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シグマス編 ~出会い~
いきなり墜落?
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少し先の未来を見る僕は、例え助かると分かっていても、危険にさらされれば恐怖もする…。
ほんの少し先の未来を信じるしかない…。
そして…。
初めて…大きな自分の未来の岐路に立つ。
***
イサは予定していた軍の飛行船には乗らず、同行していたシグマス国交連合軍の部隊とは別の、同じ目的地へ向かう貨物船に乗り込んだ。
搭乗直前になっての変更に、部隊長は顔を歪ませたが、イサの『先読み』がそう言うならと、別行動を許可してもらった。
僕の『先読み』は、危険を察知したり、何の為かは分からないが、『こっちへ行け』と促してくる。
そのお陰で、何度も命拾いをしているし、暴動に巻き込まれる事も避けることが出来た。
その為イサは、国の主要人物の護衛の、危険察知役として同行することが多かった。
イサ自信は、身体能力が特別に優れているわけではないが、自衛出来るくらいには鍛えられている。
今回も、搭乗直前に『この船ではない』と、イサの頭の中で誰かが言ったのだ。
だったらどの船に乗るのかと、イサは慌てて、本国シグマスへ飛び立つ飛行船を順番に回った。
旅客船は全て『この船ではない』と囁かれ、それなら貨物船?と、思い、順番に回って行ったら、唯一何も反応しない船が有った。
『この船に乗らなくてはないいけない』
イサはそう思って船主に確認を取ると、僕が乗るはずの軍の飛行船の後に出発するそうで、出発には間に合ったと言うことだ。
その貨物船は荷物の他に、時々、急ぎのお客を乗せたりもする為、狭い個室が二つ有り、イサは破格の料金を払って、その一室に乗せてもらうことになった。
それ以外にも旅費を節約するため、安い料金で貨物船の荷物置き場に乗る者達もいるようで、意外と荷物以外の貨物船の需要が有るようだ。
子供の頃から連合軍にいて、殆どお金を使わないイサに取っては、久しぶりの大きな出費だった。
イサは少ない荷物を持って貨物船に乗り、小さな個室の、ベッドだけの部屋の窓から外を眺めた。
見慣れた飛行船の滑走路…。
船がガタガタと動きだし、もうすぐ貨物船が出発する。
何が起こるのかわからない緊張と不安に刈られながら、貨物船は空へと旅立った。
疲れていたのか、イサは固いベッドに横たわり、いつの間にか眠っていた。
シルバーブルーの連合軍の制服を着たまま、靴も脱がずにゴロリと寝返りをうつ。
柔らかいクリーム色の髪がふわりと揺れる。
「…んっ…」
覚醒前の吐息…。
そして突然の警報にイサは飛び起きた。
船内に響き渡る、耳を塞ぎたくなるほどのサイレン。
連合軍の訓練でも非常事態を促す、最高レベルの音だ。
イサはすぐさま部屋を飛び出し、船の先頭室へ向かった。
普段は簡単に開かない船室の先頭室の扉が少し開いている。
イサが扉に手をかけると、それは簡単に開いていまった。
船室内に三人の男がいて、一人は正面の操縦桿を握って苦悶の表情で前を見ている。
その右隣の男は、人影が写ったモニターに何かを叫んでいるが、警報の音に書き消されて何を言っているかまでは聞こえない。
操縦桿の左隣では、男が苛立ちながらパネルを操作して叫んでいる。
どういう状態なのかは分からないが、緊急事態だと言うことだけは分かる。
イサは船室に入り、右側にいる男の肩を叩いた。
僕が居る事にも気が付いていないからだ。
それに、冷静にならなければ、対処できるものも出来なくなってしまう…。
男はハッとして振り向き、驚いた表情で顔をしかめる。
「警報の音を切って、状況を説明してください」
イサは男の耳元でそう言うと、男はハッとして、警報機器を止め、大きなため息を付いた。
「…運が悪かったな、あんた…」
男はそう言った。
それを決めるのは、僕だ。
「状況の説明を!」
イサが強く言うと、中央で操縦桿を握っていた男が返事した。
「…着陸用の噴射機器が作動しない」
イサは操縦桿を握る男の方を向く。
「かろうじてブレーキは効くが、負担がかかりすぎている…いつ焼ききれてしまうか…」
「出港前の点検した時は、異常は無かった!」
左側にいる男が真っ青な顔をして、震えながら半泣き状態で答える。
だったら僕に出来ることは、サクラさんの指示を伝え、無事に着陸する事…。
イサは一呼吸置いて、側にいる男に伝えた。
「シグマスの国交連合軍の情報部に連絡を取ってください。『イサが連絡を取りたい』と言えば、繋げてくれるはずです」
半信半疑ながらも男は連絡を取ってくれた。
イサが国交連合軍の制服を着ていたから、とも言うが…。
輸送船の管制に繋がってはいたので、そこから連合軍の情報部へと繋げてくれた。
画面にサクラさんの姿を見てイサはホッとする。
僕も少し緊張しているみたいだ。
サクラさんは、制服では隠しきれない身体のラインをもつ、少しくすんだ金髪の綺麗な女性。
彼女が不安げな緑色瞳をこちらに向け、蒼白な顔をしている。
そして僕の保護者であり、身元引き受け人。
『イサ。その船は墜落ではなく、着陸するの?』
いきなり物騒な事を言ってくる。
船室にいる男達は青い顔をしてチラリとこちらを見る。
「はい。爆発すること無く地上に降りてます」
イサがそう言うと、急に背後から肩を抱き寄せられ、フラりとその人の腕の中に閉じ込められた。
「えっ!?」
突然の事でイサが驚き、いくつもの画像が脳裏に射影される。
今のは…。
イサが画面を見ると、サクラさんが顔を歪めていた。
『なぜ、あなたがこの船にいるの?』
ほんの少し先の未来を信じるしかない…。
そして…。
初めて…大きな自分の未来の岐路に立つ。
***
イサは予定していた軍の飛行船には乗らず、同行していたシグマス国交連合軍の部隊とは別の、同じ目的地へ向かう貨物船に乗り込んだ。
搭乗直前になっての変更に、部隊長は顔を歪ませたが、イサの『先読み』がそう言うならと、別行動を許可してもらった。
僕の『先読み』は、危険を察知したり、何の為かは分からないが、『こっちへ行け』と促してくる。
そのお陰で、何度も命拾いをしているし、暴動に巻き込まれる事も避けることが出来た。
その為イサは、国の主要人物の護衛の、危険察知役として同行することが多かった。
イサ自信は、身体能力が特別に優れているわけではないが、自衛出来るくらいには鍛えられている。
今回も、搭乗直前に『この船ではない』と、イサの頭の中で誰かが言ったのだ。
だったらどの船に乗るのかと、イサは慌てて、本国シグマスへ飛び立つ飛行船を順番に回った。
旅客船は全て『この船ではない』と囁かれ、それなら貨物船?と、思い、順番に回って行ったら、唯一何も反応しない船が有った。
『この船に乗らなくてはないいけない』
イサはそう思って船主に確認を取ると、僕が乗るはずの軍の飛行船の後に出発するそうで、出発には間に合ったと言うことだ。
その貨物船は荷物の他に、時々、急ぎのお客を乗せたりもする為、狭い個室が二つ有り、イサは破格の料金を払って、その一室に乗せてもらうことになった。
それ以外にも旅費を節約するため、安い料金で貨物船の荷物置き場に乗る者達もいるようで、意外と荷物以外の貨物船の需要が有るようだ。
子供の頃から連合軍にいて、殆どお金を使わないイサに取っては、久しぶりの大きな出費だった。
イサは少ない荷物を持って貨物船に乗り、小さな個室の、ベッドだけの部屋の窓から外を眺めた。
見慣れた飛行船の滑走路…。
船がガタガタと動きだし、もうすぐ貨物船が出発する。
何が起こるのかわからない緊張と不安に刈られながら、貨物船は空へと旅立った。
疲れていたのか、イサは固いベッドに横たわり、いつの間にか眠っていた。
シルバーブルーの連合軍の制服を着たまま、靴も脱がずにゴロリと寝返りをうつ。
柔らかいクリーム色の髪がふわりと揺れる。
「…んっ…」
覚醒前の吐息…。
そして突然の警報にイサは飛び起きた。
船内に響き渡る、耳を塞ぎたくなるほどのサイレン。
連合軍の訓練でも非常事態を促す、最高レベルの音だ。
イサはすぐさま部屋を飛び出し、船の先頭室へ向かった。
普段は簡単に開かない船室の先頭室の扉が少し開いている。
イサが扉に手をかけると、それは簡単に開いていまった。
船室内に三人の男がいて、一人は正面の操縦桿を握って苦悶の表情で前を見ている。
その右隣の男は、人影が写ったモニターに何かを叫んでいるが、警報の音に書き消されて何を言っているかまでは聞こえない。
操縦桿の左隣では、男が苛立ちながらパネルを操作して叫んでいる。
どういう状態なのかは分からないが、緊急事態だと言うことだけは分かる。
イサは船室に入り、右側にいる男の肩を叩いた。
僕が居る事にも気が付いていないからだ。
それに、冷静にならなければ、対処できるものも出来なくなってしまう…。
男はハッとして振り向き、驚いた表情で顔をしかめる。
「警報の音を切って、状況を説明してください」
イサは男の耳元でそう言うと、男はハッとして、警報機器を止め、大きなため息を付いた。
「…運が悪かったな、あんた…」
男はそう言った。
それを決めるのは、僕だ。
「状況の説明を!」
イサが強く言うと、中央で操縦桿を握っていた男が返事した。
「…着陸用の噴射機器が作動しない」
イサは操縦桿を握る男の方を向く。
「かろうじてブレーキは効くが、負担がかかりすぎている…いつ焼ききれてしまうか…」
「出港前の点検した時は、異常は無かった!」
左側にいる男が真っ青な顔をして、震えながら半泣き状態で答える。
だったら僕に出来ることは、サクラさんの指示を伝え、無事に着陸する事…。
イサは一呼吸置いて、側にいる男に伝えた。
「シグマスの国交連合軍の情報部に連絡を取ってください。『イサが連絡を取りたい』と言えば、繋げてくれるはずです」
半信半疑ながらも男は連絡を取ってくれた。
イサが国交連合軍の制服を着ていたから、とも言うが…。
輸送船の管制に繋がってはいたので、そこから連合軍の情報部へと繋げてくれた。
画面にサクラさんの姿を見てイサはホッとする。
僕も少し緊張しているみたいだ。
サクラさんは、制服では隠しきれない身体のラインをもつ、少しくすんだ金髪の綺麗な女性。
彼女が不安げな緑色瞳をこちらに向け、蒼白な顔をしている。
そして僕の保護者であり、身元引き受け人。
『イサ。その船は墜落ではなく、着陸するの?』
いきなり物騒な事を言ってくる。
船室にいる男達は青い顔をしてチラリとこちらを見る。
「はい。爆発すること無く地上に降りてます」
イサがそう言うと、急に背後から肩を抱き寄せられ、フラりとその人の腕の中に閉じ込められた。
「えっ!?」
突然の事でイサが驚き、いくつもの画像が脳裏に射影される。
今のは…。
イサが画面を見ると、サクラさんが顔を歪めていた。
『なぜ、あなたがこの船にいるの?』
応援ありがとうございます!
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