召喚されたのは、最強の俺でした。~魔王の代理となって世界を支配します~

こへへい

文字の大きさ
57 / 87
<第五.五章:生きて下山せよ>

デスカルゴの生体

しおりを挟む
 かまくらの中はとても暖かく、まるでお母さんのお腹の中のようだった。俺とナイツは半裸なので余計にそう感じる。そんな狭い空間で、サナがすすり泣く。

「ううう、酷いよ。私達ここで死ぬんだわ」

 そんなサナに、ナイツは仮初の希望のようなことを言う。

「大丈夫だよ、きっと助けは来てくれる。王宮でデスカルゴを食べたことがあっただろう? ということは、少なからず狩りに来る人がここに来ているってことだ。ならば辛抱強く待てば、いつか狩人が見つけてくれるさ」

「確かに! ナイツ賢い!」

 サナはぱぁーっと明るい笑顔を取り戻す。言い得て妙な意見だった。しかしデスカルゴは地上では超高級食材なため希少、つまり狩りに来る頻度もそこまで多くないと考えていいだろう。ともすれば「それまでの辛抱」が、どれまでの辛抱なのかが未知数な以上、ここでじっとしているのは低い希望に思えた。

「その狩人が、チョッタカ山にピンポイントでここに来てくれるとは思えない、しかし仮に来る以上、最低限の道くらいは整備しているはずだ。俺が探しに行くから、それまでお前らはここで体力を温存しておいてくれ」

「勇者……」

「ううう、ありがとう」

 二人が感極まって目に涙を浮かべている。友達のためならば俺はこんな寒空でも半裸で飛び込んでやるぜ。という空元気で魂をバイブレーションしながら(そうしないと出入口からの風が寒くて死にそうなので)かまくらの出入口を潜ろうとした時。そのかまくらに入ろうとする影があった。しかしそれは狩人ではなく。

「お、お前!」

 ピンク色の木の小人、モモだった。デスカルゴを調達しに行ってたものの、しかしその手には何も持っておらず、湿った泥が両手にくっついている。だがデスカルゴの殻一つ持っていなかった。
 モモは頭を下げる。

「申し訳ありません、お客様に料理で幸せになっていただくことこそが私の存在意義であるのにも関わらず、食料一つ調達することができないとは」

「いやいいよ、期待していないから。そんなことより俺達は今からここを出る。だからもう邪魔するな」

「いえ、それはおやめになった方がよろしいかと。チョッタカ山の寒さは半裸や軽装で下山できるほど甘くはありません」

「んだと? お前が連れてきておいて!」

 自分で山に連れてきておいて、下山するのが難しいから降りるなと言うのか。怒りで体が熱くなる。しかしモモは至って冷静に言った。

「左様、私が連れてきたからこそ、私には、料理を通じて貴方方を幸せにする義務がございます。そしてそれはお食事後の帰路もその範疇にと考えております」

 その眼差しには、確かな真剣さを孕んでいた。確固たる意志を。その目を見て、サナが思わず口を出した。

「じゃ、じゃあ早く帰してよ!」

「いえ、それは今のままでは叶いません。先ほども申しあげたとおり、このチョッタカ山は極寒の地でございます。その寒さを乗り越えて下山するためには、デスカルゴが必要不可欠なのでございます」

「デス、カルゴ?」

 話の脈絡なく急にデスカルゴが出てきて拍子抜けする。寒さを耐えるためにデスカルゴとは、どういうことだろうか?

「デスカルゴは確かにこの極寒の地に生息する生物でございますが、一体どのようにしてこの寒さを凌いでいると思いますか?」

 疑問に思っているところから、逆に疑問を投げかけられた。その問いにはナイツが答える。

「デスカルゴの殻は特殊な材質の殻で、鎧に耐久性と柔軟性を加えることができると言われているんだ。だからそれが寒さから身を守っているんじゃないのかな?」

 そうだったのか、よくそんなことを知っているな。とナイツを感心したものの、しかしモモは首を横に振った。

「よくご存じですね、確かにデスカルゴの殻に含まれるデスカルシウムという材質は、よく武具屋に重宝されていると言われています。しかしデスカルゴが寒さを乗り越えるために利用しているのは、その身に宿す寄生虫でございます」

「き、寄生虫!?」

 あんなに美味しい食べ物に実は寄生虫がいたのか? と、サナはぎょっとして体をきゅっと抱いた。モモは紳士に言葉を返す。

「ご安心ください、調理されているデスカルゴはしっかりと過熱してるものがほとんどなので、基本的には全ての寄生虫は死滅します。しかし生きているデスカルゴには数万の寄生虫をその身に宿し、共存しているのでございます」

「共存? 規制されているのにか?」

「はい。デスカルゴの体は実は体温をその身に留めやすい性質を持っており、体液は保温効果があると言われています。しかしそれだけではこの厳しいチョッタカ山の寒さを越えることができません。そこで重要になるのが、寄生虫から発せられるエネルギーです。デスカルゴの栄養素を吸収して生きながらえる寄生虫は、その栄養素を燃やすことで対外に熱を放出するのでございます」

「なるほど、その熱を保温効果のある体液が留めるから、デスカルゴも寄生虫も生息できるのか」

 ナイツは感心しつつまとめた。そう聞くと面白い雑学だ。だがその寄生虫を人間の体に宿すことで温かくするわけにはいかないのではないか? すかさずその疑問に、モモが答える。

「このデスカルゴに特殊な調理法を施すことで、その保温効果と発熱効果を一時的にその身に宿すことができるのでございます」

「そういうことか、すっげぇなそれは」

 と感嘆の声を漏らしたのだが、しかしモモは浮かない顔をしていた。

「ですが、そのデスカルゴが、この一帯から姿をけしているのです」

「えー!? それじゃあ帰れないよぉ!」

 とサナ。確かにそれもそうだが、その理由が気になる。狩人が滅多に来られないこんなチョッタカ山のデスカルゴが居なくなる理由とは一体何なのだ?

「そいつはデスカルゴを主食とし、このチョッタカ山の生態系の頂点に君臨する最強の生物」

 その名も、デビルベア。

 そいつを倒さなければ、私達はこの山で凍死することでしょう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

処理中です...