召喚されたのは、最強の俺でした。~魔王の代理となって世界を支配します~

こへへい

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<第五.五章:生きて下山せよ>

世界がヤバイ

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 勇者にさせられた。
 俺自身の心と、周囲の人間の同調圧力によって。
 それがもし本当なら、本当の俺って、一体どこにあるんだ? 俺は、一体なんだ? 急な認知的不協和に陥り、胸が苦しくなる。

「別にドキドキしなくていいんだよ、人間、いや心を持つ生物というのは、周囲から影響を受けやすい生き物なんだから。私はそれにいち早く気づくことができたので、この辺境のチョッタカ山に避難していたってわけさ」

 ミナはそこで言葉を切った。長々と話していて疲れたのだろう、こたつの上に置いてあった湯気の出ているお茶を一すすりする。その間を好機と見て、俺は口を挟んだ。

「なるほど、アンタの正体はよくわかった、アンが世界に及ぼした影響というのも。全て丸のみできるってわけじゃないが、俺が勇者であることに疑問を持ってきているのは確かだから、それを考えれば、まるっきり嘘とは思えないしな」

 それに魔王城での再戦の時、俺達を殺さずにマサトを残したことが、そういえば気がかりだった。だが、あいつがもしもこの現象に感づいていて、その調査のために、人の心を魔力によって操ることを調べていたとするならば、マサトを俺達と分断させた理由としても納得できる。

「そうかい、それは良かったよ、正直君に警戒されるのは今後の事も考えてちょっと避けたい事態だったのでね」

「今後の事? 避けたい事態?」

 俺に警戒されるとよろしくない、俺に何かさせるつもりだったのだろうか? 緊急クエストは今の下山でも精一杯だというのに。

「人の心がこうも圧力に屈してしまうのは、何故だと思う?」

 と、聞いてきた。え、てっきり避けたい事態が何かで、その何かの解決を頼むとかそういう流れかと思っていたのに。そういえば魔王の剣を回収してデビルベアを倒すことが第一目標であったはずなのに、いつしか目の前のだらしない様相をした女性のペースにしっかりと乗せられていた。本来の目的に戻るために、ぱぱっと質問に答えて急がなければ。

「誰かに見られているとか、そういうんじゃないのか?」

「魔力だよ」

 魔力?

「この世界には何処にでも魔力が存在しているんだけど、その魔力は心の性質と比例する。君は自分のことを無意識化で勇者だと思うことで、勇者としての力を発揮できるのと同じ理屈だよ。それを踏まえて、この世界の人間が、いや魔族も含めて、一様の心を持ったらどうなると思う?」

「どうなるって、ええと」と口ごもる。そんなこと言われても、ピンとこない。そもそも魔力が心の力と比例するというのからして初耳だ。うーんうーんと首をひねっていると、淡々と回答した。まるでこの世の常識のように、言った。

「世界の魔力のバランスが崩れ、世界が崩壊する」

「え、はぁ?」

 急に世界の話になった。魔力が、世界を破壊するだって? こいつは何を言っているんだ?

「正確には、世界に内在する様々な種類の魔力の比率が崩れることで、丁度いい均衡を保っていた世界に軋みが発生すると言った方が正しいかな。トランプタワーのトランプが急に一枚だけ徐々にその重量を増やしていると考えてくれていい。最初は世界のバランスが支えてくれるが、やがて支えきれなくなる。感情を動かされた世界の人々は今も増大し、その魔力の比率を上げている。もう私では手に負えないほどにまでなっているんだ。だから君の助力をいつか借りたいと思っていったんだよ。いやーあの魔王の代理君には感謝してもしきれないね」

 魔王の、代理君? 今そう言ったのか? あんないけ好かない奴と何か関わりがあるかもしれないと思うだけで、親の仇へ抱くような感情がこみ上げてくる。

「そうフラストレーションを奮い立たせるなよ、別に彼と接点があるわけじゃない。リモートワークをしていると言っただろう? プリーストックを通じて世界のありとあらゆる情報を収集していて、たまたま彼の事を知っただけさ。そして彼もまた、君と同じ、いやそれ以上の意思の力を持っている。だから君に頼みたいことと言うのは」

 そこで、ミナの眼差しは鋭くなった。さっきまでの飄々とした雰囲気が一変、真剣な顔つきに変わる。

「彼と協力して、この世界を救ってほしい」
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