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ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?

6.彼女できた?

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 ――オサレなリア充カフェにて。

 鳴海さんとテーブル席に向かい合って座っている。俺の人生で、こんなに可愛い女の子とこんな店に入る日が来ることになろうとは……!

 カフェオレとケーキを注文して、食べながらこの世界の事や、お互いの学校生活の近況など話す。

 鳴海さんは向かい合って話をしていると、目をじっと見て話すので俺は心臓が高鳴って仕方ない。もっとも、鳴海さんは全く意識していないのかもしれないが。

 俺は双原奏介の話題にならないように、気を使いながら話をする。

「あの金色のモンスターを倒せたのはラッキーだったね。お金が一気に増えた」

「せっかくお金が手に入ったんだから買い物しようよ」

 鳴海さんが言うので、二人でリア充カフェを後にして、ショッピングモールに向かった。



 * * *



 この箱庭内にあるショッピングモールは、いわゆる大規模店舗ではなく、地方にありそうな程々の大きさの2階建ての店舗だ。建物内部には、様々な服の店や食料品売り場、本屋、薬店、フードコート、ゲームコーナー等々があり現実世界とほとんど変わらない。

 鳴海さんはキョロキョロと店舗内を見回す。

「それにしても、ここがゲームの中なんて信じられないね。ほとんど現実と変わらないけど?」

「そうだよね、でもあの辺りはゲームの世界って感じがするよ」

 俺は武器を売っている店を指差した。ショーケースの中には剣や槍、他にも多種多様な武器が陳列されている。

 数人のスタッフさんがいるが、全員美人なお姉さんだ……。俺はつい目を奪われてしまった。

「へー、柳津君はああいうお姉さん系が好みなんだ?」

 鳴海さんが冷やかすように声を掛けてきたので、俺は慌てて否定する。

「違うよ! 店のスタッフさんって髪や瞳の色がファンタジーな感じだから、ここはゲームの世界なんだなぁ、って思ってただけだよ。それに俺の好みのタイプは、なる……じゃなくって、えっと、その……」

 危うく告白しそうになり、俺があたふたしていると、鳴海さんは俺から視線を外し、ゲームコーナーを指差す。

「あ、あれやろうよ」

「……いいよ」

 二人でゲームコーナーに行き、レースゲームをやることにした。ゲームの世界でゲームする事になるとはね。いくつか並んでいる筐体のシートに二人並んで座り、ハンドルを握ってゲームスタートだ。

 俺より先に最初のコーナーに侵入した鳴海さんは、手慣れた様子でドリフトをしながら声を掛けてきた。

「柳津君ってさー、彼女出来た?」

 俺はドキッとして操作を誤り、派手にコースアウトしてしまった。ハンドルを大きく切ってコースに戻りつつ答える。

「出来て無いよ」

「作らないの?」

「そりゃ欲しいけど、俺ヘタレだから女の子に話しかけたりできないし。鳴海さんこそ彼氏いるの?」

「気になる?」

「いや、まあ、……うん」

「いないよ。大体彼氏がいたら双原君を追い払ってもらうって」

「それもそうだね」

 鳴海さんの勝利でゲームは終了した。筐体のシートから立ち上がり鳴海さんを見ると、何やら不敵な笑みを浮かべている。

「柳津君はもっと積極的になったら意外と上手くいくかもね」

 どういう意味だ? もう一度告白したらOKしてもらえるとか? んな訳ないか。DTは好きな女子の行動とか発言を、自分に都合良く解釈するってなんかで見たな。ここは冷静に慎重にしないと……。

 さて、お腹もすいたことだし、そろそろ夕食にするか。二人でフードコートに向かった。



 * * *



 オサレなリア充カフェに続き再び鳴海さんと対面で着席する。ドキドキしながらの食事になりそうだ。

「柳津君の学校には可愛い女の子とかいないの?」

 先ほどに続き恋バナ関連だな。女子ってそういうものなのかな?

「同じクラスに一人すごく可愛い子がいるよ」

 鳴海さんの表情にピクっと一瞬変化があったような気がする……。

「へぇー、例えばその子と私って、柳津君的にはどっちが可愛いと思う?」

 『私』が可愛いのは前提なんだね。さすがだ。

「うーん、どっちかな? 両方とも物凄く可愛いからな……」

 俺は考えながら、つい本音を口にしてしまう。すると鳴海さんは半眼で俺の目をジッと視る。

「あのね、そういう時は目の前にいる子の方が可愛いって言うべきなんだよ!」

「え、あ、鳴海さんの方が可愛いよ」

 鳴海さんはまじまじと俺の目を見て「ホントに?」と確認する。そのあまりの可愛さに俺の心臓は高鳴る。

 俺の口から「ホントだよ。鳴海さんの方が可愛い」と言葉が漏れると、鳴海さんは「よろしい」と満足げに微笑んだ。

 ふう、女子との会話は楽しいが難しいな。それにしても面と向かって可愛いとか言ってしまったな。今になって顔が熱くなってきた。



 * * *



 食事も終わり、宿泊施設に向かった。フロントで別れ際に鳴海さんを見る。すると、俺の視線に気が付いたのか鳴海さんはこちらを向く。

「どうしたの? 私と一緒の部屋に泊まりたいとか?」

 鳴海さんはニンマリと笑顔を俺に向ける。俺は慌てて首を横に振った。そして一息ついて感謝を告げる。

「鳴海さんのおかげで今日はとても楽しかった。ありがとう」

「私も楽しかったよ。ありがとう。ゲームがクリアされるまで時間が掛かりそうだから、今後ともよろしくね」

 なんて素敵な笑顔だ。俺が感激していると鳴海さんは「じゃ、おやすみ」と手を振って部屋に向かって行った。

 俺も「おやすみ」と返事をして、高鳴る自分の心音を聞きながら鳴海さんの後ろ姿を見ていた。

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