大好きな親友に嫌いって言われた。もう生きるのがツライ

チョロケロ

文字の大きさ
1 / 5

第一話 大嫌い

しおりを挟む
 ここは魔族と人間が仲良く暮らす世界。

 そんな世界で、僕は昔から魔族に憧れていた。
 だって魔族って力も強いし頭も良いしカッコいいんだもん。なにより僕が憧れているのは長生きなとこだ。
 人間は数十年で死んでしまう。それに比べて魔族は数百年生きられる。
 長生きしたらそれだけ色々な食べ物が食べられるし経験もできる。
 だから人間より魔族の方がずっと楽しいと思うのだ。 僕も魔族に生まれたかったなぁ。まぁ、人間にもいいところはいっぱいあるんだけどね。
 ないものねだりをしても仕方がない。
 僕は人間に生まれたのだから、人間らしく短い生を精一杯生きていこう。最近はそう思うことにした。

 そんなある日のこと。

 今日も僕は友達の家に向かっていた。
 友達の名前はユーベラスと言う。
 なんと魔族だ。しかも吸血鬼!!
 吸血鬼は美形が多いと聞く。もちろんユーベラスも美形だ。しかも、超がつく美形なのだ。
 闇夜に溶け込む黒髪と、宝石のように輝く赤い瞳が美しい。目は切れ長で、鼻筋は通っている。酷薄そうな薄い唇をしているが、本当はとても優しいのを知っている。
 僕はユーベラスが大好きだった。
 ユーベラスといると楽しい。長く生きているので僕の知らないことをたくさん教えてくれるし、短命な人間を馬鹿にしたりしない。
 性格も気が合う。この前は夜が明けるまでワインを飲みながら語り明かしたものだ。
 ユーベラスは僕の親友と言っていい。
 だから僕は仕事が終わると、ほぼ毎日ユーベラスの家に遊びに行っていた。
 ユーベラスも嫌がらずに快く出迎えてくれるので、僕は調子に乗っていた。

 そんなときだった。

 いつものように家に着いたので呼び鈴を鳴らすと、ユーベラスは不機嫌な表情で出迎えた。

「ペトロ……」
「ユーベラス。今夜も遊びにきたよ。また飲み明かそうよ」

 おみやげに持ってきたワインを見せたのだが、ユーベラスの不機嫌な表情は変わらない。
 僕はなぜユーベラスがこんな表情をするのか分からず戸惑った。

「ユーベラス……。もしかして、迷惑だった?」
「……。そうだな」

 僕の心が瞬時に冷たくなる。

「ご、ごめん。今日は帰るね。また今度遊ぼう」

 僕の言葉にユーベラスは、ハァ……とため息をついた。

「もう二度と来ないでくれ」
「!」

 なんでこんなことを言うのだろう? 僕はなにかユーベラスを怒らせるようなことを言ってしまったのだろうか?
 わけが分からないが、ユーベラスに拒絶されたのが悲しかった。

「なんでそんなこと言うの? 僕、なにかした?」

 震える声で問いかけると、ユーベラスは不機嫌そうな表情を崩さずに言った。

「毎日毎日家にやって来て迷惑だ。本当は、お前など大嫌いなんだよ。懐かれて鬱陶しい」
「!」

 ユーベラスの冷たい言葉に我慢していた涙がこぼれた。
 そうか……。本当は僕のこと、嫌いだったんだ。それなのに毎日家に行って嫌だったろうな……。
 ユーベラスに申し訳ないことをしてしまった。
 僕は涙を手でゴシゴシ拭うと、ニコッと笑った。
 無理に笑ったので変な顔だったと思うけど、これが僕の精一杯なのだ。

「そっか。今までごめんね。僕、調子に乗ってたみたい。もう来ないから安心して」

 僕の言葉を聞いて、なぜだかユーベラスはつらそうな表情をした。

「そうしてくれ……」

 それからユーベラスはドアを閉め、部屋に戻っていった。
 僕はしょんぼりしながら元来た道を戻る。

「ユーベラス……。本当にごめんね……」

 声に出すと寂しさと申し訳なさがあふれてきて、僕は泣きながら家に帰ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

神父様に捧げるセレナーデ

石月煤子
BL
「ところで、そろそろ厳重に閉じられたその足を開いてくれるか」 「足を開くのですか?」 「股開かないと始められないだろうが」 「そ、そうですね、その通りです」 「魔物狩りの報酬はお前自身、そうだろう?」 「…………」 ■俺様最強旅人×健気美人♂神父■

【連載版あり】「頭をなでてほしい」と、部下に要求された騎士団長の苦悩

ゆらり
BL
「頭をなでてほしい」と、人外レベルに強い無表情な新人騎士に要求されて、断り切れずに頭を撫で回したあげくに、深淵にはまり込んでしまう騎士団長のお話。リハビリ自家発電小説。一話完結です。 ※加筆修正が加えられています。投稿初日とは誤差があります。ご了承ください。

何故か男の俺が王子の閨係に選ばれてしまった

まんまる
BL
貧乏男爵家の次男アルザスは、ある日父親から呼ばれ、王太子の閨係に選ばれたと言われる。 なぜ男の自分が?と戸惑いながらも、覚悟を決めて殿下の元へ行く。 しかし、殿下はただベッドに横たわり何もしてこない。 殿下には何か思いがあるようで。 《何故か男の僕が王子の閨係に選ばれました》の攻×受が立場的に逆転したお話です。 登場人物、設定は全く違います。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

婚約破棄を提案したら優しかった婚約者に手篭めにされました

多崎リクト
BL
ケイは物心着く前からユキと婚約していたが、優しくて綺麗で人気者のユキと平凡な自分では釣り合わないのではないかとずっと考えていた。 ついに婚約破棄を申し出たところ、ユキに手篭めにされてしまう。 ケイはまだ、ユキがどれだけ自分に執着しているのか知らなかった。 攻め ユキ(23) 会社員。綺麗で性格も良くて完璧だと崇められていた人。ファンクラブも存在するらしい。 受け ケイ(18) 高校生。平凡でユキと自分は釣り合わないとずっと気にしていた。ユキのことが大好き。 pixiv、ムーンライトノベルズにも掲載中

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

処理中です...