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<最終章:己が世界を支配せよ>
立ち上がれ、微かな勇気を燃やせ
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「モモの料理は世界が誇るべき世界遺産なんだよ! いや世界ってのもちいせぇ、次元遺産だ! 次元が総出で守らなきゃなんねぇくらいうめぇ料理作れるモモの実を、こんなポンポコポンポコと出しやがって! モモの木から実がもう残ってねぇじゃねぇか! 何が美しさがふざけやがって! うめぇ飯作れねぇゴミが粋がってんじゃねぇぞ!」
魔王の剣によって灰色の空気が一気に晴れ渡ったけれど、俺の心は晴れ渡ることはなかった。
モモを散々切り刻んでからというものの、この白魔導士を血の涙を流しながら踏みつけた。そんなことをしても大切なモノは戻って来ないことは分かっているけれど、恨みを晴らさずにはいられない。人はその命を賭して守らなければならないモノというものがある。それは愛する友達や、家族や、自分の信念だったりする。だがそれに比肩されてしかるべきなのが、このモモの料理なのだ、それを作れるモモなのだ。俺はあのカレーライスの味を決して忘れない。
「いえ! 見てください!」
クスノがある方向に指をさして叫んだ。苦虫を噛みしめるように泣きながらその方を見る。かつてピンクの花びらを舞い散らせていた姿は見る影もなく、ただ薄茶色の枝が弱々しくしな垂れている。しかしその枝葉の一つ、たった一つに、確かに開こうとしているつぼみがあった。
「こ、これは……」
「まだモモは終わってはおりません、ご安心ください」
クスノの微笑みを見て、安堵の息が漏れた。引き締まった顔の筋肉が緩み、自然と透明な涙が頬を伝う。そうか、モモは助かったんだな。
「けど私達のモモをあんなに雑に扱ったのよ、許してはおけないわ」
「そうだね、モモがいなかったら僕らはチョッタカ山で死ぬところだったんだ」
地に伏すクルミを一緒に踏みつけるためか、勇者一行のナイツとサナがにじり寄る。俺と同じくモモを大事に思っている。そのことがうれしくてついまた涙がこぼれる。そうか、お前らもそうなんだな。
「まぁ、お前がモモに命令しなかったら、俺達はチョッタカ山で遭難することすらなかったんだがな」
しかしユウはちゃんと根本に気づいているようで、そう俺達を突っ込んだ。ぬぅ、いいじゃないか、モモの料理を食べられるんだったら遭難くらい安いもんだろう。
「ふ、ふふふふ」
正座で腰を丸くしていたクルミだったが、そこでゆっくりと噴き出した。何がおかしい?
「やってしまいましたね、僕の本当の目的は、貴方達を打倒することではない。現実を突きつけるためだ」
「現実? 何の現実だよ、適当なこと言ってはったりかまそうってか?」
見下ろす俺に視線を返すことができないクルミではあったが、しかし、その声音は本当にはったりとは思えないような、確信に満ちた高笑いだった。
「はっはっはっは! 滑稽だなぁ、お前が魔王の剣でやったことは、皆を真の絶望に陥れるだけでしかないというのに!」
足下でミクルがそう叫んだ時、俺達を取り囲む人々から陰鬱な声音が聞こえてきた。
「そうだ、今まで俺は何をやっていたんだ」
「俺だけまだ何も為せていない」
「私には何もない」
「俺には誇るべき力がない」
「私はなんて弱いんだろう」
自分への失望、自分への嫌悪、自分への落胆、自分への悲観、様々なネガティブな感情が彼らを支配している。それは、今まで見て見ぬふりをしてきた現実を無理やり突きつけられたからだ。魔王の剣によって、自分の現状を意識させられたから。
「皆は弱い、人間は弱い、だから支え合わなければならないんだ! それをいたずらに引きはがした! お前らがやっていることはそういうことなんだ! せっかく平穏に過ごせていたのに、お前らが皆を地獄に突き落としたんだ! どうしてそんなことができるんだ!」
クルミは地面に踏みつけられながらも、悲痛に叫ぶ。口調も乱暴なものとなり、責め立てる。まるで正義のヒーローが戦闘によって悪者を倒したのに、そのヒーローが破壊した建物やモノの被害を責め立てるように。
だが、俺はヒーローじゃない。更に足下の男を踏みしめ、蔑むように見下ろす。
「何言ってんだ? 俺は魔王だぜ? 人を地獄に突き落とすのが仕事みたいなもんだろうが」
それも少し違うのだが。彼らは元々地獄にいたのだ。力がない、技術がない、知恵がない、工夫がない、経験がない、そういう現実はただそこに有って、今それを自覚したに過ぎないのだから。それを気づかせたに過ぎないのだから。
そしてそんな人達に必要なのは、それでも立ち上がる。勇気だろう。
俺の背後でユウは、青く輝く剣を天にかざし叫んだ。
「確かに今は弱い! ゴミだ! だが人は成長することができる! 立ち上がれ! お前らの人生はお前らが作り上げるんだ! 誰かにもたれ掛かってちゃあ、お前らは人生を支配できない! だから立て! 微かな勇気を燃やすんだ!」
人々に勇気を与える力を持つ、勇者の剣、ブルーブレイブレード。その輝きによって、皆の心が再び、燃え上がる。
魔王の剣によって灰色の空気が一気に晴れ渡ったけれど、俺の心は晴れ渡ることはなかった。
モモを散々切り刻んでからというものの、この白魔導士を血の涙を流しながら踏みつけた。そんなことをしても大切なモノは戻って来ないことは分かっているけれど、恨みを晴らさずにはいられない。人はその命を賭して守らなければならないモノというものがある。それは愛する友達や、家族や、自分の信念だったりする。だがそれに比肩されてしかるべきなのが、このモモの料理なのだ、それを作れるモモなのだ。俺はあのカレーライスの味を決して忘れない。
「いえ! 見てください!」
クスノがある方向に指をさして叫んだ。苦虫を噛みしめるように泣きながらその方を見る。かつてピンクの花びらを舞い散らせていた姿は見る影もなく、ただ薄茶色の枝が弱々しくしな垂れている。しかしその枝葉の一つ、たった一つに、確かに開こうとしているつぼみがあった。
「こ、これは……」
「まだモモは終わってはおりません、ご安心ください」
クスノの微笑みを見て、安堵の息が漏れた。引き締まった顔の筋肉が緩み、自然と透明な涙が頬を伝う。そうか、モモは助かったんだな。
「けど私達のモモをあんなに雑に扱ったのよ、許してはおけないわ」
「そうだね、モモがいなかったら僕らはチョッタカ山で死ぬところだったんだ」
地に伏すクルミを一緒に踏みつけるためか、勇者一行のナイツとサナがにじり寄る。俺と同じくモモを大事に思っている。そのことがうれしくてついまた涙がこぼれる。そうか、お前らもそうなんだな。
「まぁ、お前がモモに命令しなかったら、俺達はチョッタカ山で遭難することすらなかったんだがな」
しかしユウはちゃんと根本に気づいているようで、そう俺達を突っ込んだ。ぬぅ、いいじゃないか、モモの料理を食べられるんだったら遭難くらい安いもんだろう。
「ふ、ふふふふ」
正座で腰を丸くしていたクルミだったが、そこでゆっくりと噴き出した。何がおかしい?
「やってしまいましたね、僕の本当の目的は、貴方達を打倒することではない。現実を突きつけるためだ」
「現実? 何の現実だよ、適当なこと言ってはったりかまそうってか?」
見下ろす俺に視線を返すことができないクルミではあったが、しかし、その声音は本当にはったりとは思えないような、確信に満ちた高笑いだった。
「はっはっはっは! 滑稽だなぁ、お前が魔王の剣でやったことは、皆を真の絶望に陥れるだけでしかないというのに!」
足下でミクルがそう叫んだ時、俺達を取り囲む人々から陰鬱な声音が聞こえてきた。
「そうだ、今まで俺は何をやっていたんだ」
「俺だけまだ何も為せていない」
「私には何もない」
「俺には誇るべき力がない」
「私はなんて弱いんだろう」
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「皆は弱い、人間は弱い、だから支え合わなければならないんだ! それをいたずらに引きはがした! お前らがやっていることはそういうことなんだ! せっかく平穏に過ごせていたのに、お前らが皆を地獄に突き落としたんだ! どうしてそんなことができるんだ!」
クルミは地面に踏みつけられながらも、悲痛に叫ぶ。口調も乱暴なものとなり、責め立てる。まるで正義のヒーローが戦闘によって悪者を倒したのに、そのヒーローが破壊した建物やモノの被害を責め立てるように。
だが、俺はヒーローじゃない。更に足下の男を踏みしめ、蔑むように見下ろす。
「何言ってんだ? 俺は魔王だぜ? 人を地獄に突き落とすのが仕事みたいなもんだろうが」
それも少し違うのだが。彼らは元々地獄にいたのだ。力がない、技術がない、知恵がない、工夫がない、経験がない、そういう現実はただそこに有って、今それを自覚したに過ぎないのだから。それを気づかせたに過ぎないのだから。
そしてそんな人達に必要なのは、それでも立ち上がる。勇気だろう。
俺の背後でユウは、青く輝く剣を天にかざし叫んだ。
「確かに今は弱い! ゴミだ! だが人は成長することができる! 立ち上がれ! お前らの人生はお前らが作り上げるんだ! 誰かにもたれ掛かってちゃあ、お前らは人生を支配できない! だから立て! 微かな勇気を燃やすんだ!」
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