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- 20章 -
-文化祭っ!!-
しおりを挟む先程までの重苦しい空気を完全に無視し、急に芝居を始めた市ノ瀬に思考が追い付かない。
窓からから差し込む光を背に受け、逆行の中から差し出された手と市ノ瀬の顔とを交互に見やる。
なんか……
なんだかー…
「ふっ……」
「…んだよ?」
「ふはっ!あはははっ!!なんだよお前っ、なんか、ちょーロミオじゃんっ!!すげぇっ!!」
「だろ?腐る程近くで見てきたんだ。大丈夫、任せとけって。気負うことなんてねぇ。お前はいつも通りにやれば良い」
「…うんっ!」
そうだ、本番はもう直前だ。
いい加減気持ちを切り替えないといけない。
市ノ瀬だって他の部員と同じく困惑し動揺もした筈だ。なにも分からないそんな状態なのにまるで心情を察してくれたようになにも聞かずに、すんなりと現状を受け入れ自分達の選択を無条件に肯定してくれた。混乱する部員達をまとめて、班乃の抜けた穴を埋めるために配役変更まで買って出てくれて…
怒ってくれて、助けてくれて。
自分よりも市ノ瀬の方が大変な筈なのに
元気付けようとまでしてくれて…
『それに応えないでどうするんだっ』
それに自信ありげ振る舞う姿を見ていると、なんだかうまく行く気しかしなくなってくるから不思議だ。
『…凄いな、睦月は』
「ありがと睦月っ!!がんばろ!!」
「おう」
セリフと共に差し出された市ノ瀬の手をにっこりと笑い力強く取った安積の頬に一筋の涙が伝う。
『…ほんと、感情豊かなやつだな』
泣かないで欲しい。
笑っていて欲しい。
でもこんな嬉し涙なら
いっぱいあっても良い。
「とりあえずさっさと泣きっ面引っ込めて化粧直してこい。泣くなら後でな」
「りょっ、りょーかいっ!」
繋ぎあった手をこのまま引き寄せ抱き締めたい。
そんな衝動を押さえつつ手を離した。
今は舞台に集中しなくては。ミスなく、誰も怪我することなく無事に終われるように。
『うっし、やるかっ!』
存分に、嬉し涙を流せるように。
時間が惜しい。残り少ない時間でどこまで出来るかは分からないが悔いを残さない為にも出来ることは全てしておきたい。最後の最後となる打ち合わせをするため、部員達の待つ舞台へと向かった。
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