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<第五.五章:生きて下山せよ>
勇気をもって、立ち上がれ
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「んで、モモが調理してくれたデスカルゴを食って、数日かけて下山。それからお前に会いに魔王城に向かったら、マサトと合流。竜の背中借りてお前のだっせぇ姿拝みに来たってわけだ」
……なげぇ。一章マジで持っていきやがった。
自分が今、ハーモニーメドウでの襲撃から助けられて、ジメット湿原で腰を据えていることを忘れてしまうくらいの長さだった。てっきり校長先生の挨拶を聞かされているのかと思った。橙色の陽光が俺達の影をグングンと伸ばしているところを見るに、体感2時間くらい聞いたんじゃないだろうか?
しかし、それでも疑問に残る点がある。勇者への質疑応答時間が始まった。
「ミナ、ペタブヨウのミナが居たらしいが、デビルベアを倒してから、話を詳しく聞かなかったのか?」
「会えなかった。デビルベアを倒してから、モモがものすげぇ手際で七輪を用意して調理したデスカルゴの炭火バター焼きを平らげてから、もう一度分岐点に行ってみた。けどそもそも分岐点と言うのが見つけられなかったんだ。まるで最初からただの一本道だったかのようにな」
魔法何でもありだな、まぁ影の分身を送り付けてアブさんを襲撃させたり、願いを叶える壺で瞬間移動できるくらいだ、空間への干渉も可能なのだろうと理解しておく、しかないか。
「でも魔王の剣は残ってたってのは不思議ね、幻ってわけじゃないわけだし」
と、魔法使い(武道家?)のサナが呟く。魔力の瘴気(多分話を聞く限り、デスカルゴの焦げた匂いだったのではないかと思うが)に当てられて途中で引き返した立場から、そう感想を漏らした。
だが、そんなことよりも、確認というか、確定させたい情報があった。べらぼうにでかい情報。勇者に再び顔を向ける。
「それと、世界が崩壊するってのは、マジなのか? 確認するとか言っていたが、確認はとれたのか?」
それにはマサトが答えた。
「はい、魔力は人の心に大きく依存した性質を持っています。精神操作が不安定な感情の人に有効なのも、当人の魔力が不安定だからこそ、その魔力に干渉して精神を扇動することができるわけですから」
自慢げに語るが、その操作をしていた奴がいけしゃあしゃあと、操作された側と一緒にいるのが奇妙でならない。とつい気持ちをこぼしてしまうと、勇者が拾った。
「あー、それな。魔王城に残ってる武器の資材とか色々で手を打った」
「マサトてめぇ魔王城売りやがったな!? だから戦士君、もといナイト君が弁慶並の武器背負ってたのかよ!」
身を引いて、アハハと苦笑いのマサト。名前が出たからか、ナイト君がこれ幸い胸を張って、背中に背負う武器達に親指を指した。
「心配いらないよ、グレードアップさせてるから」
「唾つけられちゃってるよ、もうクーリングオフ効かないやつだよそれ!」
通販で買った商品は、いらないとわかったら傷をつけずに箱にしまおうね! 返品額半額になったりするからね!
それはともかく。自然と肩を落としてため息が漏れていた。
「なら、世界の崩壊は、受け入れるしかないだろうな。例え魔力がこの世界になかったとしても、解決することができないんだから」
あの世界も、そうだった。
どうせ人は自らの安心のために、村八分を焼き払う。異分子を殺し、己が平穏を死んでも守る。己の人生が死んでも。
「どうせ――」
と、また弱音がドバドバ吐き出ていた時だ。
俺のポケットが、光った。
正確には、ポケットの中に入っている、勇者に与えられたアイテムボックス。
もっと正確に言えば、そのアイテムボックスにしまい込んでいた、勇者の剣。
青白く光るそれは、暮れて地平線からいなくなった日の光の代わりに、俺達を照らしてくれた。
なんて、暖かい、いや、熱い光なんだ。目が焼けるようだった。いや、心が焼けてしまうような。でもそれは、焦げて炭化するんじゃない。
更に心は燃えていき、勇気が溢れてくるようだった。
「ふむ、勇者が近づいたことで、勇者の剣が反応したんでしょうな」
「ま、一応勇者だからな」
クスノの解説に、そっけなく答える勇者。今は勇者ではなく、一人の青年、ユウとしてこの場に立っているという心持ちなのだろう。
ナイツとサナもその光を受けて、自然と笑顔になっていった。心が前向きになっているようだった。
「ほっほっほ、勇者の剣の鼓舞の力ですな。またの名を『ブルーブレイブレード』とは良く言ったものです。年甲斐もなく元気が出てまいります」
「え、そうだったの? 知らなかった。ちなみに魔王の剣は?」
「魔王の剣は、またの名を『ドレッドレッドソード』と呼ばれております」
どちらも、かの『勇者の超冒険』の作者様が遺したお話と同じ。
そうクスノが言った。
その時、何かの符号を見た。
作者は、最初は自分も物語で勝負したかったんじゃないだろうか。自分の思いを乗せて、自分の気持ち100%で、物語を書いて。
でも、それじゃああんまり受けが良くなくて、いつしか人気作からの内容を転用するようになっていったのでは。
だから、後悔していたのでは。
自分の作品が、思いが、伝わらなかったから。
けど、この二つの剣は、違う気がする。
勇者の超冒険。聞いたことがない。人気なんて出ない駄作なんだろう。万人受けせず、見向きもされず、自分の気持ちを無視され続けたのだろう。
けど、こうして、月日が経って、この剣は残っている。
「ちょっとその剣貸してくれないか」
「え、これか?」
「いいから」
「あ、ああ」
ユウは俺の乱暴な口調に多少の動揺は示しつつ、魔王の剣を貸してくれた。それを握る。強く、強く。
勇者の剣と、魔王の剣。
勇気を引き出す力と、愚鈍なる自我を引き出す力。
それらを握り。思いを読み取る。
込められた気持ちを。
本質を、理解する。
「できる、この二つがあれば。世界の崩壊を回避できる」
「え、できるんですか!?」
マサトの驚愕の気持ちは、他のメンバーも同じようだった。そりゃそうだろうよ、俺が一番驚いている。いや、最初から気づくべきだったのかもしれない。
なにせこの世界は、異世界。
現実にはできない事が、異世界でならばできる。
「ユウ、お前はやっぱりこれを使え」
「指図すんじゃねぇ、最初からそのつもりだ」
と、俺が差し出した勇者の剣をふんだくる。それでいい。
俺達は立ち上がった。
世界を崩壊から救うためなんかじゃない。
無意識化で操られている皆の心を解放するためなんかじゃない。
俺達は、俺達の人生を切り開くために。集団心理の魔力をぶち壊す。
「さぁ、反撃開始だぜ」
第六章、己が世界を支配せよ
……なげぇ。一章マジで持っていきやがった。
自分が今、ハーモニーメドウでの襲撃から助けられて、ジメット湿原で腰を据えていることを忘れてしまうくらいの長さだった。てっきり校長先生の挨拶を聞かされているのかと思った。橙色の陽光が俺達の影をグングンと伸ばしているところを見るに、体感2時間くらい聞いたんじゃないだろうか?
しかし、それでも疑問に残る点がある。勇者への質疑応答時間が始まった。
「ミナ、ペタブヨウのミナが居たらしいが、デビルベアを倒してから、話を詳しく聞かなかったのか?」
「会えなかった。デビルベアを倒してから、モモがものすげぇ手際で七輪を用意して調理したデスカルゴの炭火バター焼きを平らげてから、もう一度分岐点に行ってみた。けどそもそも分岐点と言うのが見つけられなかったんだ。まるで最初からただの一本道だったかのようにな」
魔法何でもありだな、まぁ影の分身を送り付けてアブさんを襲撃させたり、願いを叶える壺で瞬間移動できるくらいだ、空間への干渉も可能なのだろうと理解しておく、しかないか。
「でも魔王の剣は残ってたってのは不思議ね、幻ってわけじゃないわけだし」
と、魔法使い(武道家?)のサナが呟く。魔力の瘴気(多分話を聞く限り、デスカルゴの焦げた匂いだったのではないかと思うが)に当てられて途中で引き返した立場から、そう感想を漏らした。
だが、そんなことよりも、確認というか、確定させたい情報があった。べらぼうにでかい情報。勇者に再び顔を向ける。
「それと、世界が崩壊するってのは、マジなのか? 確認するとか言っていたが、確認はとれたのか?」
それにはマサトが答えた。
「はい、魔力は人の心に大きく依存した性質を持っています。精神操作が不安定な感情の人に有効なのも、当人の魔力が不安定だからこそ、その魔力に干渉して精神を扇動することができるわけですから」
自慢げに語るが、その操作をしていた奴がいけしゃあしゃあと、操作された側と一緒にいるのが奇妙でならない。とつい気持ちをこぼしてしまうと、勇者が拾った。
「あー、それな。魔王城に残ってる武器の資材とか色々で手を打った」
「マサトてめぇ魔王城売りやがったな!? だから戦士君、もといナイト君が弁慶並の武器背負ってたのかよ!」
身を引いて、アハハと苦笑いのマサト。名前が出たからか、ナイト君がこれ幸い胸を張って、背中に背負う武器達に親指を指した。
「心配いらないよ、グレードアップさせてるから」
「唾つけられちゃってるよ、もうクーリングオフ効かないやつだよそれ!」
通販で買った商品は、いらないとわかったら傷をつけずに箱にしまおうね! 返品額半額になったりするからね!
それはともかく。自然と肩を落としてため息が漏れていた。
「なら、世界の崩壊は、受け入れるしかないだろうな。例え魔力がこの世界になかったとしても、解決することができないんだから」
あの世界も、そうだった。
どうせ人は自らの安心のために、村八分を焼き払う。異分子を殺し、己が平穏を死んでも守る。己の人生が死んでも。
「どうせ――」
と、また弱音がドバドバ吐き出ていた時だ。
俺のポケットが、光った。
正確には、ポケットの中に入っている、勇者に与えられたアイテムボックス。
もっと正確に言えば、そのアイテムボックスにしまい込んでいた、勇者の剣。
青白く光るそれは、暮れて地平線からいなくなった日の光の代わりに、俺達を照らしてくれた。
なんて、暖かい、いや、熱い光なんだ。目が焼けるようだった。いや、心が焼けてしまうような。でもそれは、焦げて炭化するんじゃない。
更に心は燃えていき、勇気が溢れてくるようだった。
「ふむ、勇者が近づいたことで、勇者の剣が反応したんでしょうな」
「ま、一応勇者だからな」
クスノの解説に、そっけなく答える勇者。今は勇者ではなく、一人の青年、ユウとしてこの場に立っているという心持ちなのだろう。
ナイツとサナもその光を受けて、自然と笑顔になっていった。心が前向きになっているようだった。
「ほっほっほ、勇者の剣の鼓舞の力ですな。またの名を『ブルーブレイブレード』とは良く言ったものです。年甲斐もなく元気が出てまいります」
「え、そうだったの? 知らなかった。ちなみに魔王の剣は?」
「魔王の剣は、またの名を『ドレッドレッドソード』と呼ばれております」
どちらも、かの『勇者の超冒険』の作者様が遺したお話と同じ。
そうクスノが言った。
その時、何かの符号を見た。
作者は、最初は自分も物語で勝負したかったんじゃないだろうか。自分の思いを乗せて、自分の気持ち100%で、物語を書いて。
でも、それじゃああんまり受けが良くなくて、いつしか人気作からの内容を転用するようになっていったのでは。
だから、後悔していたのでは。
自分の作品が、思いが、伝わらなかったから。
けど、この二つの剣は、違う気がする。
勇者の超冒険。聞いたことがない。人気なんて出ない駄作なんだろう。万人受けせず、見向きもされず、自分の気持ちを無視され続けたのだろう。
けど、こうして、月日が経って、この剣は残っている。
「ちょっとその剣貸してくれないか」
「え、これか?」
「いいから」
「あ、ああ」
ユウは俺の乱暴な口調に多少の動揺は示しつつ、魔王の剣を貸してくれた。それを握る。強く、強く。
勇者の剣と、魔王の剣。
勇気を引き出す力と、愚鈍なる自我を引き出す力。
それらを握り。思いを読み取る。
込められた気持ちを。
本質を、理解する。
「できる、この二つがあれば。世界の崩壊を回避できる」
「え、できるんですか!?」
マサトの驚愕の気持ちは、他のメンバーも同じようだった。そりゃそうだろうよ、俺が一番驚いている。いや、最初から気づくべきだったのかもしれない。
なにせこの世界は、異世界。
現実にはできない事が、異世界でならばできる。
「ユウ、お前はやっぱりこれを使え」
「指図すんじゃねぇ、最初からそのつもりだ」
と、俺が差し出した勇者の剣をふんだくる。それでいい。
俺達は立ち上がった。
世界を崩壊から救うためなんかじゃない。
無意識化で操られている皆の心を解放するためなんかじゃない。
俺達は、俺達の人生を切り開くために。集団心理の魔力をぶち壊す。
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第六章、己が世界を支配せよ
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