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第一章 逃走と合流
第2話 遭遇(2)
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「回復薬と魔力回復薬を2本ずつ用意して!」
エリーは最近入ったばかりのライムにそう命令すると、彼女は気持ちいいくらいの大きな返事とともにすぐさま動き出す。
エリーはそれを見て満足すると、再び俺のほうを向いた。
「最初に森の中に行った二人、遅いですね」
そう言って、二人が入って行った草むらをエリーは見つめる。
そして、彼女は少しイラついたように眉をひそめると、足元にあった小石を蹴り上げた。あの二人は単独行動が多すぎるので、機嫌が悪くなるのも少し分かるような気がする。
「ほんと、何してるんだろうな」
俺はエリーの様子を見て、その意見に同調するように返事をすると同じ方向を見た。
すると、ナイフを手入れしていたアンズが、何かを思い出したように顔をあげる。
「大きいほうでもしてるんじゃないですか!」
その言葉に皆一斉に笑い出す。少し緊張していた空気がほぐれて、「よかった」と思っていると、急に森の中から叫び声が聞こえた。
「た、大変です! て、敵があああ!!!」
戻ってこなかった隊員の一人、レモンがなぜか入って行ったのと別の方角から去兼びながら走ってくるのが見えた。
それに彼女の後ろから、複数の影が追ってきていた。
「敵です! 敵がきました!!」
そのを叫び声を聞いてエリーがすぐさま振り返ると、周囲の部隊にも知らせるように大声で叫ぶ。
「なぜ、ここに敵が?」
俺がそう戸惑っていると、続けてエリーの口から答えがもれた。
「ちぇっ、川ね……」
敵のラウール王国、そこは周囲が山に囲まれた小国である。当然、高地にあるので、川上に陣地があった。それを利用して川上から船かいかだで下って来たのだろう。
後ろから彼女を追ってくるのはリザードマン達。トカゲの顔と胴体を持ち、二足歩行で走る戦士である。
当然、足の遅いドワーフやオークも後から追ってきているのだろう事は予想できた。
「よし! アンズ、カリン、モモは砲撃! ラフランは弓! ベリとライムは白兵戦の用意!」
「はい!!!」
エリーは状況を見て瞬時に指示を出すと、自分も砲撃に加われるように魔力を練り上げ始める。
この場合の砲撃とは一番簡単に出せる魔力弾だ。威力のある火弾などは、練るのに時間がかかるので使わない。
「すごいな」
俺は、それを瞬時に判断できるエリーに感心する。そして、俺も威力をあげようと一緒に魔力を練ろうとしたが、エリーがすぐに止めに入った。
「隊長は発射の指示をお願いします」
「あっ、ああ、わかった」
そのやり取りの間にベリとライムが小型の盾を握ると、俺たちの前に陣取る。その向こう側、敵が追ってくる中で、レモンは泣きながら必死にこっちに駆けていた。ここまで相当な距離を逃げてきたのだろう、もうかなり足元が怪しくなっている。いつ転んでもおかしくない状態だった。
「よし、砲撃用意」
俺は射程ぎりぎりの距離で撃つことにする。もし敵に当たらなくても彼女が逃げる時間を稼げればいい。
そして、じりじりと敵が近づいてくる中、俺はタイミングを見て指示を出そうとした。
「うっ」
その瞬間、緊張していたのだろう。弓を構えていたラフランが、まだ敵に届く距離では無いにも関わらず、焦ったように矢を放ってしまった。
それに驚いたのか駆けていたレモンが、運悪くバランスを崩して倒れこんでしまう。いや、もう足が限界だったのかもしれない。
その不測の事態に動揺してしまい、思わず号令を止めてしまった俺。
「撃てー!!!」
それを見越したようにエリーが代わりに号令をすると、一斉に砲撃が敵に襲いかかる。それは倒れた彼女の頭上を飛び越え、襲い掛かろうとした兵もろとも周囲のリザードマンをなぎ倒した。
「練り方始め!!」
俺が今の失敗を取り返すように、次の砲撃の準備のための指示を出す。すると、エリーがこちらへと振り向き、少し困ったような顔で俺を見た。
「もう、隊長、優しすぎです」
「す、すまん」
俺の返事に彼女はにこっと微笑むと再び前を向き直す。
その間に味方の兵も集まってきたのだろう。俺たちの分も含めた味方の一斉砲撃でなんとかリザードマン達を後退させたのだった。
エリーは最近入ったばかりのライムにそう命令すると、彼女は気持ちいいくらいの大きな返事とともにすぐさま動き出す。
エリーはそれを見て満足すると、再び俺のほうを向いた。
「最初に森の中に行った二人、遅いですね」
そう言って、二人が入って行った草むらをエリーは見つめる。
そして、彼女は少しイラついたように眉をひそめると、足元にあった小石を蹴り上げた。あの二人は単独行動が多すぎるので、機嫌が悪くなるのも少し分かるような気がする。
「ほんと、何してるんだろうな」
俺はエリーの様子を見て、その意見に同調するように返事をすると同じ方向を見た。
すると、ナイフを手入れしていたアンズが、何かを思い出したように顔をあげる。
「大きいほうでもしてるんじゃないですか!」
その言葉に皆一斉に笑い出す。少し緊張していた空気がほぐれて、「よかった」と思っていると、急に森の中から叫び声が聞こえた。
「た、大変です! て、敵があああ!!!」
戻ってこなかった隊員の一人、レモンがなぜか入って行ったのと別の方角から去兼びながら走ってくるのが見えた。
それに彼女の後ろから、複数の影が追ってきていた。
「敵です! 敵がきました!!」
そのを叫び声を聞いてエリーがすぐさま振り返ると、周囲の部隊にも知らせるように大声で叫ぶ。
「なぜ、ここに敵が?」
俺がそう戸惑っていると、続けてエリーの口から答えがもれた。
「ちぇっ、川ね……」
敵のラウール王国、そこは周囲が山に囲まれた小国である。当然、高地にあるので、川上に陣地があった。それを利用して川上から船かいかだで下って来たのだろう。
後ろから彼女を追ってくるのはリザードマン達。トカゲの顔と胴体を持ち、二足歩行で走る戦士である。
当然、足の遅いドワーフやオークも後から追ってきているのだろう事は予想できた。
「よし! アンズ、カリン、モモは砲撃! ラフランは弓! ベリとライムは白兵戦の用意!」
「はい!!!」
エリーは状況を見て瞬時に指示を出すと、自分も砲撃に加われるように魔力を練り上げ始める。
この場合の砲撃とは一番簡単に出せる魔力弾だ。威力のある火弾などは、練るのに時間がかかるので使わない。
「すごいな」
俺は、それを瞬時に判断できるエリーに感心する。そして、俺も威力をあげようと一緒に魔力を練ろうとしたが、エリーがすぐに止めに入った。
「隊長は発射の指示をお願いします」
「あっ、ああ、わかった」
そのやり取りの間にベリとライムが小型の盾を握ると、俺たちの前に陣取る。その向こう側、敵が追ってくる中で、レモンは泣きながら必死にこっちに駆けていた。ここまで相当な距離を逃げてきたのだろう、もうかなり足元が怪しくなっている。いつ転んでもおかしくない状態だった。
「よし、砲撃用意」
俺は射程ぎりぎりの距離で撃つことにする。もし敵に当たらなくても彼女が逃げる時間を稼げればいい。
そして、じりじりと敵が近づいてくる中、俺はタイミングを見て指示を出そうとした。
「うっ」
その瞬間、緊張していたのだろう。弓を構えていたラフランが、まだ敵に届く距離では無いにも関わらず、焦ったように矢を放ってしまった。
それに驚いたのか駆けていたレモンが、運悪くバランスを崩して倒れこんでしまう。いや、もう足が限界だったのかもしれない。
その不測の事態に動揺してしまい、思わず号令を止めてしまった俺。
「撃てー!!!」
それを見越したようにエリーが代わりに号令をすると、一斉に砲撃が敵に襲いかかる。それは倒れた彼女の頭上を飛び越え、襲い掛かろうとした兵もろとも周囲のリザードマンをなぎ倒した。
「練り方始め!!」
俺が今の失敗を取り返すように、次の砲撃の準備のための指示を出す。すると、エリーがこちらへと振り向き、少し困ったような顔で俺を見た。
「もう、隊長、優しすぎです」
「す、すまん」
俺の返事に彼女はにこっと微笑むと再び前を向き直す。
その間に味方の兵も集まってきたのだろう。俺たちの分も含めた味方の一斉砲撃でなんとかリザードマン達を後退させたのだった。
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