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謎の異空間に飛ばされたら金髪美少女が迫ってくるんだが?

66.笑顔になってよ

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 顔の火照りがおさまり、いつも通り一階に降りていき朝食をとる。顔を洗い着替えた後、再び箱庭に転移する。

 久奈と結月とアサカは既に来ている。今日もあみだくじで手合わせする相手を決めた。俺は久奈とで、アサカは結月とだ。やっぱりアサカは文句を言う。

「うー、イツキとがいいのにー」

「今夜、二人きりになれるから頑張ろうね」

 俺がアサカを励ますと素直に返事が返ってきた。

「ん、頑張るよ」

 四人で訓練用のフィールドに転移する。アサカは黒い槍を取り出し、結月はミスリル刀を取り出して向かい合い構える。

「よろしくお願いします!」

 アサカはビシッと結月に礼をする。結月は一瞬面食らったようだが「よろしくお願いします」と応え礼をした。

 アサカも結月の強さを認めたんだろうな……。二人は激しく槍と刀を振るって打ち合っている。

 俺と久奈はアサカ達から離れるように飛ぶ。ある程度離れたところで久奈が寄ってきて俺の目をじーっと見つめる。

「今日は結月の機嫌がすごくいいんだよね……。どうしたのかなー?」

「……」

 俺が何も言えないでいると、久奈は俺の目をじーっと見つめている。この状況でいきなり久奈に愛してるとか言っても違和感あるよな……どうしようか。

「ふーん、樹は結月の事は愛してるんだね……」

 やはり久奈は俺の思考が手に取る様に分かるからバレるよね。膨れっ面の久奈は俺の顔の目の前でじーっと俺の目を見続けている。

「私は樹に愛してるって言われたことがないなぁ」

 俺はたじろぐが、久奈に言う。

「久奈の事は好きって言葉じゃ足らないほど想っているよ。でも三股している俺が愛してるって言っても嘘っぽいかなと……」

「でも結月には言ったんでしょ! 私も言って欲しいよ!」

 俺は久奈の肩に両手を乗せ久奈を見つめる。

「この状況では、言わされた感があるように思うかもしれないけど、俺の気持ちを久奈に言うよ」

 久奈は目を輝かせながら俺の言葉を待っている。

「久奈、愛してる」

 たった一言だが、この言葉を言うと顔が熱くなるな……。

 久奈はとびきりの笑顔になり俺に飛びつく。空中に浮いた状態で数メートルは飛ばされてしまった。

「嬉しい!! 私も樹の事を愛してる!!」

 俺達はきつく抱き合いキスをする。

「ねぇ、このままここでしようよ」

「それは流石に……。アサカと結月がすぐ近くで鍛錬してるのに……」

 久奈はスッと俺から離れ、周囲に手をかざすと霧が発生し俺達の姿を隠していく。さらに久奈が手を突き出すと、厚さ1m直径5m程の水の塊が出現した。

「水の魔法で作ったベッドだよ」

 久奈は水の塊に乗っかる。濡れたりはしないようだ。俺もその水の塊に乗ってみる。柔らかいマットレスのベッドの様だ。久奈の体温のような温もりがあり心地良い。

「この霧の中に外から簡単に入れないように障壁で覆っているし、中の音も外に漏れないよ」

 俺を押し倒し、のしかかり抱き付く久奈。俺の身体を撫でて甘い声で囁く。

「だから、少しだけしようよ」

「でも……」

「だって、樹が顔を赤くして照れながら、私の事を愛してるなんて言うから興奮しちゃったんだもん!」

 久奈の猛烈なアプローチを断り切れずに、空中に設置された水のベッドでしてしまった。久奈はいつにもまして情熱的だった。その後は誤魔化すように激しく魔法を撃ち合い鍛錬したのであった。



 昼になったので、ログハウスに戻り昼食休憩にする。久奈がご機嫌で冷製パスタを作ってくれたので、四人で食べる。久奈の手料理はいつも美味しい。アサカは驚いているようだ。

「ヒナって料理上手なんだね。とっても美味しい!」

「えへへ、ありがとう」

「なんか、今日のヒナ機嫌いいなぁ。なんかいい事あったの?」

「えっ? いつもこんな感じだよ」

「うーん、そうかなぁ……?」

 アサカはなにか言いたげだが、それ以上は突っ込んで聞くことは無かった。



 昼からは勉強することにする。一応学生なのでね……。

 勉強は音声アシストが分からない事を分かりやすく解説してくれるので、効率よく進めることが出来た。その為、少ない勉強時間でも成績は上がった。

 もちろんテストのときは音声アシストは自動でOFFになる。音声アシストが有効のままなら全教科楽々満点だろうからな。こういった細かいところもこのシステムを作ったルイさんの努力しろという思いがこもっている気がする。



 久奈、結月、俺が宿題をやっていると、アサカは興味深そうに見ている。

「イツキ達はこういうのを勉強しているんだね」

「わたしもイツキの学校に転校しようかなぁ。社長にたのんでみるか」

「はは……。ルイさんなら、アサカを俺達の学校に転校させることも簡単だろうけど」

「でも、転校してくるなら日本語くらいは翻訳なしで話せないとね」

 俺はアイテムストレージから漫画を取り出しアサカに渡した。

 久奈、結月、俺は勉強をして、アサカは音声アシストに補助されながら日本語の勉強をしたのだった。

 そして、今日もいい時間になったので解散する。久奈と結月とアサカにハグしてキスをしたあと、自宅に転移した。



 いつもどうり、夕食を取り、風呂に入り、歯を磨き自室に戻ってくる。

 今夜はアサカと過ごすのか。アサカは2カ月もの間、時間の流れを速くした孤島で頑張って鍛えていたんだよな……。褒めてあげよう。そんな事を考えつつ箱庭に転移した。



 アサカはまだ来ていないな……。俺がリビングのソファーに座って少しの間ボーっとしていると、アサカが来た。

「イツキ! ようやく二人きりになれたね。ヒナもユヅキもイツキにイチャつかせてくれないんだもん。辛かったよー」

 俺に駆け寄り抱き付くアサカ。

「ヒナもユヅキも厳しいんだよ。私がもう無理って言っても容赦無しなんだ」

 俺は腕の中でぼやくアサカの頭を撫でる。

「それだけ真剣に指導してくれているんだよ。久奈と結月は俺よりも強いし」

 アサカはムッと不快感をあらわにする。

「やけにヒナとユヅキの肩を持つなー」

 少しづつアサカの声が大きくなり、声色にも怒気が含まれていく。

「今日はヒナとユヅキの機嫌が良かったけど、イツキがらみだよね?」

「うぐ……、それは……」

 俺は言葉に詰まってしまう。

「私に言えない事なの? それとも私に言いたくないだけ?」

「そんなことないよ……」

「あんなに可愛い恋人が二人もいるんだもんね。私の事なんてどうでもいいんでしょ?」

 俺は首を振るが、アサカは怒りながら言い続ける。

「もし、強い敵が現れて私が死んじゃっても、ヒナとユヅキがいればイツキはそれでいいよね!?」

 アサカのその言葉に俺は一年前、自身の無力さのせいで久奈と結月が大怪我をさせられてしまったときの事を思い出す。

 大事な人を失うかもしれない恐怖。あの時の事を思い出すと今でも胸が軋み息苦しくなる。

「もし、アサカの事を守り切れずに死なせてしまったら、俺は二度と笑えないと思う」

「アサカが三股している俺に愛想を尽かして離れていくのなら仕方がない。もちろん悲しいけどアサカが元気ならいつか立ち直れると思う。でも、アサカが死んでしまうのは絶対に嫌だ」

 アサカはじっと俺の顔を見つめる。

「変な事言ってごめん。もう言わないからそんな悲しそうな顔しないで」

「いや、俺の方こそごめん。アサカの気持ちを考えてなかった」

 アサカは笑顔を作り、俺の頬を両手でつまんで引っ張る。

「せっかく二人きりになれたんだから、いつもみたいに優しい笑顔になってよー!」

 アサカが必死になっているのが、妙におかしくて俺は吹きだしてしまう。

「ふう、イツキが笑ってくれた」

「2カ月もイツキとイチャついてないから、溜まってるんだからね!」

「ああ、いっぱいしようね」

 このログハウスには、空いている部屋がいくつかあるのでそのうちの一つをアサカの部屋にした。その部屋に俺達は腕を絡ませながら移動した。

 部屋に入ると二人してベッドに倒れ込み、抱き合いキスをする。

「2カ月ぶりのイツキの素肌の体温だ……、癒されるなぁ」

 俺はアサカの柔らかな肌に手を滑らせ撫でる。アサカは時折身震いをしながら俺にしがみつくように抱き着いている。

 何度もキスをして、2カ月分を取り戻すかのように夢中で肌を重ね合った。



 翌朝、目が覚め隣で眠るアサカの顔を見つめる。美しい金髪に整った顔だち。美人だな……。間近で見ていると、アサカの唇に吸い寄せられるように、自分の唇を触れさせてしまった。アサカはパチッと目を開ける。

「毎朝イツキのキスで起きたいな……」

「アサカの寝顔があまりにも可愛かったからついキスしてしまった」

「したいのはキスだけなの?」

 アサカは上目で物欲しそうな顔で俺に聞く。可愛すぎるアサカの仕草に俺は気分が高まってしまった。

 俺はアサカを抱き寄せ「しようか」と囁くと、アサカはコクリと頷き俺の背中に腕をまわした。

 我慢できなくなった俺達は朝から熱烈にイチャついてしまったのだった。


 
 激しめの寝起きの運動をしてすっきりした俺達はシャワーを浴びて着替えリビングで一息つく。

 二人でソファーに並んで座っている。手は絡めた状態だ。

「イツキ、愛してるよ」

 アサカがシステムの翻訳機能を使わずに日本語で言った。

「アサカ、日本語覚えたの?」

「イツキ達の言葉で大事な人に言う言葉なんでしょ? この言葉だけ昨日覚えたんだ」

「ありがとうアサカ。俺もアサカの事を愛してるよ」

 やはりこの言葉を言うと顔が熱くなる。アサカも嬉しそうに微笑んでくれている。しばらくの間、二人でくっついて座っていた。
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