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序章
劍
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薄暗い洞窟の中、乾いた靴音が響く。かすかな硝煙の匂いと宙に漂うほこりがなんともむず痒い。
一人で洞窟に籠もるのは慣れたが、それでも利点というものは特にない。ソロ狩りという言葉さえほぼ聞かないような状態である。それは当たり前なのだ。モンスターが跋扈するこの世界で背中を預ける相手がいること自体が大きなアドバンテージになる。それがないことにリスクは無限にあっても、得な部分はなくて当然だろう。それでも俺がソロで行動し続けるのには理由がある。仲間がいないわけではない。そうではなく、俺には絶対になさなければいけないことがある。そのためにはソロ狩りが必要なのだ。
カラン、と右前の通路から音がした。自然にするような音ではない。確実にモンスターがいるのだ。俺は右手の中にある軽い剣を強く握り直した。後ろにおいた左足に力を込め、ひと飛びで通路に踊り出る。空中で確認できたのは四足歩行の黒い背中。おそらくハウンドウルフだ。視界には一頭のみだが、こいつらは群れで行動する習性がある。戦闘が開始すれば続々と出てくることだろう。一頭に時間をかけるわけにはいかない。着地と同時にハウンドウルフが振り返る。だが俺もすでに構えている。
ーー片手剣用ソードスキル・メテオドライヴ。
俺が放った渾身の突き技がその黒い体を爆音とともに貫いた。前から聞こえてくる複数の足音。曲がり角から現れたのは六頭。後ろから2番目の一頭だけが少し大きい。おそらく群れのリーダーなのだろう。俺は剣を右肩の上に置き、もう一度スキルを発動させる。
ーー片手剣用ソードスキル・グランドブレイブ。
赤色に光った刀身が次第にジェットエンジンのような轟音を放ち始める。前の三頭のハウンドウルフが急ブレーキをかけた瞬間、俺はスキルの待機状態を開放した。左足と右手が閃くような速さで動き出し、右下から音速に近い速度で斬撃が放たれる。その剣が前の2頭の体をほぼ完全に両断し、剣は2撃目の水平切りを放つ。三頭目の喉元を完全に切り裂くと、その後ろからもう一頭が飛び出してくる。
上手い。相手が単なるモンスターだとしてもそう思った。しかし、俺の技はまだ終わっていない。右手が再び高速で動き、上からの斬り下ろしを放つ。ソードスキルに、自身の体重をかけて威力をブーストする。四頭目を切り裂いたあと自動的に四撃目の斬り上げを放つが、近くにウルフはいない。スキルが終了し、隙を最小限にするためにバックステップしてから、剣を握り直す。あと残っているのはリーダーっぽい個体と、普通の個体が一体。お互いに出方を伺っていたが、大きな個体が飛び込んできたため、即座に剣を縦にかざして、ブロックする。爪と剣がぶつかり、高い音を出す。洞窟の壁で反響する音に耳を灼かれながら、右足に体重をかける。体をねじりながら、爪を受け流し、そのまま回転斬りを放つ。
「…浅いか」
つぶやきながら、左手を伸ばす。左からもう一頭が飛びかかってくる。頭の更に向こう、背中に手をつき体重をかける。そのまま体を傾ける。体は宙に踊り出て、側転の要領で後ろに回り込む。立ち上がるその動きに合わせて全力の斬り上げを当てるとその弾け飛んだ体の向こう側から影を衝くように飛びかかってくる最後の一頭。群れの首領を水平斬りで仕留める。
「…はぁ」
短いため息をつきながら、すぐ後ろに迫っていた壁にもたれ、ヘロヘロと崩れ落ちる。右手の腕時計を見ると、すでに午後2時をまわっている。昼飯は……まだだ。
「腹、減ったなぁ…」
重たい体を引きずりながらうろ覚えの出口へと歩き出す。
一人で洞窟に籠もるのは慣れたが、それでも利点というものは特にない。ソロ狩りという言葉さえほぼ聞かないような状態である。それは当たり前なのだ。モンスターが跋扈するこの世界で背中を預ける相手がいること自体が大きなアドバンテージになる。それがないことにリスクは無限にあっても、得な部分はなくて当然だろう。それでも俺がソロで行動し続けるのには理由がある。仲間がいないわけではない。そうではなく、俺には絶対になさなければいけないことがある。そのためにはソロ狩りが必要なのだ。
カラン、と右前の通路から音がした。自然にするような音ではない。確実にモンスターがいるのだ。俺は右手の中にある軽い剣を強く握り直した。後ろにおいた左足に力を込め、ひと飛びで通路に踊り出る。空中で確認できたのは四足歩行の黒い背中。おそらくハウンドウルフだ。視界には一頭のみだが、こいつらは群れで行動する習性がある。戦闘が開始すれば続々と出てくることだろう。一頭に時間をかけるわけにはいかない。着地と同時にハウンドウルフが振り返る。だが俺もすでに構えている。
ーー片手剣用ソードスキル・メテオドライヴ。
俺が放った渾身の突き技がその黒い体を爆音とともに貫いた。前から聞こえてくる複数の足音。曲がり角から現れたのは六頭。後ろから2番目の一頭だけが少し大きい。おそらく群れのリーダーなのだろう。俺は剣を右肩の上に置き、もう一度スキルを発動させる。
ーー片手剣用ソードスキル・グランドブレイブ。
赤色に光った刀身が次第にジェットエンジンのような轟音を放ち始める。前の三頭のハウンドウルフが急ブレーキをかけた瞬間、俺はスキルの待機状態を開放した。左足と右手が閃くような速さで動き出し、右下から音速に近い速度で斬撃が放たれる。その剣が前の2頭の体をほぼ完全に両断し、剣は2撃目の水平切りを放つ。三頭目の喉元を完全に切り裂くと、その後ろからもう一頭が飛び出してくる。
上手い。相手が単なるモンスターだとしてもそう思った。しかし、俺の技はまだ終わっていない。右手が再び高速で動き、上からの斬り下ろしを放つ。ソードスキルに、自身の体重をかけて威力をブーストする。四頭目を切り裂いたあと自動的に四撃目の斬り上げを放つが、近くにウルフはいない。スキルが終了し、隙を最小限にするためにバックステップしてから、剣を握り直す。あと残っているのはリーダーっぽい個体と、普通の個体が一体。お互いに出方を伺っていたが、大きな個体が飛び込んできたため、即座に剣を縦にかざして、ブロックする。爪と剣がぶつかり、高い音を出す。洞窟の壁で反響する音に耳を灼かれながら、右足に体重をかける。体をねじりながら、爪を受け流し、そのまま回転斬りを放つ。
「…浅いか」
つぶやきながら、左手を伸ばす。左からもう一頭が飛びかかってくる。頭の更に向こう、背中に手をつき体重をかける。そのまま体を傾ける。体は宙に踊り出て、側転の要領で後ろに回り込む。立ち上がるその動きに合わせて全力の斬り上げを当てるとその弾け飛んだ体の向こう側から影を衝くように飛びかかってくる最後の一頭。群れの首領を水平斬りで仕留める。
「…はぁ」
短いため息をつきながら、すぐ後ろに迫っていた壁にもたれ、ヘロヘロと崩れ落ちる。右手の腕時計を見ると、すでに午後2時をまわっている。昼飯は……まだだ。
「腹、減ったなぁ…」
重たい体を引きずりながらうろ覚えの出口へと歩き出す。
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