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第十五話 ごめんね、にいちゃん
部屋を飛び出した僕は、そのまま玄関に行き、靴を履いて外に向かった。
わぁわぁ泣きながら全速力で走る。
目的地は決めていない。とにかく僕は、少しでもにいちゃんと牧田さんがいる空間から離れたかったのだ。
にいちゃんのバカ! バカバカバカ!!
声に出して言いたくなり、僕は走りながら叫んだ。
「にいちゃんのバカァ! にいちゃんなんか大っ嫌いだぁーー!!」
犬の散歩をしていた女の人がギョッとしてこちらを振り返ったが、僕は構わず走り続けたのだった。
※※※※
全力疾走して疲れた僕は、途中にあった公園で足を止めた。
辺りはもう薄暗い。誰もいないのをいいことに、僕はブランコに座って息を整えていた。
いつの間には涙は止まっていた。呼吸が整ってくるのと同時に、沸騰した頭がだんだん冷えてくる。
「……」
うわぁ……。
よく考えたら、僕最低だな……。
せっかく牧田さんがハンバーグを作ってくれたのに、食べる直前に一人でキレて外に飛び出してしまった。牧田さん、僕がキレてる時ぽかーんとしてたな……。次学校で会ったらどんな顔をすればいいんだろう……。
それににいちゃん……。
いきなりキレられて驚いただろうな。にいちゃんはなにも悪くない。ただ牧田さんが頭を撫でてと言ったから、言われた通りに撫でただけなのに。
それなのにいきなり僕にキモいブラコン発言をされて、戸惑っただろうな……。
なんであんなこと言っちゃったんだろう……。
弟にあんなこと言われたら気持ち悪いよ。僕がにいちゃんなら、絶対距離を置きたくなる。
あぁ……どうしよう。
もうにいちゃんは、僕に話しかけるどころか目も合わせてくれないかもしれない……。
「どうしようーー!!」
僕は自分がやらかしたことを恥じて、頭を抱えてうつむいたのだった。
※※※※
辺りはどんどん暗くなってゆく。
おうちに帰りたいけど帰れない。
この先どう行動していいのか分からず、僕は途方に暮れていた。
――そんな時だった。
「りっくん!!!」
「!」
突然にいちゃんの声が聞こえたような気がして、僕は勢いよく顔を上げた。
前方を見ると、息を切らしながらにいちゃんが公園に入ってくるところだった。
にいちゃんはブランコの前まで来ると、急いで僕の腕を掴んだ。
「ハァ……! ハァ……! やっと見つけた。もう逃さないよ、りっくん!!」
「にいちゃん……」
にいちゃん……。僕のこと追いかけてきてくれたんだ。
それだけでジーンと胸が熱くなってきて、僕の目は潤んだ。
にいちゃんは汗だくで、ゼィハァ言いながら僕を見つめる。
「……って言うか、りっくん足速すぎない!? すぐに追いかけたんだけど、あまりにも速いから見失っちゃったよ! やばいと思って探し回って、やっと見つけた!」
「あ……。僕、小さい時からかけっことか得意だったから……」
「おっとりした顔に似合わず活発だね! さすがりっくん!」
「……」
にいちゃん、僕のこと追いかけてきてくれただけじゃなく、探し回ってくれたんだ……。
嬉しい。ありがとう、にいちゃん。
僕、謝らなきゃ。おっさんって言っちゃったこととか、今日のこととか、全部全部謝らなきゃ……。
僕は目にいっぱい涙を溜めながら、にいちゃんを見つめた。
「……ごめんなさい……」
「え?」
「にいちゃん、ごめんなさい。本当はおっさんなんて思ってないよ? 僕にいちゃんのこと、世界で一番カッコいいと思ってるんだ。それに今日のこともごめんなさい。せっかく楽しくやってたのに、僕が台無しにしちゃった……」
「……」
「あとね、気持ち悪いこと言ってごめんなさい。あんなこと言うつもりもなかったんだ。だけど僕、にいちゃんが牧田さんの頭撫でてるの見たら、カッとなっちゃって……」
僕は涙をこらえながら、縋るようににいちゃんを見つめた。
「にいちゃん……。僕のこと、嫌いにならないで……」
にいちゃんは僕の言葉を聞いて、呆然と立ち尽くしていた。だが、突然わなわなと震え出し、口元を手で抑えた。
「……か、可愛すぎて震える……」
「え?」
いきなり可愛いと言われて混乱した僕は、涙ぐんだ目をパチクリさせた。すると、にいちゃんがそっと僕を抱きしめてきた。
「嫌いになんかならないよ。なるわけ無いじゃないか……」
「……!」
その言葉を聞いて安堵した僕は、涙を堪え切れず再びわぁ……と泣き出したのだった。
わぁわぁ泣きながら全速力で走る。
目的地は決めていない。とにかく僕は、少しでもにいちゃんと牧田さんがいる空間から離れたかったのだ。
にいちゃんのバカ! バカバカバカ!!
声に出して言いたくなり、僕は走りながら叫んだ。
「にいちゃんのバカァ! にいちゃんなんか大っ嫌いだぁーー!!」
犬の散歩をしていた女の人がギョッとしてこちらを振り返ったが、僕は構わず走り続けたのだった。
※※※※
全力疾走して疲れた僕は、途中にあった公園で足を止めた。
辺りはもう薄暗い。誰もいないのをいいことに、僕はブランコに座って息を整えていた。
いつの間には涙は止まっていた。呼吸が整ってくるのと同時に、沸騰した頭がだんだん冷えてくる。
「……」
うわぁ……。
よく考えたら、僕最低だな……。
せっかく牧田さんがハンバーグを作ってくれたのに、食べる直前に一人でキレて外に飛び出してしまった。牧田さん、僕がキレてる時ぽかーんとしてたな……。次学校で会ったらどんな顔をすればいいんだろう……。
それににいちゃん……。
いきなりキレられて驚いただろうな。にいちゃんはなにも悪くない。ただ牧田さんが頭を撫でてと言ったから、言われた通りに撫でただけなのに。
それなのにいきなり僕にキモいブラコン発言をされて、戸惑っただろうな……。
なんであんなこと言っちゃったんだろう……。
弟にあんなこと言われたら気持ち悪いよ。僕がにいちゃんなら、絶対距離を置きたくなる。
あぁ……どうしよう。
もうにいちゃんは、僕に話しかけるどころか目も合わせてくれないかもしれない……。
「どうしようーー!!」
僕は自分がやらかしたことを恥じて、頭を抱えてうつむいたのだった。
※※※※
辺りはどんどん暗くなってゆく。
おうちに帰りたいけど帰れない。
この先どう行動していいのか分からず、僕は途方に暮れていた。
――そんな時だった。
「りっくん!!!」
「!」
突然にいちゃんの声が聞こえたような気がして、僕は勢いよく顔を上げた。
前方を見ると、息を切らしながらにいちゃんが公園に入ってくるところだった。
にいちゃんはブランコの前まで来ると、急いで僕の腕を掴んだ。
「ハァ……! ハァ……! やっと見つけた。もう逃さないよ、りっくん!!」
「にいちゃん……」
にいちゃん……。僕のこと追いかけてきてくれたんだ。
それだけでジーンと胸が熱くなってきて、僕の目は潤んだ。
にいちゃんは汗だくで、ゼィハァ言いながら僕を見つめる。
「……って言うか、りっくん足速すぎない!? すぐに追いかけたんだけど、あまりにも速いから見失っちゃったよ! やばいと思って探し回って、やっと見つけた!」
「あ……。僕、小さい時からかけっことか得意だったから……」
「おっとりした顔に似合わず活発だね! さすがりっくん!」
「……」
にいちゃん、僕のこと追いかけてきてくれただけじゃなく、探し回ってくれたんだ……。
嬉しい。ありがとう、にいちゃん。
僕、謝らなきゃ。おっさんって言っちゃったこととか、今日のこととか、全部全部謝らなきゃ……。
僕は目にいっぱい涙を溜めながら、にいちゃんを見つめた。
「……ごめんなさい……」
「え?」
「にいちゃん、ごめんなさい。本当はおっさんなんて思ってないよ? 僕にいちゃんのこと、世界で一番カッコいいと思ってるんだ。それに今日のこともごめんなさい。せっかく楽しくやってたのに、僕が台無しにしちゃった……」
「……」
「あとね、気持ち悪いこと言ってごめんなさい。あんなこと言うつもりもなかったんだ。だけど僕、にいちゃんが牧田さんの頭撫でてるの見たら、カッとなっちゃって……」
僕は涙をこらえながら、縋るようににいちゃんを見つめた。
「にいちゃん……。僕のこと、嫌いにならないで……」
にいちゃんは僕の言葉を聞いて、呆然と立ち尽くしていた。だが、突然わなわなと震え出し、口元を手で抑えた。
「……か、可愛すぎて震える……」
「え?」
いきなり可愛いと言われて混乱した僕は、涙ぐんだ目をパチクリさせた。すると、にいちゃんがそっと僕を抱きしめてきた。
「嫌いになんかならないよ。なるわけ無いじゃないか……」
「……!」
その言葉を聞いて安堵した僕は、涙を堪え切れず再びわぁ……と泣き出したのだった。
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