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佐渡犬美の半袖姿
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僕たちが衝撃のお付き合いを始めて少し経った。
長袖だった制服は合服へ、そして梅雨が開けたので…互いに夏服になった。
夏服と言えば?
そう、半袖である。
今まで彼女が出来た経験のない僕としては、女子の夏制服なんて「薄いなー」とか、「下着が薄っすら見えてるのなんで気にしないんだろう?」とか思うばかりだった。
でも、今年は佐渡さんがいる。
なんの面白味もない人生の中で唯一の刺激、初めての彼女がいる。
皆と全く同じ夏服だけど、どうなるんだろう…と内心ドキドキしていた。
ちなみに僕らの学校、女子はセーラー服だ。
セーラーにカーディガンを羽織っていた春だけど、梅雨時期の佐渡さんは夏制服にカーディガンを羽織っていた合服仕様だった。
今、ついに暑い夏となって更に肌の露出が増えた佐渡さんは……なんと半袖の夏制服の下に薄手の長袖インナーを着ていた。
「なんでぇ!?」
僕の驚きの声は教室中に響き渡ってしまった…。
午前の授業が終わって視聴覚室へと移動する。
最初のきっかけの日以来、僕と佐渡さんはいつもこの場所でご飯を食べることになったのだ。
「き、雉飼君…朝、どうしたの…?」
先に来ていた佐渡さんは朝、僕の声に驚いたらしい。
突然僕が叫びだしたんだからそりゃそうだ。
でも僕は少しの期待と暑い夏にそぐわない佐渡さんの服装に突っ込むことしかできない。
聞くなら今だな。
「だって、佐渡さんがこんなに暑いのにインナー着てるから…。だって夏だよ…!?暑くない…?熱中症にならない…!?」
佐渡さんは僕の言葉を理解したように手をポン、と叩く。
にへらと笑うと袖の裾を握った。
「んとねー、私暑いの得意なんだぁ。寧ろ寒がりだからあんまり生地の薄い服着ないの」
「そ、そうなんだ…」
にこにことしてる佐渡さんだけど懸念はある。
前回受けた衝撃の告白、佐渡さんには『噛み癖』があるのだ。
手を差し出せば最後、余裕で痕が残るくらいには痛い。
場所を間違えれば千切れそうな勢いはある佐渡さんの噛み癖。
ま、まさか自分の腕を噛んだりとかは…しないよね…?
その腕を隠してる…とか…?
「雉飼君どうしたの?」
「えっ?えーっと…その…」
こういうのって聞いてもいいのかな。
失礼にならない?
でも、やっぱり気になってしまう。
見たいって言ったら…へ、変態みたいに思われる…かな?
(ええい、ままよ!)
「佐渡さんって…どうして肌見せないの?」
「え?うーん……なんでだろ」
「えっ」
「そんなに気にしてなかった!困ったことそんなにないし…日焼けもしないから楽だよ?」
「う、うん…それはそうだね…」
けろりと言いのける佐渡さんには衝撃しかない。
夏は暑いから半袖。僕にはその概念しかなかった。
だって大抵そうじゃない?
でも佐渡さんは僕とは違うんだなぁ…。
そっか、佐渡さんは気温が気にならないのか…。
「……ん?という事は、冬は?」
「私すっごく寒がりなの。だから今年も多分沢山着込んでると思う」
「そうなんだ…じゃあ冬の佐渡さんはきっと完全防備だね」
「あはは、そうかも」
佐渡さんはにこりと笑いながら弁当を広げ、タコさんウインナーを小さな口に入れる。
いつも自分で作ってくるらしいけど、ご飯には桜でんぶ、卵焼きはハート型にくり抜いてあるしなんともお洒落で可愛いお弁当だ。
鶏の照焼きとかも美味しそう。
「そっか、僕は冬の方が好きだから夏はきついな…。夏を快適に過ごせるっていいね」
羨ましい、の気持ちで軽い返事をする。
じわりと額に汗が浮かんで箸を持ちながら拭った。
「……」
佐渡さんはにこりと笑ったまま固まって、「うーん…」と言葉を漏らす。
少しの間が空いて、佐渡さんの口から続きが聞こえた。
「でも、困ることはあるよ?」
「え?」
佐渡さんは弁当の端、おかずとは別に避けられたような、ご飯の隣に無理やり押し込められたようなおかずを口に入れる。
次の瞬間ごり、ごり、といかにも硬いものを噛む音が聞こえた。
それは噛み癖を持つ佐渡さんだからこそ好んで(?)食べる食べ物――アーモンドだ。
しかもほぼ加工してない、素焼きされただけのもの。
美味しいには美味しいけど、可愛らしいものにはそぐわない、佐渡さんのお弁当から異質な空気を漂わすおかず。
佐渡さんがそれを口にする時は…噛みたい衝動が出た時だ。
あまりにも唸って我慢するものだから、どうしても噛みたくなったら…って僕が提案したもの。
そこは素直に案に乗ってくれて嬉しい。
「……夏は、肌…見えるから……噛みたくなっちゃう…」
そんな佐渡さんの目が僕へ向く。
だけど見てるのは僕の顔じゃない。
…腕だ。
ごくりと喉が鳴る。
まるで吸血鬼みたいにちらりと八重歯を見せて、佐渡さんの視線は僕の腕に釘付けになっている、
可愛い。
可愛いけど、素っ気なくしてみた。
「……ご飯の後ね」
「むぐぅ…っ」
佐渡さんの頬が大きく膨らむ。
ぷくりと膨らんだ中に4個のアーモンドが放り込まれて…ごりごりごりっと噛み潰す音が聞こえた。
……可愛い弁当にはそぐわない音だ…。
お弁当に添えられた可愛くないアーモンドが佐渡さんのストレスを消化していく。
残りはない。
我慢、難しいんだなぁ……ということで僕は折れた。
「わかった、わかったから…はい」
僕はリストバンドを外して左腕を差し出す。
佐渡さんと過ごすようになり、佐渡さんに噛まれた痕を隠すためにと準備したものだ。
「……っ」
アーモンドを食べ終えた佐渡さんはじっと腕を見つめると弁当と箸を静かに置く。
そしてほぼ触れてないくらいの優しい手付きで僕の腕に触れると…恍惚とした艶めかしい表情を見せた。
「……雉飼君、ごめんね?」
そのまま上目遣いになって一言零した佐渡さんは小さな口を開ける。
唾液に濡れた真っ赤な舌、真っ白な八重歯は磨かれたように綺麗で、それが僕の腕に沈む。
「――っ」
一言で言えば激痛。
だけど痛みの中にぬらりとした唾液がまぶされ、生暖かい体温と佐渡さんの舌が当たって僕の背筋をぞくりとさせる。
嫌だなんて言えない。
痛いことをされているのに、拒否できない。
僕の腕を噛んで幸せそうにしている佐渡さんが可愛くて、愛でたくて仕方がない。
僕は空いている右腕でそれこそ犬のように佐渡さんの頭を撫でた。
「袖、隠してるから自分の腕噛んでるのかなって思った」
愛でてると、思ったことが口に出た。
佐渡さんは「ぷは…」と腕から口を離す。
くっきりと噛まれた痕が残り、唾液の糸が腕から佐渡さんの口に伝ってぷつんと切れた。
「……自分の体は…たまに噛む、けど…跡はないよ?」
ほら、と袖を捲って見せてくる。
その腕は本当に真っ白で、手首より色が少し明るいのは日に焼けてないのだろう。
細くて、綺麗で、すべすべで、僕は佐渡さんの白い腕を取る。
「雉飼く…――っ!?」
「……じゃあ、ちゃんと隠しとかなくちゃね」
佐渡さんの綺麗な腕に痕をつけた。
僕の前歯の痕を少しだけ。
痛くなかったかな?
それを袖に隠して、僕は弁当の続きを口に入れた。
「~~……だ、大事に…するね…?」
ちらりとさりげなく佐渡さんに視線を向けると、頬を真っ赤に染めてリスのように小さく取ったご飯を口に入れていた。
佐渡さんの半袖姿は、僕と佐渡さんだけの秘密だ。
長袖だった制服は合服へ、そして梅雨が開けたので…互いに夏服になった。
夏服と言えば?
そう、半袖である。
今まで彼女が出来た経験のない僕としては、女子の夏制服なんて「薄いなー」とか、「下着が薄っすら見えてるのなんで気にしないんだろう?」とか思うばかりだった。
でも、今年は佐渡さんがいる。
なんの面白味もない人生の中で唯一の刺激、初めての彼女がいる。
皆と全く同じ夏服だけど、どうなるんだろう…と内心ドキドキしていた。
ちなみに僕らの学校、女子はセーラー服だ。
セーラーにカーディガンを羽織っていた春だけど、梅雨時期の佐渡さんは夏制服にカーディガンを羽織っていた合服仕様だった。
今、ついに暑い夏となって更に肌の露出が増えた佐渡さんは……なんと半袖の夏制服の下に薄手の長袖インナーを着ていた。
「なんでぇ!?」
僕の驚きの声は教室中に響き渡ってしまった…。
午前の授業が終わって視聴覚室へと移動する。
最初のきっかけの日以来、僕と佐渡さんはいつもこの場所でご飯を食べることになったのだ。
「き、雉飼君…朝、どうしたの…?」
先に来ていた佐渡さんは朝、僕の声に驚いたらしい。
突然僕が叫びだしたんだからそりゃそうだ。
でも僕は少しの期待と暑い夏にそぐわない佐渡さんの服装に突っ込むことしかできない。
聞くなら今だな。
「だって、佐渡さんがこんなに暑いのにインナー着てるから…。だって夏だよ…!?暑くない…?熱中症にならない…!?」
佐渡さんは僕の言葉を理解したように手をポン、と叩く。
にへらと笑うと袖の裾を握った。
「んとねー、私暑いの得意なんだぁ。寧ろ寒がりだからあんまり生地の薄い服着ないの」
「そ、そうなんだ…」
にこにことしてる佐渡さんだけど懸念はある。
前回受けた衝撃の告白、佐渡さんには『噛み癖』があるのだ。
手を差し出せば最後、余裕で痕が残るくらいには痛い。
場所を間違えれば千切れそうな勢いはある佐渡さんの噛み癖。
ま、まさか自分の腕を噛んだりとかは…しないよね…?
その腕を隠してる…とか…?
「雉飼君どうしたの?」
「えっ?えーっと…その…」
こういうのって聞いてもいいのかな。
失礼にならない?
でも、やっぱり気になってしまう。
見たいって言ったら…へ、変態みたいに思われる…かな?
(ええい、ままよ!)
「佐渡さんって…どうして肌見せないの?」
「え?うーん……なんでだろ」
「えっ」
「そんなに気にしてなかった!困ったことそんなにないし…日焼けもしないから楽だよ?」
「う、うん…それはそうだね…」
けろりと言いのける佐渡さんには衝撃しかない。
夏は暑いから半袖。僕にはその概念しかなかった。
だって大抵そうじゃない?
でも佐渡さんは僕とは違うんだなぁ…。
そっか、佐渡さんは気温が気にならないのか…。
「……ん?という事は、冬は?」
「私すっごく寒がりなの。だから今年も多分沢山着込んでると思う」
「そうなんだ…じゃあ冬の佐渡さんはきっと完全防備だね」
「あはは、そうかも」
佐渡さんはにこりと笑いながら弁当を広げ、タコさんウインナーを小さな口に入れる。
いつも自分で作ってくるらしいけど、ご飯には桜でんぶ、卵焼きはハート型にくり抜いてあるしなんともお洒落で可愛いお弁当だ。
鶏の照焼きとかも美味しそう。
「そっか、僕は冬の方が好きだから夏はきついな…。夏を快適に過ごせるっていいね」
羨ましい、の気持ちで軽い返事をする。
じわりと額に汗が浮かんで箸を持ちながら拭った。
「……」
佐渡さんはにこりと笑ったまま固まって、「うーん…」と言葉を漏らす。
少しの間が空いて、佐渡さんの口から続きが聞こえた。
「でも、困ることはあるよ?」
「え?」
佐渡さんは弁当の端、おかずとは別に避けられたような、ご飯の隣に無理やり押し込められたようなおかずを口に入れる。
次の瞬間ごり、ごり、といかにも硬いものを噛む音が聞こえた。
それは噛み癖を持つ佐渡さんだからこそ好んで(?)食べる食べ物――アーモンドだ。
しかもほぼ加工してない、素焼きされただけのもの。
美味しいには美味しいけど、可愛らしいものにはそぐわない、佐渡さんのお弁当から異質な空気を漂わすおかず。
佐渡さんがそれを口にする時は…噛みたい衝動が出た時だ。
あまりにも唸って我慢するものだから、どうしても噛みたくなったら…って僕が提案したもの。
そこは素直に案に乗ってくれて嬉しい。
「……夏は、肌…見えるから……噛みたくなっちゃう…」
そんな佐渡さんの目が僕へ向く。
だけど見てるのは僕の顔じゃない。
…腕だ。
ごくりと喉が鳴る。
まるで吸血鬼みたいにちらりと八重歯を見せて、佐渡さんの視線は僕の腕に釘付けになっている、
可愛い。
可愛いけど、素っ気なくしてみた。
「……ご飯の後ね」
「むぐぅ…っ」
佐渡さんの頬が大きく膨らむ。
ぷくりと膨らんだ中に4個のアーモンドが放り込まれて…ごりごりごりっと噛み潰す音が聞こえた。
……可愛い弁当にはそぐわない音だ…。
お弁当に添えられた可愛くないアーモンドが佐渡さんのストレスを消化していく。
残りはない。
我慢、難しいんだなぁ……ということで僕は折れた。
「わかった、わかったから…はい」
僕はリストバンドを外して左腕を差し出す。
佐渡さんと過ごすようになり、佐渡さんに噛まれた痕を隠すためにと準備したものだ。
「……っ」
アーモンドを食べ終えた佐渡さんはじっと腕を見つめると弁当と箸を静かに置く。
そしてほぼ触れてないくらいの優しい手付きで僕の腕に触れると…恍惚とした艶めかしい表情を見せた。
「……雉飼君、ごめんね?」
そのまま上目遣いになって一言零した佐渡さんは小さな口を開ける。
唾液に濡れた真っ赤な舌、真っ白な八重歯は磨かれたように綺麗で、それが僕の腕に沈む。
「――っ」
一言で言えば激痛。
だけど痛みの中にぬらりとした唾液がまぶされ、生暖かい体温と佐渡さんの舌が当たって僕の背筋をぞくりとさせる。
嫌だなんて言えない。
痛いことをされているのに、拒否できない。
僕の腕を噛んで幸せそうにしている佐渡さんが可愛くて、愛でたくて仕方がない。
僕は空いている右腕でそれこそ犬のように佐渡さんの頭を撫でた。
「袖、隠してるから自分の腕噛んでるのかなって思った」
愛でてると、思ったことが口に出た。
佐渡さんは「ぷは…」と腕から口を離す。
くっきりと噛まれた痕が残り、唾液の糸が腕から佐渡さんの口に伝ってぷつんと切れた。
「……自分の体は…たまに噛む、けど…跡はないよ?」
ほら、と袖を捲って見せてくる。
その腕は本当に真っ白で、手首より色が少し明るいのは日に焼けてないのだろう。
細くて、綺麗で、すべすべで、僕は佐渡さんの白い腕を取る。
「雉飼く…――っ!?」
「……じゃあ、ちゃんと隠しとかなくちゃね」
佐渡さんの綺麗な腕に痕をつけた。
僕の前歯の痕を少しだけ。
痛くなかったかな?
それを袖に隠して、僕は弁当の続きを口に入れた。
「~~……だ、大事に…するね…?」
ちらりとさりげなく佐渡さんに視線を向けると、頬を真っ赤に染めてリスのように小さく取ったご飯を口に入れていた。
佐渡さんの半袖姿は、僕と佐渡さんだけの秘密だ。
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