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- 29章 -
-根元-
しおりを挟む「ただいま」
「おかえり」
「……ぅわ。またゲテモノ飲んでる」
「言い方…」
外出先から帰宅した姉から、即刻放たれたその言葉は、嫌そうな視線共々、市ノ瀬の手の中にあるカップに向けられていた。
未だ口内に残っている味に、市ノ瀬は眉間にシワを寄せ、カップへと視線を落とす。正直その言い草にも納得出来なくはない部分もあるが、少し言い方と言うものを考えてほしい所だ。
「良く飲めるな…そんなモノ」
「まぁ、旨くはねぇけどな」
「そんなドロドロした乳白色のくそ不味いもの、私は無理。まだ “アッチ” の方がマシ」
「……突っ込まねぇからな」
手を洗うため、腕まくりをながら流しの前に移動してくる姉にその場を明け渡すと、カップの底に残る、酷い言われようだったモノを再度眺める。
それは、決っっして姉が匂わせたような如何わしいものではない。プレーン味の、ただのプロテインだ。脂質糖質が少なく、他のモノよりもたんぱく質が多く含まれている。たんぱく質を摂取するのに1番効率が良く、価格なども考慮した結果これを選んだわけなのだが…
確かに不味い。
最初はあまりの不味さに吐き気すら沸き上がり、その後は苦肉の策で、味が口内に広がる前に水で流し込んでいた程には、市ノ瀬の口にも合わなかった。
なんとか我慢して飲み続けた今でさえも、息を止めて飲むくらいには慣れていない。
でも理想の為には、時に我慢も必要だ。
「でも、頑張ってる甲斐ある」
「なにがーっ!!?」
しげしげと見上げてくる姉を見下ろし、問いかけたその言葉は、徐にTシャツへと入り込んだ、寒い外から帰宅、からの、冷たい水で洗い、キンキンに冷えきった姉の手が腹部を撫で付けた事により、最後まで言葉になる事なく消えていった。
正直、その冷たさは筋トレ後の暖まった体に心地良くもあったけれど、流石に抵抗感の方が強い。市ノ瀬は反射的に身を引くと、抗議の声をあげた。
「なっ…にすんだよっ!?痴女かお前はっ!」
「…痴女?違う。筋トレ、頑張ってた。だから誉めようとしただけ…」
そう口にし、ポカンとした姉の顔を見るに、その言葉通り、痴女ともとりかねないその行動は、裏などなにもない、心からの称賛だったと言う事が感じとれた。
急な事に慌てた自分が、なんだか馬鹿らしくなってしまうと同時に、変に意識し声を荒げてしまったせいで、少ししょんぼりしているように見える姉の表情に、微かに罪悪感を感じる。
「…そりゃどうも。でもだからってベタベタ触んな」
「なに恥ずかしがってる。一緒に風呂だって入った仲なのに」
「…一体いつの話してんだ」
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