トースト

コーヤダーイ

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ともだち

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 新年を迎えるのは楽しかった。外には雪が降り、世界は二人のためにあった。暖かい家に、たくさんの食べ物、そして世界で一番大好きな人。起きて食べて話して、風呂に入り寝る。それらのすべてがずっと一緒だった。本を読んでいるときまで、ソファで横に座り、ぴったりと体を密着させてもよかった。暖炉のそばでうたた寝する体に毛織物を掛け、炎の影が揺らめく寝顔を見ながら勉強するのもはかどった。しあわせすぎて、このまま世界が終わってもいいとさえ思った。

 ヤーデは学校で勉強をしながら、平行して研究していることがある。紙に描いた古代語で、魔法を発動させる研究である。まとまった休みのうちに、研究のほうも進めておきたかった。
 今試しているのは、火をつける魔法だ。暖炉を使う季節なら、暖炉のなかでやれば大事にならない。火をつけるだけ、やることは単純だ。手を使って火を熾すのだって、火打ち石を使って火種をつくる。一瞬でできる。
 これを魔法使いでないものが、魔法で火をつけようとしているから大変なのである。理論はすでにヤーデの頭の中にある。ただそれを形にするのが難しい。古代語を紙に書いても、魔法は発動しない。起承結まで揃って、はじめて魔法として成り立つのだ。魔力のないものが、魔力を通すことばを発声しても、魔法は成り立たない。ゆえに呪文を唱えず魔法を発動し、発生させる必要がある。すぐそこに正解は見えているのに、そこに至る道が見えない。形になりそうで形にならないのは、繋がらない欠片が、どこかに落ちているからだろう。

 暖炉でぱちっと薪のはぜる音がする。立ち上がって薪を足し、ソファで眠るドミトリーを眺める。これが女神像だったなら深く信仰していたに違いない。ひざまずき足許に唇を寄せ、女神のために真剣に祈っていたと思う。ヤーデはドミトリーのために、魔法使いの仕事がなくなればいいと願っている。そうすれば危険な前線に、ドミトリーが駆り出されることはなくなるから。ヤーデは書き散らした紙の束を、もう一度最初から読み直していった。

 茶を飲もうとカップを持ち上げると、机に茶が染みをつくっていた。大切に使っていたが、いつのまにかひび割れていたらしい。今のヤーデの手には少し小さなカップは、ドミトリーがヤーデのために選んで買ってくれたものだった。
 なんとはなしに、カップのつけた机の丸い染みを見る。どこからはじまり、どこから終わるのかわからない丸い形。はっとする、完璧な、円。急いでペンを取り、今ひらめいたことを紙の隙間に書き込んでいく。丸、円、どこからはじまる、どこで終わる。
 見つけた欠片を当てはめれば、ずっと悩んでいたことが嘘のように、ひとつの魔法が美しく仕上がっていた。円のなかに古代語を書き記した、魔方陣である。
 火を表す魔方陣の上に、書き損じの紙を置き、発動するだけの魔方陣をさらに上に重ねる。暖炉へ持って行き、端に置く。書き損じの紙だけを引き抜くと、思ったとおり火がついた。紙が燃え尽き火が消える。火打ち石の代わりにしかならない、小さな火だ。それでも魔力のない人間が使える、新しい小さな魔法がここに静かに誕生した。

 暖炉の前にかがんだまま、ソファで眠るドミトリーを振り返る。穏やかな寝顔、安心してよく眠っている。ヤーデが居ない場所では、眠りが浅いと言っていた。一緒に眠っているときは、何をしても起きないのに。机の上にあった研究の紙束をまとめて、革の紙入れにはさみ片付けた。ソファに近づいて頬にキスをする、「お風呂に入って寝ましょう」と肩を揺すると、ヤーデの生きる信仰対象はようやく眠りの淵から目覚め、人となる。

 ヤーデは起きたドミトリーに、カップがひび割れ漏れるという話をしたが、魔方陣の話はしなかった。まだ研究をはじめたばかりで、この段階で人に知られてしまったら、魔方陣の研究はきっと自分の手を離れてしまう。それではドミトリーを守ることは不可能だ。
「新年明け最後の休日は、新しいカップを買いに行こうか」
 休暇が終われば、また忙しい日々がはじまる。休みの最後まで、だらだらと二人きりで過ごすのもよかったのだが。家にほかのカップがないわけでもないのに、ドミトリーはどうやってもヤーデのことを優先するのだった。
「はい。またドミトリーさんが選んでくれますか」
「いいよ。たまにはヤーデが自分で好きな色を選べばいいのに」
「ぼくの好きな色は決まってますので」
「黒?」
「正解です」
 好きな色が黒だというヤーデは、ずいぶん渋い大人びた趣味なのだなと、ドミトリーは思う。その色が示すのが自分だとは、到底気づきそうにない。
 一緒に買い物に出かけて買ってきたカップは、白地に黄色と緑の抽象的な花模様が描かれた柄だった。ドミトリーがヤーデのために選んでくれるものに否やはない。「このカップはヤーデらしくて、かわいい」とドミトリーが言うのだから、きっとそうなのだろう。
 家でカップを使っていると、ドミトリーがにこにこしながら眺めている。花柄がかわいくて自分らしいと言われ、複雑な気持ちにならなくもないが、ドミトリーが笑顔ならよしとする。いつか格好いいと誉められたいヤーデである。



 ドミトリーが出勤しようと玄関の扉を開けると、「おはようございまーす」と見知らぬ笑顔が待っていた。吐く息が白く、毛糸の帽子から見えている鼻も頬も赤い。ドミトリーは思わず半歩下がり、後ろを振り向く。
 先ほどまで職場に行きたくないと駄々をこねたドミトリーに、抱きしめられ、されるがままに吸われていたヤーデが支度を終えて立っていた。
「え、もしかして、ともだち?」
「一応」
 ため息をついて、固まっているドミトリーより先に玄関扉を出る。
「すごいねヤーデ。ともだちが迎えに来たってこと?」
「そうなんですね?」
 ヤーデはまったく嬉しそうではない。
「どうも、おはようございまーす。ヘルマン・シュミッツでーす」
 空気を読まないともだちが、元気よく挨拶をしている。
「あ、おはよう?」
「名乗らなくていいですから。ではいってきます」
「いって……らっしゃい」
 迎えに来たともだちと、一緒に出かけていく後ろ姿を見送る。ついこの間まで小さな子どもだったのに、ともだちと肩を並べて歩くヤーデは、すらりと足の長い男の子だった。

 寂しい、というのがドミトリーの心に最初に浮かんだ感情だった。これが噂に聞く親離れというやつか。子どもが育ち巣立っていくのは、嬉しいはずなのに寂しかった。
 職場では寂しさを紛らわすために、仕事に打ち込んだ。鬼気迫る様子に心配した上司が、今日は早めに上がってよしと言うほどだった。
 早めに帰っても、ヤーデはまだ帰宅していなかった。今日はメレネ婦人もお休みの日である。家ですることがなにもないな、と思いながら暖炉の火も熾さず、コートのままソファに座った。ヤーデがいないときは、いつも何をしていたっけ。考えるものの、何も思いつかない。そのままぼんやりと座り続け、どれほど時間が経ったのだろうか。

「え、ちょっ、ドミトリーさんっ? どうしたんですか? 何かあったの?」
 家の鍵が開き、どさどさ物を落とす音がした。見ると、毛糸の帽子を外しながらこちらにくるヤーデがいた。金色の髪がふわふわと光のなかで揺れてきれいだ。
「ええええっ? ちょっと、ほんとにどうしたんです、なんで泣いてるんですか?」
「………ヤーデ」
「はい。どうしましたドミトリーさん。仕事で何かあったんですか? ぼく、それ聞いて大丈夫です?」
「泣いてるの?」
 ヤーデが、んんんと唸る。ちょっと待っててくださいね、とかがんで暖炉をかき回し、眠っていた炭から火を熾すと、素早く小枝をくべていく。ぱちぱちと空気がはぜる音がする。上にそっと薪を乗せて、大きくなった火が薪にずわりとまとわりつくと、ヤーデが体を起こした。暖炉のおかげで、明るくなる。部屋がずいぶん暗くなっていたようだ。
「えぇと、泣いてるのはあなたで、ぼくは……困ってます」
「困ってる……なぜ……」
「なぜって、あなたが泣いてるからですよ。一体どうしたんですか?」
「わからない……」
 ヤーデの色の襟巻きを、同じ色をまとうヤーデが外そうとしている。長い輪になった襟巻きなので、二重に首に掛けているだけだ。目の前が明るい色でいっぱいになって……まばたきをすると、見慣れたヤーデの顔があった。
「ヤーデだ」
「ヤーデです」
「ふふっ、ヤーデ」
「ああ、もう、なんなんですか。泣きながら笑うとか。何があったか教えてくれませんか?」
 とりあえずコートを脱ぎましょう、と手を引かれて立ち上がる。言われるままにコートを脱ぎ、上着を脱ぎ、ブーツはソファに座ってから脱がしてもらう。足は部屋履きにおさめられた。
「だいぶ手が冷えてますね。手袋は?」
「さあ……」
 そういえば家を出るとき、手袋をつけた記憶がない。ヤーデが自分の手でこすって温めながら、ちらりと玄関を確認する。ドミトリーの手袋はきちんと置かれていた。
「手袋、しないで出たんですね」
「そうかもしれない……忘れて、しまって」
 ソファに置いてある毛織物でぐるぐる体を巻かれる。少しだけ待っててくださいね、お茶入れてきます。離れようとするヤーデのコートをはっしと掴む。
「……ごめん、なんだろう私」
「お茶はあとにしましょうか」
 とりあえず泣き止んでください。コートと上着と襟巻きを一気に脱いだヤーデに、分厚い毛織物ごと抱きしめられた。ソファに座るドミトリーは、立っているヤーデの柔らかい腹あたりに顔をうずめた。顔も冷えていたのだろう、ヤーデの体温が鼻と頬に温かかった。髪の毛を優しく撫でられている。頭のうしろから背中まで、何度も何度も優しく。ヤーデのシャツが湿っていて、それではじめて泣いているのが自分だと気づいたのだった。

「ほんとにごめん、私どうしたんだろう」
 涙の止まったあと、ヤーデが部屋のランプを点け、お茶を入れてくれた。ソファに並んで座り、温かいカップを両手で包み込むと、じんわりとした手指の痺れが消えていった。
「びっくりしました、仕事で辛いことでもあったのかと」
 ドミトリーが泣くのを見たのは二回目だ、最初はヤーデが冬の日パン屋を助けて半日行方不明になったときだった。あのときのドミトリーは、人に泣き顔を見られることを拒んだ。こんなに無防備に泣き顔をさらす人ではなかったはずだ。
「何もない、今日は早く帰っていいって上司に言われて帰ってきただけ」
「もしかして体調でも悪かったんですか?」
「普通に仕事してただけだけど……家に、着いたら」
「うん」
「ひとりで。ヤーデがいなくて」
「うん、聞いてます」
「ひとりのときは何をしてたか考えたけど、思い出せなくて」
「それで?」
「今朝ヤーデのともだちが迎えに来て」
「ああ、はい」
「私はともだちがいないけど、ヤーデにはともだちがいて。いつか独り立ちするんだと思って。そしたら私は何をすればいいんだろう」
 両手に持ったカップを取り上げられた、と思ったらがばりと抱きしめられた。
「んんんんんっ好きっかわいい大好きっ」
 痛いくらいの力で締め上げられる。
「いたた、ヤーデちょっと」
 少し暴れて拘束から抜け出ると、ヤーデが何ともしまりのない顔をしていた。
「なんで笑ってるのヤーデ」
「わかんないですう、でもぼく、うれしいいい」
 口元を両手で隠し、赤い頬をして顔をほころばせ、体をくねらせている。
「何もわからないんだけど、ヤーデにはわかったの?」
 頭がいいから、ドミトリー自身にもわからないことが、理解できたのかもしれない。
「んん、よくわからないですう、んふふう」
「?」
 どうしてヤーデがおかしくなったのか、見当もつかない。
「ドミトリーさんは、一人じゃないですからね。ぼくがいます」
 急にきりっとしたヤーデがドミトリーに語る。
「ヤーデが私のともだちってこと?」
「いえ、ぼくは家族です」
「そっか、家族か」
「家族はともだちみたいに、さよならしませんからね。ずっと一緒ですよ」
「そっかあ」

 よほど緊張していたのか疲れていたのか。ドミトリーはソファに頭を預けてそのまま眠ってしまった。夕食まで時間がある、暖炉もしっかり火がまわったし、部屋も暖かい。毛織物を肩までかけ直して、ヤーデは夕食の準備に取りかかる。
 にやにや顔がほころぶのが止まらない。あんなにかわいいドミトリーを見るのは、はじめてだった。大事すぎて隠しておきたい、力いっぱい抱きしめて頭の上から丸呑みしてしまいたい。キスして抱きしめて、ずっとそばにいて。それから?
 それから先はよくわからない。勉強不足でまだ知らないことだらけだ。とにかくドミトリーが一番大事だった。泣かせたくない、ずっと笑っていてほしい。

 あいつ、と思う。ぎりりと歯ぎしりをして。同じクラスのヘルマン・シュミッツ、年末の買い物のときも、声を掛けてきたやつ。嫌なやつに気づかれたことにいらつき、舌打ちしてしまった。聞こえないふりをして、完全に無視した。ちょうど目の前にあった、絶対に入ってこられないだろう手芸店に入ってやりすごした。
 あのときドミトリーを見かけたらしい。以来学校でいつも「あの美人は誰だ」とうるさい。手芸店に入るのだから、裁縫が上手で家庭的な女性なんだろう、などと教室の天井を眺めている。会わせるつもりもないので教えないが、ドミトリーの裁縫は壊滅的だし、手芸店に通っているのは刺繍をするヤーデである。一生ひとりで天井でも見上げてろ、と心の中で毒を吐く。ドミトリーのいないところで、ヤーデはけっこう毒舌なのである。




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