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第一話 大嫌い
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ここは魔族と人間が仲良く暮らす世界。
そんな世界で、僕は昔から魔族に憧れていた。
だって魔族って力も強いし頭も良いしカッコいいんだもん。なにより僕が憧れているのは長生きなとこだ。
人間は数十年で死んでしまう。それに比べて魔族は数百年生きられる。
長生きしたらそれだけ色々な食べ物が食べられるし経験もできる。
だから人間より魔族の方がずっと楽しいと思うのだ。 僕も魔族に生まれたかったなぁ。まぁ、人間にもいいところはいっぱいあるんだけどね。
ないものねだりをしても仕方がない。
僕は人間に生まれたのだから、人間らしく短い生を精一杯生きていこう。最近はそう思うことにした。
そんなある日のこと。
今日も僕は友達の家に向かっていた。
友達の名前はユーベラスと言う。
なんと魔族だ。しかも吸血鬼!!
吸血鬼は美形が多いと聞く。もちろんユーベラスも美形だ。しかも、超がつく美形なのだ。
闇夜に溶け込む黒髪と、宝石のように輝く赤い瞳が美しい。目は切れ長で、鼻筋は通っている。酷薄そうな薄い唇をしているが、本当はとても優しいのを知っている。
僕はユーベラスが大好きだった。
ユーベラスといると楽しい。長く生きているので僕の知らないことをたくさん教えてくれるし、短命な人間を馬鹿にしたりしない。
性格も気が合う。この前は夜が明けるまでワインを飲みながら語り明かしたものだ。
ユーベラスは僕の親友と言っていい。
だから僕は仕事が終わると、ほぼ毎日ユーベラスの家に遊びに行っていた。
ユーベラスも嫌がらずに快く出迎えてくれるので、僕は調子に乗っていた。
そんなときだった。
いつものように家に着いたので呼び鈴を鳴らすと、ユーベラスは不機嫌な表情で出迎えた。
「ペトロ……」
「ユーベラス。今夜も遊びにきたよ。また飲み明かそうよ」
おみやげに持ってきたワインを見せたのだが、ユーベラスの不機嫌な表情は変わらない。
僕はなぜユーベラスがこんな表情をするのか分からず戸惑った。
「ユーベラス……。もしかして、迷惑だった?」
「……。そうだな」
僕の心が瞬時に冷たくなる。
「ご、ごめん。今日は帰るね。また今度遊ぼう」
僕の言葉にユーベラスは、ハァ……とため息をついた。
「もう二度と来ないでくれ」
「!」
なんでこんなことを言うのだろう? 僕はなにかユーベラスを怒らせるようなことを言ってしまったのだろうか?
わけが分からないが、ユーベラスに拒絶されたのが悲しかった。
「なんでそんなこと言うの? 僕、なにかした?」
震える声で問いかけると、ユーベラスは不機嫌そうな表情を崩さずに言った。
「毎日毎日家にやって来て迷惑だ。本当は、お前など大嫌いなんだよ。懐かれて鬱陶しい」
「!」
ユーベラスの冷たい言葉に我慢していた涙がこぼれた。
そうか……。本当は僕のこと、嫌いだったんだ。それなのに毎日家に行って嫌だったろうな……。
ユーベラスに申し訳ないことをしてしまった。
僕は涙を手でゴシゴシ拭うと、ニコッと笑った。
無理に笑ったので変な顔だったと思うけど、これが僕の精一杯なのだ。
「そっか。今までごめんね。僕、調子に乗ってたみたい。もう来ないから安心して」
僕の言葉を聞いて、なぜだかユーベラスはつらそうな表情をした。
「そうしてくれ……」
それからユーベラスはドアを閉め、部屋に戻っていった。
僕はしょんぼりしながら元来た道を戻る。
「ユーベラス……。本当にごめんね……」
声に出すと寂しさと申し訳なさがあふれてきて、僕は泣きながら家に帰ったのだった。
そんな世界で、僕は昔から魔族に憧れていた。
だって魔族って力も強いし頭も良いしカッコいいんだもん。なにより僕が憧れているのは長生きなとこだ。
人間は数十年で死んでしまう。それに比べて魔族は数百年生きられる。
長生きしたらそれだけ色々な食べ物が食べられるし経験もできる。
だから人間より魔族の方がずっと楽しいと思うのだ。 僕も魔族に生まれたかったなぁ。まぁ、人間にもいいところはいっぱいあるんだけどね。
ないものねだりをしても仕方がない。
僕は人間に生まれたのだから、人間らしく短い生を精一杯生きていこう。最近はそう思うことにした。
そんなある日のこと。
今日も僕は友達の家に向かっていた。
友達の名前はユーベラスと言う。
なんと魔族だ。しかも吸血鬼!!
吸血鬼は美形が多いと聞く。もちろんユーベラスも美形だ。しかも、超がつく美形なのだ。
闇夜に溶け込む黒髪と、宝石のように輝く赤い瞳が美しい。目は切れ長で、鼻筋は通っている。酷薄そうな薄い唇をしているが、本当はとても優しいのを知っている。
僕はユーベラスが大好きだった。
ユーベラスといると楽しい。長く生きているので僕の知らないことをたくさん教えてくれるし、短命な人間を馬鹿にしたりしない。
性格も気が合う。この前は夜が明けるまでワインを飲みながら語り明かしたものだ。
ユーベラスは僕の親友と言っていい。
だから僕は仕事が終わると、ほぼ毎日ユーベラスの家に遊びに行っていた。
ユーベラスも嫌がらずに快く出迎えてくれるので、僕は調子に乗っていた。
そんなときだった。
いつものように家に着いたので呼び鈴を鳴らすと、ユーベラスは不機嫌な表情で出迎えた。
「ペトロ……」
「ユーベラス。今夜も遊びにきたよ。また飲み明かそうよ」
おみやげに持ってきたワインを見せたのだが、ユーベラスの不機嫌な表情は変わらない。
僕はなぜユーベラスがこんな表情をするのか分からず戸惑った。
「ユーベラス……。もしかして、迷惑だった?」
「……。そうだな」
僕の心が瞬時に冷たくなる。
「ご、ごめん。今日は帰るね。また今度遊ぼう」
僕の言葉にユーベラスは、ハァ……とため息をついた。
「もう二度と来ないでくれ」
「!」
なんでこんなことを言うのだろう? 僕はなにかユーベラスを怒らせるようなことを言ってしまったのだろうか?
わけが分からないが、ユーベラスに拒絶されたのが悲しかった。
「なんでそんなこと言うの? 僕、なにかした?」
震える声で問いかけると、ユーベラスは不機嫌そうな表情を崩さずに言った。
「毎日毎日家にやって来て迷惑だ。本当は、お前など大嫌いなんだよ。懐かれて鬱陶しい」
「!」
ユーベラスの冷たい言葉に我慢していた涙がこぼれた。
そうか……。本当は僕のこと、嫌いだったんだ。それなのに毎日家に行って嫌だったろうな……。
ユーベラスに申し訳ないことをしてしまった。
僕は涙を手でゴシゴシ拭うと、ニコッと笑った。
無理に笑ったので変な顔だったと思うけど、これが僕の精一杯なのだ。
「そっか。今までごめんね。僕、調子に乗ってたみたい。もう来ないから安心して」
僕の言葉を聞いて、なぜだかユーベラスはつらそうな表情をした。
「そうしてくれ……」
それからユーベラスはドアを閉め、部屋に戻っていった。
僕はしょんぼりしながら元来た道を戻る。
「ユーベラス……。本当にごめんね……」
声に出すと寂しさと申し訳なさがあふれてきて、僕は泣きながら家に帰ったのだった。
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