504 / 1,168
- 22章 -
- 哀 -
しおりを挟む責める気持ちは分からないわけではない。でも、そんなの全部結果が出てからしか分からないものだ。そんなことを言い出してしまったら、なにも出来なくなってしまう。
「明も、楓さんもっ!事故に遭う為にそうしたんじゃないっ!事故に遭うって分かっててそうしたんでもない!運転手を擁護する事はできないけど、その人だって事故を起こすために運転してたんじゃないでしょ!?誰だって事故が起きるなんて分からなかったんだからっ…明のせいじゃ絶対ないよっ」
運が、悪かったとしか言いようがないのだ。後数分ずれていたら、後数歩ずれていたら、事故に遭っていたのは他の誰かだったのかもしれないのだ。
そんなもしもなんて考えても、キリがない。
「そう、かもしれませんね」
「明……」
賛同しきらない返答が、自分を許せていないのを表していて。頭では分かっていたとしても後悔がなくなるわけでもないし、もしもを考えることを止められないのだろう。
分かってる、そんなすぐに整理が出来ることなわけない。
『お姉さんの容態だって、まだ安心できない状況なんだし……』
どんな慰めの言葉も、どんな応援の言葉も、今はどれも相応しい気がしない。
置いた手だけが自分に出来る全てな気がして、不甲斐なくなさに情けなくなる。
「どうして、こうも、こんな短期間で、僕の周りでばかり、こんなことが起こるのでしょう…?どうして、僕の大切な人達ばかりが、こんな目に遭ってしまうのでしょうか?どうして、僕の手からは、いつも溢れていってしまうんでしょう?どうして、皆居なくなってしまうんでしょう?」
そんな悲痛な言葉には凡そそぐわない、表情のない顔で淡々と話し続ける。このまま全てを理性で押し込め内に溜め込み続けてしまっていては、心が壊れてしまう。
「……あのさっ、色々あって疲れたでしょ?少し、休もうよ。お姉さんだって元気に目を覚ますかもしれないし、悪い方向にばっか考えてると明にとっても良くないよ」
「………」
静かに瞬きを繰り返すだけの班乃の手から中身の冷め始めているカップを取ると、手を引き立ち上がらせそのままベッドへと連れていく。
「少しだけ寝て、頭も休ませてあげよ?大丈夫、俺はどこにも行かない。側に居るから」
きっと今は頭も体もいっぱいいっぱいなはずだ。なにが正解か分からないけれど誰かを失う事に怯えているのなら側に居ると言葉にするだけでも少しは安らいでもらえるかも知れない。
けれどそれだけじゃ足りない気がして、ベッドに腰掛け力なく置かれた班乃の両手を握り俯いた頭におでこを乗せた。
「だから、ゆっくりお休み。あっきー」
0
あなたにおすすめの小説
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
告白ごっこ
みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。
ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。
更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。
テンプレの罰ゲーム告白ものです。
表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました!
ムーンライトノベルズでも同時公開。
龍の寵愛を受けし者達
樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、
父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、
ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。
それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて
いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。
それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。
王家はある者に裏切りにより、
無惨にもその策に敗れてしまう。
剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、
責めて騎士だけは助けようと、
刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる
時戻しの術をかけるが…
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
僕のポラリス
璃々丸
BL
陰キャでオタクなボクにも遂に春が来た!?
先生からだけで無く、クラスカースト上位の陽キャ達も、近隣に幅を効かせる不良達からも一目置かれるまるで頭上の星のようなひとだ。
しかも、オタクにまで優しい。たまたま読んでいたボクの大好きなコミック「恋色なな色どろっぷす」を指差して、「あ、ソレ面白いよね」なんて話しかけられて以来、何かと話しかけられるようになっていった。
これだけだとたまたまかな?と思うけど距離も何かと近くて・・・・・・コレ、ってボクの勘違い?それとも?
・・・・・・なぁーんて、ボクの自意識過剰かな。
なんて、ボクの片思いから始まる甘酸っぱいお話。
みたいなBSS未満なお話。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる