169 / 214
第五章
26 越賀羽side
しおりを挟む
メールを送り、椎名に視線を戻す。椎名の手が自身のポケットに触れた。スマホでも入っているのだろうか。逃げなよ。促す越の内心に反し、椎名は諦めたように手を下ろす。
くつりと喉が鳴る。
そうか。諦めるのか。写真を一枚チラつかされた、ただそれだけで折れてしまうのか。愉快な気持ちが奥底から湧き上がるのを自覚し――、越は顔を歪めた。
思い悩むように目を瞑る椎名は、祈りを捧げる聖人のように越の目に映った。ああ、と嘆息する。今から俺はこの聖人を汚すのだ。
逃げてほしい。逃げないでほしい。背反した気持ちでぐちゃぐちゃだった。
椎名由を追い詰めろと命じられたのは夏休み中のこと。腰を掴み気怠そうに告げた彼の目は、ここではないどこか遠くを見ていた。珍しく爛々と輝きを見せたその瞳が、心底憎いと思った。考え事に返事の遅れた越が不愉快だったのか。彼が乱暴に腰を打ち付ける。人形を相手にしているかのような扱いにも関わらず、越の体は快感を拾う。あんと高い声で喘ぐ自分の汚らわしさに、何かが死んでいくのを感じた。
「聞いてんのかよ、なぁ」
「ひっ、あッ、聞いてますっ」
ガツガツと中が抉られる。背中が仰け反る。快感を逃がそうとする越を、彼は容赦なく引き寄せた。
「追い詰めて追い詰めて絶望した由に優しくしたらさぁ! アイツは俺を見るのかなぁ、見るよなぁ!? いや、いっそぐちゃぐちゃに壊して、手元に縛り付けるのはどうだろう! タバコの煙で肺が真っ黒になって体がボロボロに崩れ落ちるまでキスをして、中が擦った跡で爛れて溶け始めるまで俺のものになったらさぁ、最高だよなァオイ!」
「やっ、ぁあああッ、まっ、ひァっ。ぁッ、」
びくびくと腰から下が痙攣してもなお中を穿つ凶器は止まらない。頭が反れ、開きっぱなしの口からはだらだらと唾液が漏れた。涙が伝う。悲しくて泣いているのか、許容量を超えた快感に泣かされているのか、もはや自分でも分からない。
悲鳴のような喘ぎ声に彼は顔を顰める。バシンと頬を打たれた。
「うるさい」
「ひゃ、あ、あ、あっ、ごめっ、~~~~ッ?!」
自分の快感だけを追う身勝手な動きに、慣らされた体はあえなく何度目かの絶頂を迎える。白濁を吐き出すと彼の顔が不愉快そうに歪められた。
「チッ、汚れた。しかもうるせぇし」
ちょっと黙れよ。
オモチャで遊ぶかのような気軽さで首を掴まれる。ひゅ、と呼気が漏れる。死ぬ、死んでしまう。
苦しさに視界が霞む。目の前の彼が、薄らとした視界で自分に微笑むのが見えた。優しげな笑みに初対面の頃が蘇る。最初の頃はその微笑み通りに優しかった。それが変わったのはいつからだったか。
懐かしい表情は、温もりに似つかわしくない言葉を吐き出す。
「お前、こんなのでもイっちゃうのな」
声が嘲る。蔑む声に自身の体を見下ろす。ガクガクと痙攣を続ける体は、自分がイきつづけていることを示していた。不意に泣きそうになり、目を伏せる。目を伏せてもなお彼の嘲笑は続く。
「お前の親父も馬鹿だよなァ。ヤクザに借金拵えて息子売り飛ばしてはした金もらって? お前のウリ、一回二千円だぜ、二千円。はっはははひっ、ひひひ!」
耳元に彼の口が寄せられる。
「越くん、もう女の子なんて抱けないね」
初めて会った時さながらの清廉さが越を詰る。ア、とか細い声を上げて越は目を見開いた。確かに絶望を感じた筈だったのに、
「ほら、こんなんでもイっちゃうじゃん。ど淫乱」
びくり。体が震える。自分の意識と乖離してあっさり快楽に手折られる体に胸が詰まる。頭の中がチカチカする。酸素が足りていないからか。それすらも気持ちがいいのか。首から手が外れる。空気が流れ込む。げほげほと咳き込みながらも体は絶頂する。つらい、苦しい。痛いのは嫌だ。訴える内心に反し体は全てを快楽に変換する。
荒い呼吸を繰り返す越を視界に入れもせず、彼はくつりと笑う。楽しげな笑みはすでに越に向けられていなかった。
「ああ、楽しみだなぁ。あの顔が歪んで、泣いて、叫んだら最高に楽しい。余計なことしかしやがらねぇクソガキもたまにはいい仕事をする。最高だッ。はは、ふっ、ははは! ――綺麗なものが自分のために損なわれるのは気分がいい」
いっそ。
狂ったように笑い出す彼に越は思う。
いっそ……。
ぴたりと笑い声を止め、彼が振り返る。にこりと人好きのしそうな表情で、彼は口を開いた。
「お前は汚いから貶めたとこで楽しくもなんともないけど。この役立たず」
いっそ、甲斐樹が自分を愛してくれていたら全てを許せたのに。
憎い憎いと吐き出し続けながら、願うのは真逆のこと。
正当な理由がほしかった。
自分が貶められるのを仕方ないと諦められるだけの理由が。
椎名が目を開く。先程までとは明らかに様子の違う彼に、汚してしまったと思った。自分が、汚したのだ。
高揚と絶望の入り交じった気持ちが越の胸中に去来する。もう訳が分からなかった。目の前の聖人が自分と同じように貶められればいいと思ったのは確かだ。だが同時に逃げてほしいとも思うのだ。彼を貶めれば最後、甲斐の言うとおりただの汚い存在へと成り下がってしまう。否、墜ちた場所から戻れなくなるとでも言うべきか。
――アイツは俺を見るのかなァ。
最中に自分の恋を語る、最悪な声。望んでもいない快楽と苦痛を人に与えながら、どこまでもその瞳には映らない。
なんで。なんでかなぁ。
俺を好きだと。ただ一言そう言ってくれたら諦められる。
思い、越はハッと笑う。自嘲を含んだそれはどこか甲斐の笑い方に似ていた。
くつりと喉が鳴る。
そうか。諦めるのか。写真を一枚チラつかされた、ただそれだけで折れてしまうのか。愉快な気持ちが奥底から湧き上がるのを自覚し――、越は顔を歪めた。
思い悩むように目を瞑る椎名は、祈りを捧げる聖人のように越の目に映った。ああ、と嘆息する。今から俺はこの聖人を汚すのだ。
逃げてほしい。逃げないでほしい。背反した気持ちでぐちゃぐちゃだった。
椎名由を追い詰めろと命じられたのは夏休み中のこと。腰を掴み気怠そうに告げた彼の目は、ここではないどこか遠くを見ていた。珍しく爛々と輝きを見せたその瞳が、心底憎いと思った。考え事に返事の遅れた越が不愉快だったのか。彼が乱暴に腰を打ち付ける。人形を相手にしているかのような扱いにも関わらず、越の体は快感を拾う。あんと高い声で喘ぐ自分の汚らわしさに、何かが死んでいくのを感じた。
「聞いてんのかよ、なぁ」
「ひっ、あッ、聞いてますっ」
ガツガツと中が抉られる。背中が仰け反る。快感を逃がそうとする越を、彼は容赦なく引き寄せた。
「追い詰めて追い詰めて絶望した由に優しくしたらさぁ! アイツは俺を見るのかなぁ、見るよなぁ!? いや、いっそぐちゃぐちゃに壊して、手元に縛り付けるのはどうだろう! タバコの煙で肺が真っ黒になって体がボロボロに崩れ落ちるまでキスをして、中が擦った跡で爛れて溶け始めるまで俺のものになったらさぁ、最高だよなァオイ!」
「やっ、ぁあああッ、まっ、ひァっ。ぁッ、」
びくびくと腰から下が痙攣してもなお中を穿つ凶器は止まらない。頭が反れ、開きっぱなしの口からはだらだらと唾液が漏れた。涙が伝う。悲しくて泣いているのか、許容量を超えた快感に泣かされているのか、もはや自分でも分からない。
悲鳴のような喘ぎ声に彼は顔を顰める。バシンと頬を打たれた。
「うるさい」
「ひゃ、あ、あ、あっ、ごめっ、~~~~ッ?!」
自分の快感だけを追う身勝手な動きに、慣らされた体はあえなく何度目かの絶頂を迎える。白濁を吐き出すと彼の顔が不愉快そうに歪められた。
「チッ、汚れた。しかもうるせぇし」
ちょっと黙れよ。
オモチャで遊ぶかのような気軽さで首を掴まれる。ひゅ、と呼気が漏れる。死ぬ、死んでしまう。
苦しさに視界が霞む。目の前の彼が、薄らとした視界で自分に微笑むのが見えた。優しげな笑みに初対面の頃が蘇る。最初の頃はその微笑み通りに優しかった。それが変わったのはいつからだったか。
懐かしい表情は、温もりに似つかわしくない言葉を吐き出す。
「お前、こんなのでもイっちゃうのな」
声が嘲る。蔑む声に自身の体を見下ろす。ガクガクと痙攣を続ける体は、自分がイきつづけていることを示していた。不意に泣きそうになり、目を伏せる。目を伏せてもなお彼の嘲笑は続く。
「お前の親父も馬鹿だよなァ。ヤクザに借金拵えて息子売り飛ばしてはした金もらって? お前のウリ、一回二千円だぜ、二千円。はっはははひっ、ひひひ!」
耳元に彼の口が寄せられる。
「越くん、もう女の子なんて抱けないね」
初めて会った時さながらの清廉さが越を詰る。ア、とか細い声を上げて越は目を見開いた。確かに絶望を感じた筈だったのに、
「ほら、こんなんでもイっちゃうじゃん。ど淫乱」
びくり。体が震える。自分の意識と乖離してあっさり快楽に手折られる体に胸が詰まる。頭の中がチカチカする。酸素が足りていないからか。それすらも気持ちがいいのか。首から手が外れる。空気が流れ込む。げほげほと咳き込みながらも体は絶頂する。つらい、苦しい。痛いのは嫌だ。訴える内心に反し体は全てを快楽に変換する。
荒い呼吸を繰り返す越を視界に入れもせず、彼はくつりと笑う。楽しげな笑みはすでに越に向けられていなかった。
「ああ、楽しみだなぁ。あの顔が歪んで、泣いて、叫んだら最高に楽しい。余計なことしかしやがらねぇクソガキもたまにはいい仕事をする。最高だッ。はは、ふっ、ははは! ――綺麗なものが自分のために損なわれるのは気分がいい」
いっそ。
狂ったように笑い出す彼に越は思う。
いっそ……。
ぴたりと笑い声を止め、彼が振り返る。にこりと人好きのしそうな表情で、彼は口を開いた。
「お前は汚いから貶めたとこで楽しくもなんともないけど。この役立たず」
いっそ、甲斐樹が自分を愛してくれていたら全てを許せたのに。
憎い憎いと吐き出し続けながら、願うのは真逆のこと。
正当な理由がほしかった。
自分が貶められるのを仕方ないと諦められるだけの理由が。
椎名が目を開く。先程までとは明らかに様子の違う彼に、汚してしまったと思った。自分が、汚したのだ。
高揚と絶望の入り交じった気持ちが越の胸中に去来する。もう訳が分からなかった。目の前の聖人が自分と同じように貶められればいいと思ったのは確かだ。だが同時に逃げてほしいとも思うのだ。彼を貶めれば最後、甲斐の言うとおりただの汚い存在へと成り下がってしまう。否、墜ちた場所から戻れなくなるとでも言うべきか。
――アイツは俺を見るのかなァ。
最中に自分の恋を語る、最悪な声。望んでもいない快楽と苦痛を人に与えながら、どこまでもその瞳には映らない。
なんで。なんでかなぁ。
俺を好きだと。ただ一言そう言ってくれたら諦められる。
思い、越はハッと笑う。自嘲を含んだそれはどこか甲斐の笑い方に似ていた。
44
あなたにおすすめの小説
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
孤独な蝶は仮面を被る
緋影 ナヅキ
BL
とある街の山の中に建っている、小中高一貫である全寮制男子校、華織学園(かしきのがくえん)─通称:“王道学園”。
全学園生徒の憧れの的である生徒会役員は、全員容姿や頭脳が飛び抜けて良く、運動力や芸術力等の他の能力にも優れていた。また、とても個性豊かであったが、役員仲は比較的良好だった。
さて、そんな生徒会役員のうちの1人である、会計の水無月真琴。
彼は己の本質を隠しながらも、他のメンバーと各々仕事をこなし、極々平穏に、楽しく日々を過ごしていた。
あの日、例の不思議な転入生が来るまでは…
ーーーーーーーーー
作者は執筆初心者なので、おかしくなったりするかもしれませんが、温かく見守って(?)くれると嬉しいです。
学生のため、ストック残量状況によっては土曜更新が出来ないことがあるかもしれません。ご了承下さい。
所々シリアス&コメディ(?)風味有り
*表紙は、我が妹である あくす(Twitter名) に描いてもらった真琴です。かわいい
*多少内容を修正しました。2023/07/05
*お気に入り数200突破!!有難う御座います!2023/08/25
*エブリスタでも投稿し始めました。アルファポリス先行です。2023/03/20
先輩たちの心の声に翻弄されています!
七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。
ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。
最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。
乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。
見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。
****
三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。
ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
BLゲームの悪役に転生したら攻略対象者が全員ヒロインに洗脳されてた
さ
BL
主人公のレオンは、幼少期に前世の記憶を思い出し、この世界がBLゲームで、自身は断罪される悪役だと気づく。
断罪を回避するため、極力攻略対象者たちと関わらないように生きてきた。
ーーそれなのに。
婚約者に婚約は破棄され、
気づけば断罪寸前の立場に。
しかも理由もわからないまま、
何もしていないはずの攻略対象者達に嫌悪を向けられてーー。
※最終的にハッピーエンド
※愛され悪役令息
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる