【完結】みにくい魔王は恋をする〜パンツ一丁で召喚されたダメ男は、魔王の救世主だった〜

チョロケロ

文字の大きさ
1 / 20

第一話 異界へと続く扉

しおりを挟む
 私は魔界を統べる魔王だ。
 
 だが、豚とコウモリを混ぜ合わせたようなみにくい顔をしている。
 私は魔王なので、面と向かってみにくいと罵る者はいない。だが、かげではバケモノ魔王と呼ばれていることを知っている。
 鏡を見るたびに死んでしまいたい気分になる。そしてこう思うのだ……。

――人間さえ……人間さえいれば……!
 
 実はこの顔のみにくさには訳があるのだ。
 私はインキュバスだ。インキュバスは人間の生気を性行為によって食する。だが、この国には人間がいないのだ。そのため魔族と性行為をして生気を食べる。だが、やはり魔族では波長が合わないのかうまく吸収できず、人型になれないのだ。人型になれないのなら、獣型でいるしかない。
 つまり、今の姿はインキュバスの獣型の姿なのだ。

 こんなみにくい姿で魔王などやりたくない。
 私は自分の顔に悲観して、いつも魔王城に閉じこもっていた。
 そんな私を気の毒に思っていたのが側近のミストだ。
 ミストは私の顔をなんとかしてやりたいと思い、古い魔導書を読み漁った。

 それで気付いたのだ。
 魔界に人間がいないのなら、人間界から連れてくればいいのではないか――と。

 それからミストは召喚についての魔導書を読み漁った。そしてついに目的の本を見つけたのだ。
 ミストはその本を隅から隅までまで熟読した。それから召喚のやり方を理解し、更には極め、嬉々として私の前にひざまずいた。

「魔王様。これから人間を召喚します」
「召喚……。そんなことが出来るのか?」
「はい。方法は頭に入っています。人間を召喚し、魔王様に献上します。魔王様はその者の生気を食してください。そうすれば、魔王様は人型になれます。人型になれれば、魔王様のうれいも晴れるでしょう」
「……そうか。ならば、やってみよ」
「はっ!」

 ミストは立ち上がり、私に背を向けた。
 それからなにやら呪文のようなものを唱える。すると、ミストの目の前に重厚な扉が出現した。
 私たちのやり取りを見ていた部下たちが、「おぉっ!」と感嘆の声を上げる。

「この扉は人間界に繋がっています。今から私がこの扉の向こうに行き、人間をさらって参ります」

 人間を攫うなど、悪いことだ。だが、藁にもすがる思いだった私は、その行動を止めることは出来なかった。

「分かった……。あまり手荒なことはするなよ?」
「御意!」

 そんな言葉と共に、ミストは扉を開こうとした。
 だが、ミストが開く前に、ギィって音を立てて扉が開いたのだ。
 どうやらこちらから出向く前に、人間が先に扉を見つけて開けてしまったようなのだ。
 
 扉から出てきたのは人間の男だった。
 男は黒い短髪に黒い瞳の背の高い男だ。目鼻立ちがハッキリしていて、女にモテそうな容姿をしていた。

 私たちはこの異常事態に息を呑んだ。
 男はなぜかパンツ一丁だ。こちらに気が付き目を丸くする。
 
「あれ? 便所どこ?」
 
 キョロキョロ辺りを見回して、私と目が合う。すると、男はギョッとして後ろに飛び退いた。
 
「うぉー!! バケモノがいる! なんだここ!? 俺は便所行こうと思っただけなのに! これは夢か!?」
 
 男の声にハッと我に返った部下たちは、急いで男を羽交締めにする。
 
「なんだテメーら! 離せよ!」
 
 暴れる男の前に、ミストが急いで駆け寄る。
 
「落ち着いてください。どうか私たちの話を聞いてください!」
「誰だテメーは!」
「私は魔王様の側近のミストと申します。それと、混乱するといけないので先に申しておきますが、ここは魔界です」
「はぁ!?」
「あなたにお願いがあってここにお呼びしました」
「お願い!?」

 暴れても拘束が解けないと悟った男は、諦めて動きを止めた。それからキッとミストを睨む。
 
「俺の命の保証はあるのか?」
「もちろんです。あなたには傷一つつけません」
「じゃあ……まぁ、聞いてやる」

 ほぉ。肝の据わった男だな。私なら混乱して叫び出しそうになるだろう。
 
 それからミストはなぜ男を魔界に呼んだのか説明した。
 男はふむふむとうなずく。
 
「つまり、そこのバケモノに人間の生気を与えたいのか」

 物分かりが良い。地頭がいいのだろう。
 そんなことを思っていたら、男と目が合った。私は慌てて目を逸らす。こんなみにくいバケモノに見つめられたら不快に感じると思ったからだ。
 そんな私と男を交互に見ながら、ミストはうなずいた。
 
「そうでございます」
 
 絶対断るだろうな……と私は思った。
 なぜなら生気を与えると言うことは、性行為をすることを意味するからだ。
 この男は、こんなみにくい私を抱いてくれるわけがない。
 こんなバケモノ気持ち悪い! と罵られるだけだ。
 答えを聞くのが怖くて、私はうつむいた。
 だが、男は予想外の言葉を口にした。
 
「別にいいぜ」
「!?」

 私はうつむいていた顔を上げ、驚愕の眼差しで男を見つめた。
 
「ただし、褒美はたんまりくれるんだろうなぁ?」
 
 男はゲヘゲヘ下劣な笑みを浮かべながら、そんなことを言った。
 ミストもまさか了承するとは思わず呆然としていたが、ハッと我に返りコクコクとうなずいた。
 
「もちろんです! なにがお望みですか?」
「金!……と言いたいところだけど、魔界の金なんか貰ってもただの紙切れだ。宝石だ! 宝石をよこせ!! 山のような宝石を所望する!」
 
 そんなものでいいのか……? 男を除く一同は驚愕した。
 
「いいでしょう。山のような宝石をご用意します! それならば、このみにくい……じゃなくて個性的なお顔をした魔王様を抱いてくださるのですね?」
「いいぞー。そいつオスだよな? オスはケツの穴使うんだろ? 余裕余裕!」
 
 なんという男気のある男だ。
 魔界の屈強な兵士ですら、私を抱くのは嫌がるのに。

 私は感動して、涙をこぼしそうになるのを必死にこらえたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

悪役令嬢の兄に転生!破滅フラグ回避でスローライフを目指すはずが、氷の騎士に溺愛されてます

水凪しおん
BL
三十代半ばの平凡な会社員だった俺は、ある日、乙女ゲーム『君と紡ぐ光の協奏曲』の世界に転生した。 しかも、最推しの悪役令嬢リリアナの兄、アシェルとして。 このままでは妹は断罪され、一家は没落、俺は処刑される運命だ。 そんな未来は絶対に回避しなくてはならない。 俺の夢は、穏やかなスローライフを送ること。ゲームの知識を駆使して妹を心優しい少女に育て上げ、次々と破滅フラグをへし折っていく。 順調に進むスローライフ計画だったが、関わると面倒な攻略対象、「氷の騎士」サイラスになぜか興味を持たれてしまった。 家庭菜園にまで現れる彼に困惑する俺。 だがそれはやがて、国を揺るがす陰謀と、甘く激しい恋の始まりを告げる序曲に過ぎなかった――。

【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は? 最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか? 人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。 よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。 ハッピーエンド確定 ※は性的描写あり 【完結】2021/10/31 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ 2021/10/03  エブリスタ、BLカテゴリー 1位

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

処理中です...