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- 19章 -
- 矛盾と決意 -
しおりを挟む「じゃぁ、俺はそろそろ帰るけど学はどうする?」
「俺は…もう少し作業していきます」
「おけ!部室の戸締まりだけよろしくー!」
「はい。じゃぁ、また明日」
「ん!またあしー…あっ」
「? どうしました?」
部室の扉から既に半分以上体を出していた冴霧だったが、唐突に何か思い出した様に声をあげ振り返った。
「ちょっと気になってたんだけどさ」
「はい」
「花壇の端っこで育ててるやつ、あれてっきり文化祭で出すのかと思ってたけど…違うの?」
「あっ…ぁー…、あれは個人的に、その、育ててみたかったものなので」
「そうなんだ?綺麗に蕾つけてるから勿体ない気もするけど。なんかめっちゃいい匂いするし。学が良いなら売ってみても良いんじゃない?」
「でも…花言葉がちょっと、あれなんで…」
「花言葉?」
口にするのは少し戸惑われ、手短にあった紙にサラサラと書き出すと冴霧に差し出した。目の前に差し出された文字を一読した冴霧はどことなく気まずそうな顔をし、すぐさま納得したように苦笑をもらした。
「確かに、花言葉添えて売るにはあれだなっw」
「ですよね」
「じゃぁ、邪魔してごめんっ、また明日!」
「はい、お気をつけて」
今度こそ部室から去っていく冴霧の後ろ姿を見送るとクリアファイルから数枚の紙を取り出した。
そこには名刺より少し小さいサイズで印刷された売り出す花の写真がズラリと並んでいる。写真の下部には半透明に加工されたスペースが作られており、花の名前や花言葉を記入できるようになっていた。
本来はそれらも記入した上で印刷すれば早いのだけど、手書きした方が愛情や真心が伝わる気がしてこの方法を取った。
黙々と作業を進めること30分程、半分くらいまで書き終わったところでペンを置いた。今から片せば運動部が部活を終える頃合いだろうと卓上に広げた紙をまとめ始めるが、最後の1枚で手が止まる。
そこには売りに出さないと言ったはずの花が印刷されていた。
売りに出さないと言ったのは嘘ではない。
嘘ではないが……
『大事なものだ。…すごく』
決意に満ちた表情でしばしそれを眺めると、大切そうにファイルにしまい部室を後にしたのだった。
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