Pop Step

慰弦

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- 28章 -

-憎悪と情愛-

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その波に押され、体が横を向くと、反動で力の入らない片手が、振り子のように動き兄へと伸びる。

『……あっ』

小さな小さな波が、兄へと手を伸ばしたいという願いを後押しするように、緩やかに何度も押し寄せる。

『なに、これ…?なんか…良く分からない、けどっ!』

人ではない何かの力で、何かが起こり
人ではない何かの力が、手助けしてくれている。

現に今も、全身に感じる寒気の中で、自分を取り巻く波からは、守り包み込まれているような暖かさを感じる。

『…なんか、俺の周りには良い人が集まるとか言ってたし、 さっきひじり、子供達と遊んでたしっ!!』

もしかしたら、このか弱く緩やかな波は、その子供達が、兄や自分を取り巻く異変を止める為、手を貸してくれようとしてくれているのかもしれない。

『なら頑張らないと、だよねっ!』

何があって何がどうなってるかなんて分からないし、なにをどう頑張れば良いのかもまったく分からない。

けれど、子供達が手を貸してくれてるのなら、それに答えない訳にはいかない。

実際出来ているのかどうかは分からないが、深呼吸を繰り返し頭を落ち着かせると、一定間隔で寄せては引く波のタイミングを読む。

『1…2… 1…2… 1 っ!!』

波が押し寄せたタイミングに合わせ、腕に出来得る限りの力を込め手を伸ばす。

それでも、動いたのは数センチだった。

しかし、それで十分だった。

伸ばした手は見事兄の肩をとらえ、瞬間、耳の奥で何かが弾ける音が響いた。感じたことのない痛みに反射的に目をつぶり、再び開いた時にはー


「……えっ、なに? どうしたの?」

「……ぁ、はっ、ははっ…あー….良かっ、たぁー…」


周辺に巻き起こっていた異変は跡形もなく消え失せ、目の前では、突然肩を捕まれ驚いた兄が、目をパチクリさせながら自分を見つめていた。

極度の緊張から解き放たれ、全身から力が抜けていく。今のはなんだったのか気になる所だが、そんな疑問をぶつける気力すらも、一緒に抜け落ちていってしまったようだ。


「大丈夫?」

「ぅん。だいじょーぶ。なんでもないよ」

「……そう?」


惚けて居るのか、本当になにも気がつかなかったのか、それは分からないが、兄がなんともないなら、深掘りする話ではないかもしれない。

『…俺の勘違いって可能性もあるし』

多分…。

ただー


「ねぇ、ひじり

「ん?」

「さっきひじりが遊んでた子供達って、まだ居るの?」

「遊んでた?」

「水飛沫見せてくれた子達」

「あぁ、うん。居るけど、どうかしたの?」

「ありがとって言っておいて」

「えっ? うん?」
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