「どうした! さっきから攻撃せずにじっとしているだけか? そのままでは殴り潰してしまうぞ!」
「うっせぇな、こっちも色々考えてるんだよ!」
会社ね、魔王軍四天王では全力が出せなかったわけだ。だから会社と言う形で、セキュリティという形で戦闘を望んでいた。全力を出せる相手を渇望していたというのか。それにこの警報に応じるのが久しぶりだとも言っていたな、長らく本気を出せずにいたんだろう。さっきの数発の拳を受けただけでもそれは何となくわかる。タガが外れた人間の力のような気がした。
「考える!? なるほど、私の力はまだまだ貴様が考える余裕を持てるほどでしかないということか」
アブさんはそういうと一度腕を引く。そして腹が爆発するんじゃないかというくらい腹式で息を吸い込んで、大きな力と共に吐き出す。ご近所迷惑なんて気にしないほどの大声を張り上げる。
「ううぉぉーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
声の震えだけではない、この全身がピりつくような振動、チクチクするような感じ、奴の魔力か? 全身からあふれ出る魔力が肌を刺しこっちにまで伝わっているんだ。なんという魔力だろうか。よくもまぁ勇者は、手加減していたとはいえこいつに勝てたものだ。
その圧力に押されて、背後にいた神官の女子が逆でんぐり返りする。その悲鳴がかき消されるくらいの声が止むと。
「おいおい、なんだそれ?」
目の前の巨大だった男は、更に巨大になっていた。タンクトップがはちきれないのが不思議なくらい全身の筋肉が膨張し、腕は土管なんてもんじゃない、樹齢数百年の木を丸太にしたような、それほどの太さだった。
その腕先の指がピンとこちらを指す。アブさんの表情はニヤっと笑った。
「身体強化魔法だ。まともな戦いができなかったのでな、経営の合間に学んでおいたのだよ。そしてそれを利用し、私は今から全力の50パーセントを出そうと思う。貴様はそれを浴びせるにふさわしいと判断した。さぁ、潰れてくれるなよ?」
身体強化。それを聞いて眉根を寄せていると、巨大であるにも関わらず全然鈍重に思えないような速度で、拳が殴られる。
殴る?
否! そんなちゃちなものではない、あれはもう人間が繰り出す力ではない。隕石だ。隕石が空から落ちてくる力が、斜め下くらいの角度で繰り出されてきているのだ。流石に踏ん張る足の力を強める。
触れた瞬間、拳が熱かった。
「――――っく!」
足が深くめり込む。庭を囲う柵が傾き、さっきまでの牧歌的風景には相応しくない円形の地割れが広がった。腕には拳に込められた熱がじんじんと伝わり、熱された鉄板を擦り付けられているようだった。
それが、一発、また一発と、増えていく。
「オラ! オラオラオラオラオラ!」
メリメリ。メリメリ。全身に恐ろしい荷重が襲う。流石に攻撃を仕掛けないとまずいか? いや、ダメだ。
こいつは魔王軍四天王、つまり味方なのだ。確かに今は敵対しているかもしれないが、危害を加えるわけにはいかない。いつかのクスノのように、一歩誤れば殺してしまいかねない。
「貴様! 何故攻撃してこない! 私の攻撃が反撃するに値しないというのか! 戦え! 戦うのだ!」
不満が募るアブさん。当然だ、戦いが好きなようだが、その好きなことを有意義に活用するために警備会社を設立していたのだから。そしてこの家を警備するように任されていた。そういう雇用契約だと。
…………ん?
雇用契約ってことは、誰かが雇っている? こんな辺鄙なところにある家を守る? 何のために?
奴の拳を今度は避ける。一歩引いて、巨大な男を見据えた。スポットライトは、男の浮き出る血管の影を作り出し、不気味さを漂わせていた。
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