Pop Step

慰弦

文字の大きさ
562 / 1,168
- 23章 -

- 創始 -

しおりを挟む


凄く嬉しいこと、たくさん言ってくれてるのに
凄く大事なことも、伝えてくれてる筈なのに

情報量の多さとあまりにもポンポンと進んでく会話に、ついていけない。

今はただ、添えられた手が暖かくて
頑張らなくて良いって言葉が優しすぎて

手放してしまったと思った物が

まだ直ぐ側にあってくれた事が嬉しくて

ずっと側に居たいと言ってくれて

自分に差し出される想いが

嬉しくて、安心をくれてー


「……もう、駄目なんだって思ってた」


漸く絞り出した声と共に、容量を超えた涙が安積の頬を次々とこぼれ落ちる。


「もう、1人なんだって思ってた。気を使って、優しくしてくれて、色々してくれてたのに、そんな事にも気がつかないで、酷いことして…頼る資格なんてないし、見放されたって思ってた」

「そんなわけないだろ。ばーか」

「お前は良く言ってくれたけど、俺、自分の事で手一杯で、色んな人を傷つけてばっかで、申し訳なくてー」

「誰でもそういう時はあるだろ」

「言えないこともたくさんあって、迷惑だっていっぱいかけたしー」

「そんなのしょうがないだろ。お前にかけられる迷惑なら喜んで受けるわ」


言葉を紡ぐ毎に止めどなく流れ落ちるそれを、一つ一つ市ノ瀬の親指が拭い去っていく。涙で滲むその目に輝く光がとても幻想的で、そこに映る自分の姿が今彼の心を動かしているのは他の誰でもなく自分なのだと、不謹慎にも市ノ瀬の中に幸せの粒を落としていく。


「なんでだよー」

「なにが?」


優しく頬を撫でるその指に、言葉にする不安や後悔を全て肯定と変えていく数々の言葉に、怖いくらいに救われていくのを痛いくらいに感じる。

どうして?
どうして?

自分の頬に触れるその腕を掴んで目を閉じた。

下らない嫉妬で悩んで落ち込んだあの時も

怖くて辛くて、発作をおこしたあの時も
目を覚まし、不安に怯えそうになったあの時も
そんな感情に揺れながら、同じベッドで寝たあの時も
そして目覚めたあの朝も
自分の気持ちに嘘をつき、班乃と2人話すその前も

そして、今日も、今もー

安らぎや勇気をくれたのは、いつだってこの温もりだった。知らず知らずの内に何度も差しのべられていた暖かさは、いつの間にか多くの物を与えてくれていて、手離す事なんて考えられないくらい、失くしてしまったたと考えただけで立ち上がれなくなりそうなくらい、大きな大きなものになっていてー


「なんで、そんなに、甘やかすんだよ…」

「好きなやつを甘やかさないでどうすんだ」

「1人じゃなにも出来ないやつになりそうで怖い」

「1人にしないから大丈夫」

「また迷惑かけるかも」

「いいよ、別に」


こっちは真剣に話してるのに、なんでそんなに嬉しそうに笑ってんだよ。もう、わけがわからない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

僕のポラリス

璃々丸
BL
 陰キャでオタクなボクにも遂に春が来た!?  先生からだけで無く、クラスカースト上位の陽キャ達も、近隣に幅を効かせる不良達からも一目置かれるまるで頭上の星のようなひとだ。  しかも、オタクにまで優しい。たまたま読んでいたボクの大好きなコミック「恋色なな色どろっぷす」を指差して、「あ、ソレ面白いよね」なんて話しかけられて以来、何かと話しかけられるようになっていった。  これだけだとたまたまかな?と思うけど距離も何かと近くて・・・・・・コレ、ってボクの勘違い?それとも?  ・・・・・・なぁーんて、ボクの自意識過剰かな。  なんて、ボクの片思いから始まる甘酸っぱいお話。  みたいなBSS未満なお話。  

処理中です...