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謎の異空間に飛ばされたら金髪美少女が迫ってくるんだが?

91.ドス黒いオーラ

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 やれやれ、緊張が緩んでどっと疲れが出た……。ふと、ルイさんと戦う前に気になることを言っていたことを思い出した。

「そういえば、俺の固有スキルの能力に、女の子を惚れさせる力があるとか言ってませんでした?」

「ああ、それは嘘だ。樹の固有スキルにそんな能力は無い。樹が本気で向かってくるように、煽っていただけだ」

 やはり嘘だったのか、良かった。と俺がホッとしていると、久奈が不満げに口をとがらせている。

「私が樹を好きになったのは、樹が固有スキルに目覚める前だったのを忘れたの?」

 結月も眉間に皺を寄せて不満をあらわにしている。

「私だってそうだよ。私が固有スキルの能力のせいで、樹の事を好きになったと思ったのなら、私の事を見くびっているよ」

「もちろん違うとは思ったよ。でも、もしそうだったらどうしようって少し思っただけ……」

「仮にその力のせいで、イツキの事を好きになったのだとしても、好きなものは好きなんだからどうでもいいよ!」

 アサカは久奈や結月とは感じ方は異なるようだが、確かに俺の事を好きでいてくれるなら、能力がどうこうなどは些細なことなのかもしれない。

 久奈が頬を緩め明るい表情に変わり俺に言う。

「ねぇねぇ、樹。それよりもさー、私の事を心の底から愛してるって必死の形相で叫んでたよね?」

「な……、見てたの?」

 俺が慌てふためいていると、結月も壁に複数設置してあるモニターを指差してニコニコと微笑んでいる。

「そこのモニターに全部映ってたよ。結月は誰にも渡さない! 俺とずっと一緒にいるんだ! って叫んでいたけど、これってプロポーズだよね?」

「う……、それは、その……」

「アサカは俺の物だ! 俺と家族になるんだ! の方がプロポーズでしょ!? だって家族だよ、奥さんにしてくれるんでしょ?」

「……」

 俺が恥ずかしさのあまり黙っていると、なぜかセフィリアも参加してくる。

「私はイツキに恋人になれって言われたわ」

 あの、セフィリアさん……? なぜそんなに自慢げに胸を張ってドヤ顔してるんでしょうか?

 久奈と結月とアサカはは半眼で俺を見ながら俺に視線を送る。三人のプレッシャーが俺に突き刺さる。久奈が代表して口を開いた。

「結局セフィリアを恋人にしてるしー」

「いや、ピルロークを押さえてもらう為にバフ目的で、一時的にだよ! もう解除するよ。アシストさん、セフィリアの恋人設定を解除して!」

 俺のお願いに淡々と音声アシストが答える。

「対象に恋人設定の解除を通知します……、恋人設定の解除を拒否されました」

 俺は「え、なんで……?」とセフィリアを見る。

「私はまだイツキに借りを返せたと思っていないわ。返せるまでは戒めとして恋人として付き合ってあげるから」

「何それ? ちょっと意味わからないんだけど……。そもそも誘拐は狂言だったわけで、借りなんて無かったのでは?」

 セフィリアは俺をキッと睨み語気を強める。

「三人も恋人がいるくせに細かいのよ! 今更一人増えたところで何も問題ないでしょ!」

 久奈と結月とアサカは声をそろえてボソッと呟いた。

「「「うわ、セフィリアがデレた」」」

 セフィリアは「デレてないし!」と即座に反論する。

 美少女四人からのプレッシャーが俺に向けられている。コレ、どうしたらいいんだ? と俺が意識を飛ばし虚空を眺めていると、ルイさんが話しかける。

「さて、今後の事を相談したいのだが、いいか?」

 ナイス助け舟! 俺は即座に返事をした。

「はい、いいです! お願いします!」

 普段ならいつまでも見つめていたい程の美少女達だが、今は怖くて彼女たちに視線を向けることはできない。さあ早く今後の話とやらを始めてもらおうか。

「私は世界を征服したい訳でもなければ、世界の秩序を守る正義の味方という訳でもない。今後も興味の湧いたものを研究していくつもりだ。言うなれば、知識欲という欲望を満たすことを望んでいる」

「だが、私の研究の成果を製品として世の中に出すことで、この星の経済や軍事力の均衡を崩してしまい、私に敵意を持つ勢力を作ってしまった。その結果として、私自身に跳ね返ってきたのも事実だ。裏でピルロークがうまく立ち回ってくれていた事には感謝している」

 ピルロークは嬉しそうにウンウンと頷いている。それを無視して、ルイさんは語り続ける。

「今後は、ピルロークに意図的に新技術を流出させてもらい、世界の経済や軍事力の均衡を取りつつ、私は好きな事をやろうと思っている」

 この人は、ぶれないな……。

「なので、君達にはエルピスとパンドラが裏でつながっていることを誰にも漏らさないで欲しい。この事を知っているのはここにいる者だけだ。パンドラの連中は幹部含めピルローク以外の者は誰も知らないし、エルピスも誰にも知らせてはいない」

「……分かりました」

「それと、今後はアサカが強力な魂力の持ち主であることを公表し、副社長に就任してもらう。セフィリアと共にエルピスの副社長として仕事をこなしてほしい」

「げ……。でも、いつまでも何もしないで遊んでばかりいる訳にもいかないか……」

 アサカは、嫌そうに顔を引きつらせたものの、すぐに納得した様だ。

「セフィリアは仕事の負担が減るが、空いた時間は樹に師事し、固有スキルを支配者クラスに成長させる事と、久奈と結月とアサカの様に樹と魔力を混ぜて凝縮し固有武器を作成してくれ」

「はい、承知しました!」

 セフィリアはピシッとルイさんに礼をした後、俺の方を向いて「よろしくね! イツキ」と素敵な笑顔でお願いした。

 今までのツンツンした雰囲気からは想像もできない程の可愛さだ。心臓をわしづかみにされたのでは? と思うほど俺の心臓がギュっと収縮する。直後、不穏なプレッシャーを感じ久奈、結月、アサカの顔を見る。三人とも口元は笑っているが、目は笑っていない。怖い、怖すぎる……。

 ここで流れに飲まれると、後が大変だ。俺の意見をハッキリ言わなければ!

「ルイさん、セフィリアが俺達と一緒に鍛錬するのはいいんですけど、セフィリアと魔力を混ぜて武器を作るのは困るというか……」

 ルイさんは、ニタリと嫌らしい笑みを浮かべている。

「樹はセフィリアを指導するのが嫌なのか?」

 すると、セフィリアは顔を悲しそうに曇らせて、俺の腕にすがる。う……セフィリアの顔が近い。

「イツキ、今まであなたを見下すような態度をしてごめんなさい。今後は師として敬うから指導して!」

「そんな事気にしてないよ! 今まで通りでいいよ! でも固有武器を作るためには魔力を混ぜないといけなくて、そうすると、その、言いにくいんだけど……」

「分かっているわ! とても厳しい鍛錬を積まないと、魔力は混ぜれないんでしょ? 私、どんな鍛錬でもこなして見せるから、お願い! イツキ」

 俺が問題視しているのは、そこじゃないんだよね……。しかし、必死にお願いするセフィリアの顔、ヤバイ、可愛すぎる。

 セフィリアの可愛さに、つい見とれてしまった。俺が硬直していると、再び重いプレッシャーが俺を突き刺してくる。ハッと我に返り久奈、結月、アサカの方を見ると、三人の美少女が微笑みながらドス黒いオーラを放っている。再び久奈が代表して口を開く。

「樹、後で反省会だね♡」

「……はい」

 くっ、俺の頑張りは無駄だったようだ。
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