1,031 / 1,168
- 28章 -
-憎悪と情愛-
しおりを挟む話をしながら当時の記憶をたどってみる。
妻に先立たれ、そこから動くことも出来ず、息子にも会いに行けないと泣いていたあの人は、嬉しそうな誘い声を出し、自分を抱き締めたあの人は、結局どうなってしまったんだろうか?
自分が孤児院に連れていかれ、再度戻ってきた時には居なくなってしまっていたので、知りようがなかった。
しかし、死んで居たとしてもなんらおかしくなかったあの怪我で、連れていかれたとしてもおかしくなかったあの状況で、何故自分は助かったのだろうか?
あんなにも嬉しそうに、
“一緒にいこう” と言ったのに。
もし、逝こう ではなく行こう だったのだとしたらー
あの地獄の様な日々から、救い出そうとしてくれた言葉だったのだとしたら…
現状から抜け出し、幸せな未来へ共に歩き出そう。
そういう意味が込められていたのだったら?
『私はあの世で、そなたは現世で幸せに暮らそう、みたいな? …なんてね。まぁ、なにかに乗って会いには来てくれなかったけどw』
とはいえ、いくら好き勝手考えた所で、もう真実を知ることは出来ないし、継母との関係が修復不可能な程に壊れるきっかけでもあった為、少々複雑な所だけれど。
なにはともあれ、成仏と言う現象が実際にあるのかは分からないが、今となっては、ただただ心休まる所に行けた事を願うしかない。
「祐子さんってさ、お化けとさ幽霊とか、凄く苦手な人じゃない?だからそういうの止めてって言われててさ。最初はそうしようとは思ったんだよね、ちゃんと。でも俺には視えてるわけだし、それまで沢山話聞いてくれてたし…無視すると悲しそうにするから、どうしても出来なくてさ…」
「…そっか。聖からしたらそのおじいさんも、生きてる人と変わらない…って感じだったんだな?」
「そうそう。で、おじいさんと話すようになって2年くらい…かな?確か。祐子さんが聖を身籠ったの。経験したことないし、する事も出来ないから、本当の意味で理解してあげることは出来ないんだけど…祐子さん、悪阻酷かったみたいでね。ご飯も食べられないし、寝られないし、常に情緒不安定だったみたいで…妊娠うつ状態になっちゃってたんだって」
「妊娠…うつ」
「そう」
情けないことに、マタニティーブルーや産後うつと言う言葉は聞いたことはあったのだけれど、妊娠うつというものがあると知ったのは、だいぶ後になってからの話だ。
鬱というものは気の持ちようだけでならずに済むものでも治るものでもない。ストレスが原因となる脳の病気だ。
0
あなたにおすすめの小説
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
告白ごっこ
みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。
ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。
更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。
テンプレの罰ゲーム告白ものです。
表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました!
ムーンライトノベルズでも同時公開。
龍の寵愛を受けし者達
樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、
父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、
ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。
それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて
いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。
それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。
王家はある者に裏切りにより、
無惨にもその策に敗れてしまう。
剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、
責めて騎士だけは助けようと、
刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる
時戻しの術をかけるが…
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
僕のポラリス
璃々丸
BL
陰キャでオタクなボクにも遂に春が来た!?
先生からだけで無く、クラスカースト上位の陽キャ達も、近隣に幅を効かせる不良達からも一目置かれるまるで頭上の星のようなひとだ。
しかも、オタクにまで優しい。たまたま読んでいたボクの大好きなコミック「恋色なな色どろっぷす」を指差して、「あ、ソレ面白いよね」なんて話しかけられて以来、何かと話しかけられるようになっていった。
これだけだとたまたまかな?と思うけど距離も何かと近くて・・・・・・コレ、ってボクの勘違い?それとも?
・・・・・・なぁーんて、ボクの自意識過剰かな。
なんて、ボクの片思いから始まる甘酸っぱいお話。
みたいなBSS未満なお話。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる