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<四章:人間の国を調査せよ>
真夜中に集まりし凸凹達
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初めて聞いた固有名詞。ミナ様。
そいつが倒すべき相手。
敵。
俺の中でふつふつと沸き立つ。これは怒りか? はたまた嬉しさか。倒すべき相手がいることの安心感なのか。黒幕がいること、陰謀があること。それそのものは、正直半信半疑だったことは否めない。それを確かめるための人間の国への調査だったのだが。期待通りに出てしまうと拍子抜けというか。
それにまだこの世界に詳しくないので、この世界に詳しそうなやつに聞いてみた。
「なぁ、ミナ様って、聞いたことある?」
「ミナ様? ……あぁ、え、何か聞いたことある気がするんだけどなぁ、誰だったかなぁ……」
ウームウームと首を左右に揺らしている神官の女子。まぁ二文字の名前なんていくらでも組み合わせがあるんだから聞いたことがあっても不思議じゃないか。だがそれだと探しづらいな。
キーワードとは、独特であればあるほど検索しやすい。有名な検索エンジンは大抵部分一致検索なので一部が引っかかっていれば検索することができる。この世界は勿論検索エンジンなんて便利なものはないけれど、だとしても長い名前があったならばそれだけで記憶に残るのだから、聞き及ぶ人が多くてもいいだろう。
しかし、そのキーワードが短いときたもんだ。こりゃ苦労しそうだぜ。
「OKプープル、ミナ様って知ってる?」
『はい、知っています』
「知ってんの!?」
バリっ張りに音声検索していた。鍵開けに渡したマイクロ杖は、検索内容を続けて述べる。
『ミナ様とは、ペタブヨウ社の社長です。ペタブヨウの今年の株価は……』
どっかの社長だった。なんだよペタブヨウって。しかも株価を言われたとしても知らない単位だったからそれが高いのかどうなのか分からないし。
「あー! そうだったそうだった! ペタブヨウの人だわ!」
天を仰いで一人だけはめっちゃ盛り上がっていた。思い出せそうで思い出せない記憶が呼び覚まされた時ってそういう感じになるよね。わかるわかる。
しかし、毒気が抜かれたことで冷静さを取り戻すことができたのは行幸だった。まずはあいつの治療からか、先ほどの烏合の執行人にボロボロにやられてしまったからな。踵を返してアブさんの側に行こうとすると、カナタが近づいてきていた。
「騒がせたな、だが大丈夫、さっきの奴はもういない」
「ええと、さっきのって……」
モジモジシドロモドロと、何かを言いたげにしつつ喉につっかえているようだった。
「さっきのか、俺にもよくわからないんだよ」
「さっきの人って、ほくろ、ありませんでした?」
ん? ほくろ?
「ほくろ? あったようななかったような。つっても暗かったからなんとも」
「ここら辺に着いてなかったですか!?」
今まで見たことのない剣幕で詰め寄ってくる。カナタは顔の鼻の右下辺りに指を当てていた。鼻くそみたいな場所だったが。
「んー、あった、かな? ちょっと覚えてないんだが」
「妹なんです!」
「え?」
「多分あれ、私の探してた妹なんです! 声が似てました!」
戦慄。というか寒気。思わず顔を背ける。
やっべぇ、めっちゃ殴っちゃったよ。ぼっこぼこにしちゃったのに、妹? うっわぁ。
「私が『勇者の超冒険』を志したのが、妹を探すためだったんです。確かに物語が面白かったからと言うのもありましたが、面白いからこそ、世の中に浸透しやすいなって気づいて。だからこの影響力を私も身に着けることができたら、生き別れの妹に認知してもらって、いつか会えるんじゃないかって」
というと、カナタは俯いた。俺はもっと顔を逸らす。
っべぇ、どうしよう、黒い煙になって消えちったんだけど。どうしよう、言っていいのかなこれ、言ったら絶対ショックしちゃうよな。生き別れの妹って。しかも結構力注いで探してる系だしよ。流石に茶化すには不謹慎過ぎた。話を頑張って逸らさなければ。
「だ、だから毒盛ったりしてネタを流していたわけだ、あれだよな、臨場感を出すためにはリアルに体験するほうが一番だもんなぁ」
「でも、流石に悪いとは思いました。反省しています。あの、それでどうでした? ほくろ――――」
「よし分かった! お兄さんが全力で君の妹さんを探してあげるからね! 大丈夫絶対生きてるさ、うんうん、人間顔をボコボコにしたくらいで死んだりしないさ、煙のように死んだりは!」
必死だった。汗水たらして俺は何を言っているんだろう。でも確かに元凶の手がかりだとはいえ、即断即決でボコボコにしたのは軽率だったかなぁ。
「本当ですか!? 何とお礼を言っていいか……」
ヒックヒックと涙を流すカナタ。厄介ごとを増やしてしまった。その揺れる肩にポンポンと手を置いてから、改めてアブさんの方に向かった。
両腕の傷は更に痛めつけられ、神経がむき出しになっているようにも見える。風が吹けばそれだけで激痛が襲ってもおかしくないのに、アブさんは動かなかった。
なので。
「ちょん」
「っだぁぁぁ!!」
起きた。流石に触れれば風なんて比でもない刺激が走る。アブさんはこちらを睨みつけた。
「マジか! お前マジか! 怪我人に何をしてるんだ!」
「起きてもらわにゃ聞きたいことも聞けねぇからよ、それと腕については大丈夫だ」
俺はそう言って、アイテムボックスから花火を取り出す。昔魔王城で遊んでいた時の残りらしい。打ち上げ式。それを空高く放つと、小さな花火が暗闇に咲き誇った。
そしてしばらく経過。「何がしたいんだ?」と聞かれるも「まぁ待ってろよ」とだけ言っておく。
すると。二人のたったかたったかとした足音が聞こえてきた。
「お前か! 私の医療道具を勝手に盗んだのは!」
呼ばれて飛び出て、BJとキノコだった。
そいつが倒すべき相手。
敵。
俺の中でふつふつと沸き立つ。これは怒りか? はたまた嬉しさか。倒すべき相手がいることの安心感なのか。黒幕がいること、陰謀があること。それそのものは、正直半信半疑だったことは否めない。それを確かめるための人間の国への調査だったのだが。期待通りに出てしまうと拍子抜けというか。
それにまだこの世界に詳しくないので、この世界に詳しそうなやつに聞いてみた。
「なぁ、ミナ様って、聞いたことある?」
「ミナ様? ……あぁ、え、何か聞いたことある気がするんだけどなぁ、誰だったかなぁ……」
ウームウームと首を左右に揺らしている神官の女子。まぁ二文字の名前なんていくらでも組み合わせがあるんだから聞いたことがあっても不思議じゃないか。だがそれだと探しづらいな。
キーワードとは、独特であればあるほど検索しやすい。有名な検索エンジンは大抵部分一致検索なので一部が引っかかっていれば検索することができる。この世界は勿論検索エンジンなんて便利なものはないけれど、だとしても長い名前があったならばそれだけで記憶に残るのだから、聞き及ぶ人が多くてもいいだろう。
しかし、そのキーワードが短いときたもんだ。こりゃ苦労しそうだぜ。
「OKプープル、ミナ様って知ってる?」
『はい、知っています』
「知ってんの!?」
バリっ張りに音声検索していた。鍵開けに渡したマイクロ杖は、検索内容を続けて述べる。
『ミナ様とは、ペタブヨウ社の社長です。ペタブヨウの今年の株価は……』
どっかの社長だった。なんだよペタブヨウって。しかも株価を言われたとしても知らない単位だったからそれが高いのかどうなのか分からないし。
「あー! そうだったそうだった! ペタブヨウの人だわ!」
天を仰いで一人だけはめっちゃ盛り上がっていた。思い出せそうで思い出せない記憶が呼び覚まされた時ってそういう感じになるよね。わかるわかる。
しかし、毒気が抜かれたことで冷静さを取り戻すことができたのは行幸だった。まずはあいつの治療からか、先ほどの烏合の執行人にボロボロにやられてしまったからな。踵を返してアブさんの側に行こうとすると、カナタが近づいてきていた。
「騒がせたな、だが大丈夫、さっきの奴はもういない」
「ええと、さっきのって……」
モジモジシドロモドロと、何かを言いたげにしつつ喉につっかえているようだった。
「さっきのか、俺にもよくわからないんだよ」
「さっきの人って、ほくろ、ありませんでした?」
ん? ほくろ?
「ほくろ? あったようななかったような。つっても暗かったからなんとも」
「ここら辺に着いてなかったですか!?」
今まで見たことのない剣幕で詰め寄ってくる。カナタは顔の鼻の右下辺りに指を当てていた。鼻くそみたいな場所だったが。
「んー、あった、かな? ちょっと覚えてないんだが」
「妹なんです!」
「え?」
「多分あれ、私の探してた妹なんです! 声が似てました!」
戦慄。というか寒気。思わず顔を背ける。
やっべぇ、めっちゃ殴っちゃったよ。ぼっこぼこにしちゃったのに、妹? うっわぁ。
「私が『勇者の超冒険』を志したのが、妹を探すためだったんです。確かに物語が面白かったからと言うのもありましたが、面白いからこそ、世の中に浸透しやすいなって気づいて。だからこの影響力を私も身に着けることができたら、生き別れの妹に認知してもらって、いつか会えるんじゃないかって」
というと、カナタは俯いた。俺はもっと顔を逸らす。
っべぇ、どうしよう、黒い煙になって消えちったんだけど。どうしよう、言っていいのかなこれ、言ったら絶対ショックしちゃうよな。生き別れの妹って。しかも結構力注いで探してる系だしよ。流石に茶化すには不謹慎過ぎた。話を頑張って逸らさなければ。
「だ、だから毒盛ったりしてネタを流していたわけだ、あれだよな、臨場感を出すためにはリアルに体験するほうが一番だもんなぁ」
「でも、流石に悪いとは思いました。反省しています。あの、それでどうでした? ほくろ――――」
「よし分かった! お兄さんが全力で君の妹さんを探してあげるからね! 大丈夫絶対生きてるさ、うんうん、人間顔をボコボコにしたくらいで死んだりしないさ、煙のように死んだりは!」
必死だった。汗水たらして俺は何を言っているんだろう。でも確かに元凶の手がかりだとはいえ、即断即決でボコボコにしたのは軽率だったかなぁ。
「本当ですか!? 何とお礼を言っていいか……」
ヒックヒックと涙を流すカナタ。厄介ごとを増やしてしまった。その揺れる肩にポンポンと手を置いてから、改めてアブさんの方に向かった。
両腕の傷は更に痛めつけられ、神経がむき出しになっているようにも見える。風が吹けばそれだけで激痛が襲ってもおかしくないのに、アブさんは動かなかった。
なので。
「ちょん」
「っだぁぁぁ!!」
起きた。流石に触れれば風なんて比でもない刺激が走る。アブさんはこちらを睨みつけた。
「マジか! お前マジか! 怪我人に何をしてるんだ!」
「起きてもらわにゃ聞きたいことも聞けねぇからよ、それと腕については大丈夫だ」
俺はそう言って、アイテムボックスから花火を取り出す。昔魔王城で遊んでいた時の残りらしい。打ち上げ式。それを空高く放つと、小さな花火が暗闇に咲き誇った。
そしてしばらく経過。「何がしたいんだ?」と聞かれるも「まぁ待ってろよ」とだけ言っておく。
すると。二人のたったかたったかとした足音が聞こえてきた。
「お前か! 私の医療道具を勝手に盗んだのは!」
呼ばれて飛び出て、BJとキノコだった。
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