召喚されたのは、最強の俺でした。~魔王の代理となって世界を支配します~

こへへい

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<五章:信じよ>

魔力と心

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 無事寝台列車に乗ることができ、予約していた一室に入る。
 ぱっと見、シックな印象のある情景だった。全体的に漆が塗られた木の壁で覆われており、ただの壁には、その空白を埋めるためだけにあるような絵画が引っかけられている。ベッドは部屋の隅に寄せられ、二人分の枕があった。その近くにはふかふかの大きいソファ。

 さて、ここで決めるべきは一つだろう。

「お前ら、じゃんけんって知ってるか?」

「んあ? じゃんけんとな?」

 アホ面な魔王だったので、俺は右手の形を順番に変えて説明する。

「ああ、石のグー、ハサミのチョキ、紙のパー。それらを出す。そして俺が窓際のベッドで寝るというゲームなんだが」

「いやじゃんけんくらい知ってるわよ。そしてさらっと窓際取ろうとしないで」

 ダメか。ガッツリ知ってたようだ。つーかじゃんけん知っても知らなくても、皆が窓際ベッドを欲しがるとするならばこの作戦が成り立たないことに気づく。

「まぁご飯食べましょ、まだ温かいから美味しいわよ」

 袋から取り出された弁当。ふわっと牛魔肉の焼けた香りが部屋中に充満していく。とりあえず窓際のベッドに腰かけてその弁当を受け取った。

「おおお、まだまだ熱々じゃんか! すげぇな」

「このお弁当箱にはそういう魔法がかかってんのよ。保温魔法ね」

 便利だな魔法。現実では弁当箱に生石灰と水の入った袋を入れておき、ついてある紐を引くことで生石灰と水が混ざらせ、化学反応で発生する熱で温まることができると聞いたことがあるが、やっぱりどこでも弁当は熱々で食べたいということなのか。

 箸で肉をつまみ(よく箸の文化浸透したな)、口に運ぶ。柔らかで噛むたびにじゅわっと肉から旨味があふれ出る。
 が。

「もぐもぐ。まぁ、旨いっちゃ旨いんだが」

「じゃがなーんか物足りないのぉ」

 俺と魔王が首を傾げる。何が足りないのかと考えていると、神官の女子が閃いたように言った。

「あ、あれじゃない? 肉の焼き加減とか! モモが作ってくれたステーキは表面が香ばしいのに中は赤くてレアだったじゃない。でもこれはお弁当だからしっかり火を通しているのかも!」

「ふむ、流石は王様になんどもお呼ばれされただけはあるな、舌が肥えてる」

「お呼ばれって言い方に悪意があるわね、だから私だけじゃなくて勇者パーティ―全員呼ばれてたのよ!」

「じゃが、モモの料理を食べてしまったせいというのはその通りかもしれんの。あれほど旨いもんを食ったならそれ以上のモンは無味も同然じゃ」

 流石はモモだぜ。
 だが、本当にそれだけなのだろうか? 何か違う気がする。

「多分、ソースも弱いな。ソースが美味しくないからじゃないのか? 肉の焼き加減に関してはそこまで変わらない気がするが」

「んー、そう言われるとそうだって気もするのよねぇ。まぁどっちでもいいでしょ」ともぐもぐ食べ進める神官の女子。食い意地が凄い。

 魔王はとういうと、食べつつも隣の恍惚な顔とは違い浮かない表情だった。

「どうした? 乗り物酔いか?」

「いやそうじゃないんじゃが、さっきの町に来てからというものの、どうにも変な気持ち悪さがあっての」

「変な気持ち悪さ?」

「ああ、なんじゃろうの、周囲の魔力がどうにも気持ち悪いんじゃ。ここの乗客もそんな感じでの」

 魔力が気持ち悪い。そう言われて気づく、というか思い出す。そういえば俺が作者の家に足を踏み入れた時に、アブさんが現れる前に魔王は俺を呼び止めた。もしかしてあれは、魔王には魔力を感知する力があったから気づけたのではなかろうか。まぁそもそも魔力って何だって話だが。

「魔王って魔力が感じられるのか? っつーか魔力って結局何なんだ?」

 と、本来魔法をはじめに見てから聞くべき根源的なことを聞いてみる。お弁当を温めたりくらい暗い空間に明かりを灯したり、そういう何でもありなのが魔法だとざっくり考えていたのだが。
 魔王が箸を止めて話してくれた。

「一応わし魔の王じゃからの、魔の感知くらいはできる。
 魔力は心がある者全てに宿る力での、それがあれば色々便利なもんなんじゃ。じゃが心が乱れていれば魔力も乱れるし、逆もまたしかり」

「なるほど、心と魔力、ね。ならば魔力を利用すれば心を操るんじゃないのか?」

 と、無意識を操る何者かの影に思いを馳せてそう聞いてみた。

「じゃろうな、っていうか、マサトの奴がやってたじゃろ。あーいうのならできよう」

 そうだった。まぁあれは既存の感情を煽るという感じに近かったような気がする。それ以上にコントロールできるかどうかを今そのマサトに調べてもらっているわけなのだが、連絡が待たれるな。

「んで、その魔力が気持ち悪いってことだったな。どう気持ち悪いかって分かるか?」

 陰鬱な表情を僅かに作り、魔王が呟く。

「ああ、魔力というのは色々あるんじゃよ。いっぱい種類があって、色とりどり。そのお陰で魔力は様々な利用用途が開発されていった。この寝台列車もその1つじゃし、この弁当の保温もな。じゃが、ここら辺の魔力は何か違うんじゃ」
 
 全て、一色。

「何かに均されたような、心が慣らされたような。そういう魔力しか感じんのじゃ。分かるか? すべての行き交う人々が、
 同じ性別で同じ背丈で同じ顔で同じ体系で同じ服装で同じ歩幅で同じ肺活量で同じ運動量で同じ血液型で同じ性格で、同じ。そんな感じを」

 そりゃ確かに、気持ち悪い。見た目には表れていないが、魔王が見る魔力はそう感じられているということか。

「そしてその濃度が、列車が進むごとに濃くなっていくんじゃ。気を付けろ、というか、引き返すなら今じゃ」

 恐ろしく険しい表情。子供がするそれではない、さっきまでのテンションは、一応周りの目があるから子供の振りをしていただけで、相当無理をしていたということになる。

「お前が本当のマジでヤバイって思ったら引き返そう。退き際も弁えないといけないしな。だがそれほど元凶に近づいているってことなんだ。情報はできるだけ貰ってから退かないとな」

「まっかせなさいな! なんなら私が正体現わして皆を跪かせてやるわよ!」

「お前は黄門様かよ。ま、今回ばかりはそれが結構頼りになりそうだな」

 寝台列車は敷かれたレールを迷いなく乗り、順調に俺達を目的地へと運んでいくのだった。
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