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<第五.五章:生きて下山せよ>
運命の分かれ道
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辿り着いたのは、そこそこスペースの広い穴倉だった。いや奥に道が結構長く続いているように見えるため、これは洞窟と言うべきか。薄暗くはあるものの、人間が立って歩くには十分なスペースとなっているため、てくてく歩いてモモが出したランプの光を頼りに進んでいた。
「本当にここなんだろうな?」
「はい、確かにここに入っていくデビルベアを目撃しました。それを証拠にこちらを見てください」
モモはランプを持つ手とは逆の手で足下を指す。するとそこには、拳より一回り程大きいサイズの紫色で渦巻状の殻がちらほらと落ちてある。言うまでもない、これはデスカルゴの殻だ。
「ちょっと見ていい?」と嬉々とした声でしゃがみこんだのは、ナイツだった。その殻を手に取り、指で丁寧に表面をさする。
「うん、やっぱりこの質感!」
サナは少し身じろぎして聞いてみる。
「ど、どうしたのよ?」
「デスカルゴの殻の成分は確かに鎧に柔軟性を加えることができる超希少な成分が含まれているんだけど、それだけじゃないんだ。デスカルゴを食べる時って必ず殻ごと加熱するだろう? その時に殻の性質が少し変化して、表面がツルツルになってしまうんだ。しかし加熱前の殻はザラザラしていて、剣を磨ぐ時にはとてもいい素材になるらしくって。今触ってみたら超きめ細かなザラザラなんだぁ! しかも山なりに巻かれている殻はその一巻き一巻きが頂点に達するほどザラザラ具合が細かくなっていって、いちいち研磨剤を変えて磨ぐ必要がないらしいんだけどマジだったんだ!」
好きなことを語らせると、人は聞き手の反応を忘れて早口になると言うけれど、今のナイツはその典型だった。喋り終わっても「うっひょー!」とばかりに落ちている殻を色々と拾い集め、じっくりと見分していた。
「急ぐぞナイツ、命あっての砥石だろうが」
「う、ならこれだけでも」
苦しそうに一つだけ、中でもとりわけ大きい殻を拾って、先を急ぐ。
と言っても、歩いても歩いても、先は暗闇で全く生き物の気配を感じられない。
「本当にここで合ってるのか?」
「そのはずなのですが」と、少し不安そうに返事するモモ。まぁこの洞窟に入っていったのを目撃しただけで、俺達を連れてく隙間時間に出た可能性も無くはない。ならば食べ残しのデスカルゴでも持ち帰られればいいのだが、という気持ちで道を進む。
すると、なんと道が二手に分かれていた。
「うーん、二手に分かれてみるか」
「え!?」と驚いたのはサナ。
「もしモンスターに襲われたら終わりよ? 固まって行動した方いいって!」
「いえ、勇者様に私も賛成です」とモモ。「ピッカラ薬の効きめもどれだけ持つか分からない以上、固まって道を2往復するのは危険かと。ならば二手に分かれ、片方がデビルベアを見つけたならば大声で騒いでもう片方へ連絡、そしてこの分かれ道に誘導すればいいでしょう。その声を聞きつけて合流、それから四人でデビルベアを討伐、ということですよね?」
「へぇ、中々頭が冴えるな」と俺は感心した。というのも、サナやナイツへの説明も兼ねて口に出してくれているからだ。それもとても分かりやすい説明で。きっとシェフを勤めている時に、部下への調理法もそのように説明していたので、その伝達能力が活かされているのかもしれない。
だが。
「しかしそれだと、魔王の剣を拾うことができない。魔王の剣とデビルベアが同じ道にある可能性もあるわけだしな、だから騒ぎを聞いた場合、分かれ道に駆けるんじゃなくて、急いで奥に走ってほしい。そして魔王の剣を入手してほしい」
モモは「ほう」と感嘆の息を漏らす。
「ただ年輪を巻いていたわけではないと自負しておりましたが、まだまだ私も若木でございますね。ではその作戦で参りましょう。編成は私とナイツ様、勇者様とサナ様というのでいかがでしょう?」
良い編成だ。半裸状態でまともに戦うとなると、俺とモモくらいだろう。ナイツは基本的にタンクなので、攻撃を受ける役回りが多い。しかし鎧が無いとなると、その耐久性はタンクとしての役割が果たせないほどにまで下がっていると考えていい。それにサナは今でも魔物であるモモを少し怖がっている節があるため、モモとは組めない。結果、俺&サナ、モモ&ナイツとなるわけだ。
「よし、デビルベア以外にも猛獣か何かがいるかもしれないが、そういう時は騒がずに確固撃破してくれ。いちいち騒いで中間地点の戻る時間も惜しいからな」
「うん、その、二人とも、気を付けて」
ナイツは顔を赤くして、俺とサナに言った。……あー、そういえば、いやいや。
「別に他意があってモモの意見に賛同したわけじゃないぞ?」
俺のフォローをしてくれるのか、モモが俺とナイツの会話に挟まった。
「そうですよ、生物の本能上、このような生死を彷徨うシチュエーションで子孫を残す気持ちを抱いてしまうのは当然でございます。故にこの編成にしているわけでございますし」
「いらねぇ気をまわしてんじゃねぇ!」
良い編成だ。ってうんうんと納得していた俺の感心を返せ。
「というのは冗談ですが。では参りましょう」
こうして俺達は二手に分かれ、作戦を開始した。
「本当にここなんだろうな?」
「はい、確かにここに入っていくデビルベアを目撃しました。それを証拠にこちらを見てください」
モモはランプを持つ手とは逆の手で足下を指す。するとそこには、拳より一回り程大きいサイズの紫色で渦巻状の殻がちらほらと落ちてある。言うまでもない、これはデスカルゴの殻だ。
「ちょっと見ていい?」と嬉々とした声でしゃがみこんだのは、ナイツだった。その殻を手に取り、指で丁寧に表面をさする。
「うん、やっぱりこの質感!」
サナは少し身じろぎして聞いてみる。
「ど、どうしたのよ?」
「デスカルゴの殻の成分は確かに鎧に柔軟性を加えることができる超希少な成分が含まれているんだけど、それだけじゃないんだ。デスカルゴを食べる時って必ず殻ごと加熱するだろう? その時に殻の性質が少し変化して、表面がツルツルになってしまうんだ。しかし加熱前の殻はザラザラしていて、剣を磨ぐ時にはとてもいい素材になるらしくって。今触ってみたら超きめ細かなザラザラなんだぁ! しかも山なりに巻かれている殻はその一巻き一巻きが頂点に達するほどザラザラ具合が細かくなっていって、いちいち研磨剤を変えて磨ぐ必要がないらしいんだけどマジだったんだ!」
好きなことを語らせると、人は聞き手の反応を忘れて早口になると言うけれど、今のナイツはその典型だった。喋り終わっても「うっひょー!」とばかりに落ちている殻を色々と拾い集め、じっくりと見分していた。
「急ぐぞナイツ、命あっての砥石だろうが」
「う、ならこれだけでも」
苦しそうに一つだけ、中でもとりわけ大きい殻を拾って、先を急ぐ。
と言っても、歩いても歩いても、先は暗闇で全く生き物の気配を感じられない。
「本当にここで合ってるのか?」
「そのはずなのですが」と、少し不安そうに返事するモモ。まぁこの洞窟に入っていったのを目撃しただけで、俺達を連れてく隙間時間に出た可能性も無くはない。ならば食べ残しのデスカルゴでも持ち帰られればいいのだが、という気持ちで道を進む。
すると、なんと道が二手に分かれていた。
「うーん、二手に分かれてみるか」
「え!?」と驚いたのはサナ。
「もしモンスターに襲われたら終わりよ? 固まって行動した方いいって!」
「いえ、勇者様に私も賛成です」とモモ。「ピッカラ薬の効きめもどれだけ持つか分からない以上、固まって道を2往復するのは危険かと。ならば二手に分かれ、片方がデビルベアを見つけたならば大声で騒いでもう片方へ連絡、そしてこの分かれ道に誘導すればいいでしょう。その声を聞きつけて合流、それから四人でデビルベアを討伐、ということですよね?」
「へぇ、中々頭が冴えるな」と俺は感心した。というのも、サナやナイツへの説明も兼ねて口に出してくれているからだ。それもとても分かりやすい説明で。きっとシェフを勤めている時に、部下への調理法もそのように説明していたので、その伝達能力が活かされているのかもしれない。
だが。
「しかしそれだと、魔王の剣を拾うことができない。魔王の剣とデビルベアが同じ道にある可能性もあるわけだしな、だから騒ぎを聞いた場合、分かれ道に駆けるんじゃなくて、急いで奥に走ってほしい。そして魔王の剣を入手してほしい」
モモは「ほう」と感嘆の息を漏らす。
「ただ年輪を巻いていたわけではないと自負しておりましたが、まだまだ私も若木でございますね。ではその作戦で参りましょう。編成は私とナイツ様、勇者様とサナ様というのでいかがでしょう?」
良い編成だ。半裸状態でまともに戦うとなると、俺とモモくらいだろう。ナイツは基本的にタンクなので、攻撃を受ける役回りが多い。しかし鎧が無いとなると、その耐久性はタンクとしての役割が果たせないほどにまで下がっていると考えていい。それにサナは今でも魔物であるモモを少し怖がっている節があるため、モモとは組めない。結果、俺&サナ、モモ&ナイツとなるわけだ。
「よし、デビルベア以外にも猛獣か何かがいるかもしれないが、そういう時は騒がずに確固撃破してくれ。いちいち騒いで中間地点の戻る時間も惜しいからな」
「うん、その、二人とも、気を付けて」
ナイツは顔を赤くして、俺とサナに言った。……あー、そういえば、いやいや。
「別に他意があってモモの意見に賛同したわけじゃないぞ?」
俺のフォローをしてくれるのか、モモが俺とナイツの会話に挟まった。
「そうですよ、生物の本能上、このような生死を彷徨うシチュエーションで子孫を残す気持ちを抱いてしまうのは当然でございます。故にこの編成にしているわけでございますし」
「いらねぇ気をまわしてんじゃねぇ!」
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「というのは冗談ですが。では参りましょう」
こうして俺達は二手に分かれ、作戦を開始した。
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