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第18話 すぐへばられちゃ困るわ
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翌朝。
宿でしっかりと休息をとった僕と先輩は、ギルドの冒険者掲示板の前で悩んでいた。
現在受注しているクエストは、あちらで受けた採取依頼のみ。狩場を確認したところ、位置的に日帰りは効率が悪そうだった。
折角遠くまで来たので、どうせならいくつかの依頼を並行して行いたいのだが……。
国最大の街なので依頼数自体は桁違いだが、その難易度も桁違いだった。
Eランクが受けられるクエストは王都付近の討伐依頼か、F・Gランクのモンスター素材の大量採取くらい。
受注中のクエストと同内容の依頼も沢山あるのだが、目的の希少素材集めるには相当数倒さなければならない。確率を聞く限り、一人で複数依頼分の採取は困難だろう。
そもそも持ち運べない。
うーんうーんと、掲示板の間でうなっていると「や!」と声をかけられた。
「君は……!」
振り返ると、昨日の居酒屋で給仕をしていた少女がいた。
「お兄さんさ、もしかしてこのクエスト受けるか悩んでる?」
彼女が指さしたのは、重複受注するか迷っていた依頼である。
「はい、実は元の街で受けた依頼と同じで……受けたら効率はいいけど、期間的に入手できるか怪しくて」
「じゃぁ、これあたしと一緒に受けようよ!」
言葉と共に指をさしたのはCランクの依頼だった。討伐予定のモンスターの上位種で、今の僕ではかなり厳しい。
「僕Eランクだから無理ですね……」
「あたしがBだから問題ないわ」
「えぇ!?」
「ふふん、どこから見ても可憐な少女だから、驚くのは無理ないわね」
僕が驚きの声を上げると、得意げにサイドの長い髪を手ではらう。可憐というよりは、見た目から気が強そうではあるが、突っ込んだら怖い気がする。
「すみません、Bランク冒険者が居酒屋で働いてるなんて思わなくて」
Bランクともなれば依頼で得られる報酬もかなりのものだろう。店内のバイト募集の張り紙を目にしたが、報酬と比べればお小遣いにもならないような金額だ。
「あれは社会勉強よ」
Bランク冒険者で社会勉強のためにバイトまでしているなんて、しっかりしている。
「提案は嬉しいんですけど、僕ではお荷物ですし欲しい素材もこのモンスターのじゃなくて……」
正直、陽葵以外とパーティーを組める気がしない。僕の見た目に言及してこないあたり、ノームの亜種という噂は聞いているのだろうけど、深く関わると異世界人とばれかねない。
一昨日の男のこともある。慎重にならなければ。
「あら、知らないの? 上位種は下位種と同じものをドロップする上に、確率は上がるのよ」
「そうなんですか!」
「それに、見た所あなたアタッカーでしょ?」
腰に差している剣を指さす。
「あたしは後方支援だから、一人じゃ効率悪いのよ」
聞くところによると、彼女の求めている素材は僕のそれより遥かに入手困難な素材らしい。
彼女の得意武器は弓。威力は出せないためソロは向いていないが、高い命中力と複数の属性を駆使しての支援を得意としているそうだ。
「Eってところを気にしているようだけど、斬撃には弱いモンスターだから問題ないわ」
僕の表立っての不安要素を次々潰していき、魅力的なメリットを説明してくれる。
後方支援という事は、連携戦となるだろう。陽葵とは作戦も何もない体当たり戦闘しかしていないので、連携を学ぶ良い機会かもしれない。
「先輩はどう思う?」
彼女の登場から、ずっとポケットに隠れていた先輩に問いかける。僕が良くても、相方が警戒する相手では一緒に戦えない。
もぞもぞとポケットから顔を出し、じっと少女を見つめ、耳をぴくぴく動かし、んーんーっと考えるように左右に揺れる。
「「可愛い」」
「ぴ!」
結論が出たようで、前足を片方上げて元気よく返事をした。いつも即決の先輩にしては珍しいが、とにかくお許しが出たようだ。
「じゃぁお願いします」
「よろしく! あたしの事は茉莉花(まつりか)って呼んで。それと、敬語は無しね」
「僕は旭太陽。太陽で良いよ。こっちは先輩」
「え、先輩って名前なの?」
紹介する度に聞かれることだけど、やっぱり変なのか……。でも、先輩が選んだんだよ……。
「ぴぃ!」
「先輩もよろしく」
僕と先輩と握手を交わし、受付へと向かった。
「それでは出発!」
上機嫌な彼女の合図で、二人と一匹は目的地へと足を進めた。
クエストを連名で受注してから、準備のために一度解散。
当初よりも奥地に行くことになり、二泊三日の行程となったため、お互いに食料などの準備を整えて、昼過ぎに集合した。
「荷物はそれだけ?」
僕の剣・盾・リュック・ウエストポーチという大荷物にくらべ、茉莉花の荷物は小さなウエストポーチ一つ。
「弓矢はしまってあるからね」
そういって手を前に出すと、フォンッという音と共に弓が出現した。
「武器って仕舞えたの!?」
カバンに仕舞えるのは魔力で出来た素材・アイテムだけだと思っていた。陽葵はそもそも武器を持たないし……。
「あたしのは特別製! 高濃度の魔力を固めて作ってあるから出し入れ出来るの。ギルド長お手製だから……あなたのもできるでしょ?」
僕の剣と盾をじっと見つめる。同じギルド長お手製という事は、僕のも高濃度魔力の塊なのか……。
いやいや、こちらの魔力の塊なら僕は持つことすらできないじゃないか。これはただの鉄の塊だ。たぶん。
ただ、それを説明すると異世界人であると言っているも同然になってしまう。
しかしそうか。元の街では当たり前になっていたから、説明していなかった。
「えっと、僕はメニューのカバン機能が使えないんだ」
ギルド長から貰った黒いカードを見せて説明する。
「受付で出してたのこれね!」
クエスト受注の際、受付ノームに手渡していたのを不思議に思っていたらしい。
「だから、素材採取の時は手間をかけちゃうかも。僕はリュックに入る分だけ貰うつもりだけど」
「気にしなくて良いわよ。それにあたしの容量ちょっと少ないの。狩ったもの全て持ち帰られるなら願ったりだわ」
肯定的な返事に安堵する。
「ちなみに、食料とかは……?」
「え? 現地調達以外にあるの?」
あぁ、陽葵タイプだった。いや、もしかしたらこの世界の人たちはこっちが常識なのかもしれない。
すれ違い冒険者たちで、僕ほど荷物を背負っている人は見たことが無いのだから。
「むしろ、あなたは荷物が多すぎじゃない?」
「色々心配で……」
ショップで購入した食品は怪しまれないように外に出しているし、すぐに食べられない時用に包帯なども準備している。三谷さんに貰ったコートのおかげで、防寒具はいらなくなったから、これでも少ない方だ。
「貸して」
「へ?」
ずいっと手を差し出され、間抜けな声を上げる。
「体力無いって聞いてるわよ。半日以上歩くのに、すぐへばられちゃ困るわ」
その通りだ。
ショップで様々なものが揃えられるようになって調子に乗ってしまった。一人や陽葵と一緒なら収納できるとは言え、今は違う。
「お願いします……」
自分よりも小さな女の子に運ばせるなんて……と罪悪感にかられるが、この世界では僕以上に軟弱な人はいない。情けない話だが、素直に頼ることにした。
結果、荷物を持ってもらって大正解であった。
目的地に着くまで当然様々なモンスターに出くわすわけで、戦闘しながらの行進となる。
森の中を歩くだけでも体力が奪われるのに、戦闘しながらなんてすぐに体力が底を尽きてしまう。ここで慣れない荷物を抱えながらだったら、一時間も持たなかっただろう。
とは言っても、途中からしびれを切らした茉莉花に、「遅い!」とお姫様抱っこをされてしまうのだけど。
陽葵のジェットコースターと違い、丁寧に運んでくれているのが恥ずかしさを増幅させ、ツーッと目から涙がこぼれる。
「これ美味しいわね!」
その夜、焚火の前でインスタントのスープを飲んだ少女は目を輝かせる。
美味しい美味しいと飲む茉莉花の姿に、二人分買っといて良かったと思う。
疲労回復に効くアイテムだが、この世界の人間にはただの美味しい食べ物らしい。
「良かった。それにしても、僕の持ってきた荷物が役に立たなくてごめん……」
寒い夜には温かいスープが飲みたい。その思いで用意した鍋とお水は出番無く鞄に仕舞われている。
「そんなもの持ってきてたことに驚きだわ」
茉莉花の手にかかれば、カップにお湯を注ぐのは何てことなかった。
外部魔力のない陽葵と、そもそも魔法が使えない僕とでは野営の質が段違いの様だ。
「このお肉も美味しいね」
先ほど討伐したホーンボアのお肉を、串刺しにし塩を振って焼いたものをむしりと食べる。
僕が最初に討伐したモンスター。あの時は一体倒すだけでも命がけだったが、今では数秒で片が付く。
茉莉花のおかげで、目的地はすぐそこである。
「ごめんけど、見張りよろしくね」
「ぴぃ!」
僕らが寝ている間の見張りを託すと、先輩は頼もしい返事を返してくれる。
コートにくるまり、ポーチを枕にして寝転ぶ。このコートは本当に暖かい。
(ありがとうございます)
三谷さんご夫婦と、作ってくれた職人さんに感謝した。
モンスター除けの薬草をくべた焚火の向こう側では、茉莉花が木に寄りかかり寝ている。
道中、お互いのことを色々話したが、彼女が年齢以上に大人びているのが分かった。
年は僕の二つ下で十五歳。
幼いころから魔力操作が得意で、周囲の反対を押し切って冒険者になったそうだ。集中力があり頭の回転も速い。手先の器用さも相まって、弓での後方支援は天職らしい。
家のことについては何も言わないが、所々に感じられる上品さから、良い所のお嬢様なのが伺える。
冒険者になって五年。
歴代二番目の速さでBランクに上り詰めた実力は確かなようで、王都では一目置かれる存在らしい。
そんな有名人なら、他の人と組んだ方が良いと思うのだが、どうやら目的は他にあるようだ。
会話の中で時折、何かを聞きたそうにしているが、何かと聞いても口ごもるばかり。まだ時間はあるし、無理に聞くのは止めておこう。
宿でしっかりと休息をとった僕と先輩は、ギルドの冒険者掲示板の前で悩んでいた。
現在受注しているクエストは、あちらで受けた採取依頼のみ。狩場を確認したところ、位置的に日帰りは効率が悪そうだった。
折角遠くまで来たので、どうせならいくつかの依頼を並行して行いたいのだが……。
国最大の街なので依頼数自体は桁違いだが、その難易度も桁違いだった。
Eランクが受けられるクエストは王都付近の討伐依頼か、F・Gランクのモンスター素材の大量採取くらい。
受注中のクエストと同内容の依頼も沢山あるのだが、目的の希少素材集めるには相当数倒さなければならない。確率を聞く限り、一人で複数依頼分の採取は困難だろう。
そもそも持ち運べない。
うーんうーんと、掲示板の間でうなっていると「や!」と声をかけられた。
「君は……!」
振り返ると、昨日の居酒屋で給仕をしていた少女がいた。
「お兄さんさ、もしかしてこのクエスト受けるか悩んでる?」
彼女が指さしたのは、重複受注するか迷っていた依頼である。
「はい、実は元の街で受けた依頼と同じで……受けたら効率はいいけど、期間的に入手できるか怪しくて」
「じゃぁ、これあたしと一緒に受けようよ!」
言葉と共に指をさしたのはCランクの依頼だった。討伐予定のモンスターの上位種で、今の僕ではかなり厳しい。
「僕Eランクだから無理ですね……」
「あたしがBだから問題ないわ」
「えぇ!?」
「ふふん、どこから見ても可憐な少女だから、驚くのは無理ないわね」
僕が驚きの声を上げると、得意げにサイドの長い髪を手ではらう。可憐というよりは、見た目から気が強そうではあるが、突っ込んだら怖い気がする。
「すみません、Bランク冒険者が居酒屋で働いてるなんて思わなくて」
Bランクともなれば依頼で得られる報酬もかなりのものだろう。店内のバイト募集の張り紙を目にしたが、報酬と比べればお小遣いにもならないような金額だ。
「あれは社会勉強よ」
Bランク冒険者で社会勉強のためにバイトまでしているなんて、しっかりしている。
「提案は嬉しいんですけど、僕ではお荷物ですし欲しい素材もこのモンスターのじゃなくて……」
正直、陽葵以外とパーティーを組める気がしない。僕の見た目に言及してこないあたり、ノームの亜種という噂は聞いているのだろうけど、深く関わると異世界人とばれかねない。
一昨日の男のこともある。慎重にならなければ。
「あら、知らないの? 上位種は下位種と同じものをドロップする上に、確率は上がるのよ」
「そうなんですか!」
「それに、見た所あなたアタッカーでしょ?」
腰に差している剣を指さす。
「あたしは後方支援だから、一人じゃ効率悪いのよ」
聞くところによると、彼女の求めている素材は僕のそれより遥かに入手困難な素材らしい。
彼女の得意武器は弓。威力は出せないためソロは向いていないが、高い命中力と複数の属性を駆使しての支援を得意としているそうだ。
「Eってところを気にしているようだけど、斬撃には弱いモンスターだから問題ないわ」
僕の表立っての不安要素を次々潰していき、魅力的なメリットを説明してくれる。
後方支援という事は、連携戦となるだろう。陽葵とは作戦も何もない体当たり戦闘しかしていないので、連携を学ぶ良い機会かもしれない。
「先輩はどう思う?」
彼女の登場から、ずっとポケットに隠れていた先輩に問いかける。僕が良くても、相方が警戒する相手では一緒に戦えない。
もぞもぞとポケットから顔を出し、じっと少女を見つめ、耳をぴくぴく動かし、んーんーっと考えるように左右に揺れる。
「「可愛い」」
「ぴ!」
結論が出たようで、前足を片方上げて元気よく返事をした。いつも即決の先輩にしては珍しいが、とにかくお許しが出たようだ。
「じゃぁお願いします」
「よろしく! あたしの事は茉莉花(まつりか)って呼んで。それと、敬語は無しね」
「僕は旭太陽。太陽で良いよ。こっちは先輩」
「え、先輩って名前なの?」
紹介する度に聞かれることだけど、やっぱり変なのか……。でも、先輩が選んだんだよ……。
「ぴぃ!」
「先輩もよろしく」
僕と先輩と握手を交わし、受付へと向かった。
「それでは出発!」
上機嫌な彼女の合図で、二人と一匹は目的地へと足を進めた。
クエストを連名で受注してから、準備のために一度解散。
当初よりも奥地に行くことになり、二泊三日の行程となったため、お互いに食料などの準備を整えて、昼過ぎに集合した。
「荷物はそれだけ?」
僕の剣・盾・リュック・ウエストポーチという大荷物にくらべ、茉莉花の荷物は小さなウエストポーチ一つ。
「弓矢はしまってあるからね」
そういって手を前に出すと、フォンッという音と共に弓が出現した。
「武器って仕舞えたの!?」
カバンに仕舞えるのは魔力で出来た素材・アイテムだけだと思っていた。陽葵はそもそも武器を持たないし……。
「あたしのは特別製! 高濃度の魔力を固めて作ってあるから出し入れ出来るの。ギルド長お手製だから……あなたのもできるでしょ?」
僕の剣と盾をじっと見つめる。同じギルド長お手製という事は、僕のも高濃度魔力の塊なのか……。
いやいや、こちらの魔力の塊なら僕は持つことすらできないじゃないか。これはただの鉄の塊だ。たぶん。
ただ、それを説明すると異世界人であると言っているも同然になってしまう。
しかしそうか。元の街では当たり前になっていたから、説明していなかった。
「えっと、僕はメニューのカバン機能が使えないんだ」
ギルド長から貰った黒いカードを見せて説明する。
「受付で出してたのこれね!」
クエスト受注の際、受付ノームに手渡していたのを不思議に思っていたらしい。
「だから、素材採取の時は手間をかけちゃうかも。僕はリュックに入る分だけ貰うつもりだけど」
「気にしなくて良いわよ。それにあたしの容量ちょっと少ないの。狩ったもの全て持ち帰られるなら願ったりだわ」
肯定的な返事に安堵する。
「ちなみに、食料とかは……?」
「え? 現地調達以外にあるの?」
あぁ、陽葵タイプだった。いや、もしかしたらこの世界の人たちはこっちが常識なのかもしれない。
すれ違い冒険者たちで、僕ほど荷物を背負っている人は見たことが無いのだから。
「むしろ、あなたは荷物が多すぎじゃない?」
「色々心配で……」
ショップで購入した食品は怪しまれないように外に出しているし、すぐに食べられない時用に包帯なども準備している。三谷さんに貰ったコートのおかげで、防寒具はいらなくなったから、これでも少ない方だ。
「貸して」
「へ?」
ずいっと手を差し出され、間抜けな声を上げる。
「体力無いって聞いてるわよ。半日以上歩くのに、すぐへばられちゃ困るわ」
その通りだ。
ショップで様々なものが揃えられるようになって調子に乗ってしまった。一人や陽葵と一緒なら収納できるとは言え、今は違う。
「お願いします……」
自分よりも小さな女の子に運ばせるなんて……と罪悪感にかられるが、この世界では僕以上に軟弱な人はいない。情けない話だが、素直に頼ることにした。
結果、荷物を持ってもらって大正解であった。
目的地に着くまで当然様々なモンスターに出くわすわけで、戦闘しながらの行進となる。
森の中を歩くだけでも体力が奪われるのに、戦闘しながらなんてすぐに体力が底を尽きてしまう。ここで慣れない荷物を抱えながらだったら、一時間も持たなかっただろう。
とは言っても、途中からしびれを切らした茉莉花に、「遅い!」とお姫様抱っこをされてしまうのだけど。
陽葵のジェットコースターと違い、丁寧に運んでくれているのが恥ずかしさを増幅させ、ツーッと目から涙がこぼれる。
「これ美味しいわね!」
その夜、焚火の前でインスタントのスープを飲んだ少女は目を輝かせる。
美味しい美味しいと飲む茉莉花の姿に、二人分買っといて良かったと思う。
疲労回復に効くアイテムだが、この世界の人間にはただの美味しい食べ物らしい。
「良かった。それにしても、僕の持ってきた荷物が役に立たなくてごめん……」
寒い夜には温かいスープが飲みたい。その思いで用意した鍋とお水は出番無く鞄に仕舞われている。
「そんなもの持ってきてたことに驚きだわ」
茉莉花の手にかかれば、カップにお湯を注ぐのは何てことなかった。
外部魔力のない陽葵と、そもそも魔法が使えない僕とでは野営の質が段違いの様だ。
「このお肉も美味しいね」
先ほど討伐したホーンボアのお肉を、串刺しにし塩を振って焼いたものをむしりと食べる。
僕が最初に討伐したモンスター。あの時は一体倒すだけでも命がけだったが、今では数秒で片が付く。
茉莉花のおかげで、目的地はすぐそこである。
「ごめんけど、見張りよろしくね」
「ぴぃ!」
僕らが寝ている間の見張りを託すと、先輩は頼もしい返事を返してくれる。
コートにくるまり、ポーチを枕にして寝転ぶ。このコートは本当に暖かい。
(ありがとうございます)
三谷さんご夫婦と、作ってくれた職人さんに感謝した。
モンスター除けの薬草をくべた焚火の向こう側では、茉莉花が木に寄りかかり寝ている。
道中、お互いのことを色々話したが、彼女が年齢以上に大人びているのが分かった。
年は僕の二つ下で十五歳。
幼いころから魔力操作が得意で、周囲の反対を押し切って冒険者になったそうだ。集中力があり頭の回転も速い。手先の器用さも相まって、弓での後方支援は天職らしい。
家のことについては何も言わないが、所々に感じられる上品さから、良い所のお嬢様なのが伺える。
冒険者になって五年。
歴代二番目の速さでBランクに上り詰めた実力は確かなようで、王都では一目置かれる存在らしい。
そんな有名人なら、他の人と組んだ方が良いと思うのだが、どうやら目的は他にあるようだ。
会話の中で時折、何かを聞きたそうにしているが、何かと聞いても口ごもるばかり。まだ時間はあるし、無理に聞くのは止めておこう。
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