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ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?

12.初めての…    挿絵有

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 昼食を終えたところで、結月が俺に話しかける。

「そういえば樹、刀の振り方がだいぶ様になってきたね」

「そうかな? 先生がいいからだと思うよ」

「でも、樹はまだ腕だけで刀を振ろうとしている。少しやってみて」

 俺は刀を正眼でかまえ、袈裟切りをして見せた。

 すると、結月が近づいてきて右手を俺の持つ刀の柄にそえ、左手を俺の腰に当てる。

「脚、腰と動きを連動させ、体全体で刀を振るようにして」

 結月は柄を握る俺の手を握り、ゆっくりと刀を動かす。かなり密着した状態だ。
 時折、結月の頬や髪、胸が俺に触れるので、どうしてもそちらに意識が向いてしまう。とはいえ彼女の表情は真剣そのもの。

 柔らかな感触と間近に感じる結月の息遣いに、俺の表情は情けなく緩んでいたのかもしれない。

 座って様子を見ていた久奈が、立ち上がりズンズンとこちらに歩いてきた。

「なにこんな所でイチャイチャしてるの!? バッカじゃない?」

 結月はその言葉にハッとして困ったような表情に変わる。

「ゴメン、そんなつもりじゃなかった」

 目に涙をため、顔を真っ赤にして久奈が叫ぶ。

「今日はずっと二人で刀の事で盛り上がってるし! どうせ樹は私なんかより、結月の方が好きなんでしょ!?」

「久奈、落ち着いて」

 俺はどうにかなだめようと言葉を掛けるが、久奈には届かない。

「二人でボスでも何でも倒してくればいいでしょ!!」

 久奈は走って転移ゲートに飛び込んで行ってしまった。

「樹、久奈を追いかけて。私もセンターに戻るから」

 結月が沈んだ表情で俺に言うので「分かった」と返事して転移ゲートに飛び込んだ。



 * * *



 一人残された結月。視線を落として寂しそうに呟く。

「これは、悪手だったな……」



 * * *



 北の転移ゲートの広場に戻ってきた。辺りを見渡すが久奈の姿はどこにもない。魂力が上がっているから走る速さもかなり上がっているのか。

 フレンドの検索機能で久奈の位置を探る。西の転移ゲートか……俺は急いで向かった。

 西の転移ゲートをこえた先は、森林のフィードだった。久奈は……あっちだな。

 背の高い木々が光を閉ざしている薄暗い森だ。落ちている枝葉や張り出した木の根のせいで歩きにくい道を進んでいくと、木にもたれ掛かって泣いている久奈を見つけた。

「久奈……」

 俺は声を掛け近付こうとすると、久奈は俺を睨みつけ大きな声を出した。

「もう、私の事はほっといて!」

 俺は逃げようとする久奈の手をつかむと、久奈はバランスを崩し転びそうになる。どうにか倒れないよう受け止めた。

 久奈は俺の体に手を回しぎゅっと抱きしめてきた。

「樹は私の事、好きだって言ったのに! もし彼女になってくれるなら最高だねって言ってたくせに! 嘘つき!」

「ゴメン」

「謝らないでよ! 私がかわいそうみたいじゃない!」

 俺はこんな時どう言葉を掛ければいいか考えもつかない。ただ、久奈が落ち着くまで黙って抱きしめていようと思った。

 久奈はしばらく俺の胸で、嗚咽をもらしていた。そうしていると少しづつ落ち着いてきたのか、俺に抱きつく久奈の腕の力が少し緩む。

「アリガト、もう大丈夫」

 久奈は俺の胸に額を押し当てたまま話し出した。

「樹と結月が仲良くしてるのを見てたら、なんかすごく腹が立ってきて……胸の奥が苦しくなって、いてもたってもいられなくなっちゃった」

「私、嫉妬してたね。かっこ悪いよね」

「そんなことは……」

「私ね……樹を結月に渡したくない」

「樹……今だけは、私のモノになって……」

 久奈が目をつぶり俺の方へ顔を寄せてくる。

 えっ!? これってアレだよな!? いいのか? と慌てるが久奈の顔はもう目の前に迫っている。俺はそのまま久奈の唇に自分の唇を重ねた。



「エへへ、なんかさっきまでのモヤモヤした気持ちがどっか行っちゃった」

「ねぇ、もう一回しよ」

 久奈は涙で潤んだ目で笑顔を作りキスをねだる。再び俺たちは唇を重ねる。唇が離れると久奈は顔を俺に近づけたままで「樹、大好き」と囁いた。

 どうやら久奈の機嫌は直ったようだが、俺は幸福度の許容値を大幅に上回る出来事に、ただ放心していた。

 森林フィールドの転移ゲートに戻る道中、俺達はずっと手をつないでいた。しかも恋人同士がするような指を絡めたつなぎ方で……。

 西の転移ゲートの広場からセンターに向かって歩いていると、結月がベンチに座っていた。

 久奈は慌てて繋いだ手を離す。こちらに気付いた結月は立ち上がって近づいてきた。久奈は気まずそうにしながらも結月に頭を下げた。

「結月ゴメンね」

「気にしないで。私の方こそ配慮が足らなかった」

 結月が長いまつ毛を伏せながらそう言うと、久奈と俺の顔をチラリと見たような気がした。
 一瞬、結月の表情が曇ったようにも見えた。しかし、すぐにいつもの笑顔に戻る。

「今日は、フィールド探索はやめて遊ぼうか? この世界って、ボーリング場とかもあるんだよ」

 久奈はすぐに「いいね! 行こ」と明るい声で賛成する。
 俺も頷き三人でボーリングやカラオケ、カフェで楽しい時間を夜まで過ごした。

 三人で遊んでいる最中も、俺の頭は久奈とキスしたことでいっぱいだった。
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