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- 26章 -
- 幸せの貌 -
しおりを挟む「良かったな。これでイルミ見やすくー」
「ー…き」
「ん?なんか言っー」
「好き。お前が…好き」
「……」
たったの2文字。言い終えるのに秒もかからないだろうその言葉は今までの人生で1番勇気のいる言葉で、不安や期待、言い表せないような様々な感情が混ざりあい今にも心臓の音が聞こえてきそうだ。
どんな答えが返ってくるのか。
どんな顔をしているのか。
怖くて上を向く事が出来ずにジッと地面へと視線を落としたまま市ノ瀬の反応を待ち、小さく息を吸う音が聞こえるとぎゅっと手を握りしめ目を瞑った。
「…さんきゅー。ケーキも買ったしそろそろ帰るか」
「……え?」
「イルミもここで終わりみたいだし」
何事もなかったかのように踵を返し駅へと向かい歩きだした市ノ瀬の後ろ姿に思わず足が地面へと張り付き、呆気にとられたように目だけが市ノ瀬を追う。
『ぇ……えっ?もしかして今、流された?』
混乱し呆けている間にも止まることなく遠ざかっていく市ノ瀬を、現状の理解しきれない頭でなんとか足だけは動かし後を追いかけた。
「まっ、待ってよっ!?」
「なんだよ、ぼんやりしてっと置いくぞ」
「いやっ、そーじゃなくてっ」
まるで触れたくないかのような態度に怖じ気づきそうになる。けれどこのままはっきりとさせない微妙な空気のまま今日を終えてしまったら、もっと言いづらくなってしまうだろう。
「睦月っ!」
進み続ける市ノ瀬の腕を掴んで止めるが振り返る事はなく言葉を返すでもなく、ただただ前を向いたぬままだ。
『怖い…でも…』
今どんな言葉をかけるのが正解なのだろうか。整わない頭をフル回転させ考えていると、抑揚のないトーンの押さえられた声がポツリと落とされた。
「安積」
「………なに?」
「その話、また今度にしないか?」
「え?」
この展開は全く考えてなかった。yesかnoかではなく先送りにされるなんて…予想外の展開に頭が真っ白になる。
「あー…もちろん嬉しい、んだけど、今は場の雰囲気に飲まれてるだけだって」
「…飲まれてる?」
「大事な事なんだし冷静になって考えろよ」
それだけ言うと再び帰路へと歩きだす。
これはなんだろう。
悲しいと腹立たしいがいっぺんに襲ってきてなんだか良く分からない。
振り絞った勇気はまるで意味をなさなかったかのようで、怒りたいのか泣きたいのかすらも分からない。
分からないけれど、このままじゃ駄目なことは分かる。動きたくないと駄々をこねる足を無理やり動かして市ノ瀬の後を追った。
「待ってよっ!」
「なに?」
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