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不気味な男

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「秀吉様~!見て見て~!
レッサーパンダ!」

「ああ、めっちゃ可愛いな~」

俺は佐藤と高木に復讐した後
そのまま学校をバックレて
寧々と一緒に動物園デートに来ていた。

「はぁ~私動物すっごい大好きです~
見てるだけで心がすっごく
癒されるんですも~ん
秀吉様はどうですか?」

「うん、俺も好きだよ
なんか見てるとこう……心がホワ~っと
なるもんな」

「ですよね~!
あ!秀吉様!向こうにコアラがいます!
近くで見に行きましょう!」

そう言って俺の手を引っ張る寧々。

(可愛いな~……寧々……)

彼女と一緒にいる時は
嫌な事を全て忘れられる。
俺にとってはまさに天使の様な存在だ。
そんな彼女と2人で
動物園デートできる俺は
今日本で一番幸せな存在だと思う。

「はううう~!可愛いすぎる~!」

コアラを見て興奮する寧々。
そんな彼女に手を振るコアラ。

「きゃ~!見ました!?秀吉様!
あのコアラ今私に手を振りましたよ!?」

「え?コアラって手を振るの?」

「そりゃあ振りますよ!
生きてるんですから~!
さ!秀吉様!今度は向こう行って
ライオン見ましょう!
で、その次はゾウを見て
それからそれから……」



~2時間後~

「ふにゃあ~……
凄まじい程の幸福感~……」

「ハハハ、いっぱい見たもんな~動物」

現在俺と寧々は園内にある
ベンチに座っていた。

「秀吉様」

「ん?」

ギュッ

急に俺に抱きついてくる寧々。

「ど、どうした?」

「秀吉様、ありがとうございます
今日私をここに連れてきてくれて
私すっごい幸せです」

「……勘弁してくれよ
お礼言われる程の事なんて
してないよ俺は……」

チュッ

「!!」

俺が答えた瞬間
寧々は抱きついた状態のまま
優しく唇にキスをしてきた。

「ね、寧々?」

「んふふ、可愛い……
顔赤くなってますよ?」

「も~……からかうなって~」

満更でもない俺。

「ところで秀吉様、何か食べに行きませんか?
私お腹空いちゃいました」

「そうだな……もうお昼過ぎてるしな……
よし!確か向こうの方に
ファストフード店あったし
そこで何か食べようか!」

「は~い!」

「ごめん寧々、その前に
トイレ行ってきていいかな?
俺ちょっと膀胱が荒ぶってる」

「それは大変!どうぞどうぞ!
私に構わず行ってきてください!」

ダ~ッ

トイレに駆け足で行く俺。

(フフフ、秀吉様と一緒って
ホントに楽しいな~)

ザッ……ザッ……ザッ……

寧々がベンチに座って
秀吉を待っていると
モロ整形顔の小柄な男が
彼女の元に近づいて来た。

「ねぇ君」

「え……?私?」

「可愛いね、歳はいくつ?」

「え……15歳ですけど……」

「15……ふ~ん………」

寧々の返答に
男はややニヤケ顔になる。

(な……何この人……?
なんか気持ち悪い………)

寧々は男を不気味に感じ
その場から離れようとする。

ガッ

「!?」

男はベンチから立ち上がろうとした
寧々の腕を突然掴みだした。

「よし!行こうか!」

「は、はい!?」

「この園を出てちょっと行った所に
いいフレンチの店があるんだ
今から俺のフェラーリに乗って
そこへ行って食事でもしよう」

「ちょ……ちょちょちょ!!
行きませんってば!!
いきなり現れて
何を言ってるんですかあなた!?」

寧々がそう言うと
男は彼女の顔に自身の整形丸出しの
醜い顔を近づけて言った。

「俺の誘いだよ?行くしかないでしょ」

男が発言すると
寧々の背中にゾクッと悪寒が走った。

(き、気持ち悪い……!!)

そう思った寧々は
自身を掴んでる男の腕を
必死に振り払おうとする。

「わ、私行きませんから!!
私には最愛がいるんで!!
離してください!!」

「俺との初めてのデートは緊張するもんさ
でも安心して?
しっかりエスコートするからさ」

(ダメだコイツ……!!
会話が成立しない!!)

寧々がそう思った瞬間
トイレを済ませた秀吉が
2人の元に駆けつけて来た。

「何やってんだてめぇぇぇ!!!」

バキィッ!!

秀吉は叫びながら
彼女を掴んでる男を殴りつけた。

ズシャアッ

「がはっ……!!」

ブザマに地面に倒れる男。

「秀吉様!!」

駆けつけた秀吉に
即座に抱きつく寧々。
相当怖かったのだろう。

「大丈夫か寧々!?
何があったんだ!?」

「ベンチに座って
秀吉様を待ってたら
突然この男が現れて
私を無理やり
デートに連れて行こうとしたんです!」

「な、何だって!?」

秀吉は地面に倒れている
整形男の顔をチラッと覗く。

「コイツは……!!岸奨吾(きし しょうご)!!」

「し、知ってるんですか!?
何者なんですかコイツ!?」

「ああ……コイツは俳優だよ
それも四流のな」

「俳優……?」

2人が会話していると
岸は地面に倒れた状態で
秀吉の事を睨みながら
こう言った。

「おい……そこのお前……
自分が何したか分かってんのか……!?
俺を……岸奨吾を殴ったんだぞ……!?
絶対に許さねぇ………!!
俺の人脈使ってお前の人生破滅させてやる!!」

そんな事を言う岸に
秀吉は言う。

「………おい、一つ言っていいか?」

「ああ!?」

「俺、お前の事大ッ嫌いだったんだよな
テレビを点けてて
バラエティやらCMやらに
お前が映る度に
すげー不快な気分になってたわ」

「なにぃ!?」

「ちょうどいいや……
この機会にお前を
徹底的に追い込んで
芸能界から追放してやる
そして二度とテレビに映らねえ様にしてやる」

「ハハハ!!!!
お前みたいな芸能関係でもない
一般人のガキに何ができるってんだ!?」

「フッ、今に分かるさ……
寧々、10分くらい時間をくれないか?
今から場所を変えてコイツの事
破滅させてくるからさ」

「私も行きます!!」

「え?」

「もう1人は嫌です!!
また変なのに絡まれたら
怖いですもん!!」

「そ、そっか……
そうだよな………
分かった、一緒に行こう!」

「はい!」

「つーワケだ四流俳優さん
ここじゃ人目がつくし
ちょっと場所変えようか」

「何を言って……!?」

「チートON"樹海に移動"、対象は
俺、寧々、岸だ」

ブオンッ

3人はその場から樹海へと消えた
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